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第14話 世界情勢とタクティカルフレーム

もう一度繰り返します。

この物語は、フィクションです。

「今日は、『タクティカルフレーム』について授業を行います」

 今日の講師は、(まい)先生だ。

 彼女と(まもる)先生が、ヒーロークラスの授業を主に行うらしい。


「タクティカルフレームは、日本の某高等専門学校で開発された技術がベースになっているの」


 パンタグラフの原理を利用したそれは、体の動きをそのままダイレクトに伝えるタイプのパワードスーツであった。

 初期段階においては動作の大きさ自体は拡大することができても、トルクが下がってしまうという問題があったため実用的ではなかったのだが、多くの専門家が協力することによりその問題が解決され、今ではバグと戦う上で欠かせないものになっている。


「パイロットの動きがそのままダイレクトに反映されるこのシステムを、『アドバンスド・マスタースレーブ』(A-MS)と呼ぶのよ。ここはよく試験に出るから、しっかり覚えておいてちょうだい」


 慌てて僕たちは、ノートをとる。

 久朗(くろう)は予習していたようで、うんうんとうなづいている。

 ……意外とそういうところは、しっかりしている部分もあるようだ。


「先生、質問です」

 (れん)が手を挙げた。


「タクティカルフレームは、憲法における「戦力」に当たらないのでしょうか?」

 ……そういえば、日本は戦争放棄していたんだっけ。


「このタクティカルフレームは、あくまでも「バグとの戦闘という平和のために用いられる」という前提の下、戦力からは除外されているの。ただ、兵器として転用可能な技術なので、グレーゾーンであることは間違いないわね」


 舞先生がそう答える。


「ちなみに、バグとの戦闘支援という名目をもって、海外にも輸出されているの……結果、かなり世界における日本の地位が上がっているというわけ」


 兵器として転用しないことを条件として、タクティカルフレームは海外に輸出されている。

 万が一兵器として使われた場合を想定し、行動記録のログが日本に自動送信されるようにシステムが組まれている。


「そういえば、どこの国とは言わないけれども……これは我々が開発した技術だといって、国際的に訴えたところがあるわね」


 その後日本は、その国へのタクティカルフレームの輸出禁止、及び貿易の縮小に動いた。

 その結果国力は著しく減退し、いまだに『アプレンティス』のコピーでバグと戦うという、悲惨な状況に陥っているようだ。


 逆に日本に対して友好的であった国は、大きく力を伸ばしている。

 特に台湾は独立した「国」となっており、有力なパートナーとして日本と技術交換を行い、台湾から逆輸入された技術なども存在するくらいの高度な発展を遂げている。


熊坂(くまさか)首相の、北方四島を取り戻すというスローガンも見事に達成されているわね」


 ロシアとも、比較的友好関係を結んでいる。

 そのためタクティカルフレームの輸出と引き換えに北方四島の返還を請求し、結果としてそれは成立したのだ。


「逆にアメリカは……まあ、私もあちらで普及活動を行っていたのだけれども、どうも『プラーナコンバーター』の適合者が少ないという点が気になるのよね」


 アメリカは「ヒーローの適合者」自体は比較的多く、そのためバグとの戦闘自体にはそれほど支障がない。

 しかし国土の広さ、及びヒーローの質という点でやや難を抱えており、積極的な軍事行動を行うことがあまりできないという状況になっている。


「話がかなり逸れたわね……タクティカルフレームの話に戻ると、武器などの『マテリアライズ』が重要な項目になっているの」


 バグに対しては、ヒーローの力がないと攻撃の威力が大きく軽減される。

 また一般的な火器を用いるよりも、手持ちの「武器」や「武術」などを駆使したほうが攻撃における効率がいいというデータがあるのだ。


「もっとも、ヒーローのタイプにもよるけれどもね」


 火器を主力とするヒーローも、当然ながら存在する。

 それらのヒーローが使う火器は、一般人がアプレンティスに乗って使う火器よりも圧倒的に、バグに対する効果が高いのだ。


 ただしバグに対する攻撃力という点では、近接攻撃の方が高めになっている。

 その結果「支援として火器を用い、近接戦闘が得意なヒーローがとどめを刺す」という戦い方が、一般的な戦闘の流れとなっている。


「また、私のような魔法を使うタイプのヒーローに欠かせないのが、『スタッフ』と呼ばれる補助装置なの」


 スタッフとは魔法の発動、増幅を行う装置である。

 小型の『ワンド』と呼ばれるタイプもあるが、総称としてはスタッフという言葉が用いられている。

 支援型のタクティカルフレームの場合、杖のような形状をしたスタッフを装備していることが多い。

 そのため「魔法使い」のような外見となっているのだ。


「ちなみにスタッフの開発においては、私も協力したのよ」


 冬花コーポレーションのタクティカルフレームは、「第三世代」と呼ばれている。

 初期のプラーナコンバーターがない時代(アプレンティスを含む)が「第一世代」、プラーナコンバーターによってヒーローの力を有効に引き出せるようになったものが「第二世代」。

 そして、「魔法などの補助的な力を十全に発揮できるようになった」ことをもって、「第三世代」という名称がつけられている。


「漣さんは確か、法術を使えるのよね?」

「はい。回復や身体能力の向上などができます」


 魔法少女などのようなタイプのヒーローは、魔法の力で通常ではありえないような現象を発生させることができる。

 特にバグとの戦闘において最も重宝されるのが、「回復魔法」だ。

 僕たちが金色のバグとの戦闘後にやってもらったように、これがあるのとないのとでは、特に戦闘の継続時間において大きな違いがある。


「アメリカだと、どうも魔法使いが少ないらしいの……魔法使いになっても、攻撃魔法を覚えたがるタイプが多くて、支援や回復を中心とする人が少ないのよね」

 舞がぼやいた。


「さて、今日はこんなところかしら……眠そうにしているみかんちゃん、号令を」

「んにゃ!」


 少しうつらうつらとしていたようで、不意を突かれたような表情になっていた。

「起立、礼!」


 午後の授業は、英語のようだ。

 担任は舞先生……午前から続けてなので、大変なんじゃないかな……? 

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