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再審の男  作者: 藤澤トオル
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交渉

「落ち着いて、まずは治療が先決よ」

アリシアが呪文を唱えるのを少女は遮る。

「私はいいんです、それよりも速く私の村を...!!」

村?この付近にあっただろうか?陽介は地図を開いて確認する。そんな情報はどこにもない。村の場所の特定が出来ないのを確認してから、アリシアは少女を説得する。

「いい?私達はあなたの村の場所を知らないから、あなたが死ぬとあなたの村を助けることは出来ない。だからあなたの治療を優先する」


アリシアは少女を治療し、水を飲ませて落ち着かせたところで事情を聞く。

「私の名前は『シェリー』。種族は...獣人」

「見りゃわかる。じゃあシェリー、早速聞きたいんだが、俺達はその...なんだ、誰かが1度訪れた場所を記録できる物を持ってるんだ。それによるとこの辺りに村はない。これはどういうことだ?」

「私達の村は普通に行ってもただの森にしか見えない。そういう魔術がある。それなのに...突然あいつらが現れて...クソッ!!」

シェリーは地面を殴り付ける。


「あいつら...?複数いるのね?それらは私達に似ていた?それとも、あなた達に似ていた?」

「...わからない。顔をなんか硬い物で隠してた」

「フェイスプレートか、全身鎧だな。どっちにしろ開拓者にしては重装備だな」

開拓者の大半は陽介やアリシアといった軽装の者だ。生存を重視しているのと、メンテナンスの回数軽減とパーティー人数の削減、装甲による圧迫感のストレスを防ぐためだ。

「商人か、それとも大多数パーティーの開拓者か...。なんにせよ、特に救うべき理由は無いわね」

「それもそうだな。すまないなシェリー、こいつを渡しとくから、この道を進めば助けを呼べるだろう」

陽介は金貨数枚と移動中に作成したルートマップを渡す。


シェリーは受け取らずうつむいて目に涙を浮かべる。

「困ったなぁ...」

「助ける?でも場合によっては今度は私達が助けを求める事になるかもよ?」

アリシアの言っていることは正しい。正当な許可を得た商人だった場合、2度と開拓済み地域での安全な生活は出来ないだろう。開拓者パーティーだった場合、こちらの死ぬ危険性があるうえ、生き残ったとしても同業者の協力は以降絶望的になるだろう。


陽介は決断する。

「交渉だ。俺達がシェリーの村を救おう。その代わりこちらはあることを望む」

「...それは?」

「村の登録をさせるのと、村を隠している魔術を俺に教えろ」

「うっわ、最低だわこの男」

アリシアが悪態をつく。

「そこ、うるさいぞ」

シェリーは沈黙の後、答える。

「...いいよ、それで救ってくれるなら」

「交渉成立だな」

「そうと決まれば案内を頼むわね、シェリーちゃん」

明るい笑顔を浮かべながらシェリーは2人を案内する。


案内され、草むらから村の様子を伺う。


それは、あまりにも酷いものだった。数人の獣人の首が広場らしき所に並べられていて、その周りで男の獣人は逆さ吊りにされたり、暴行を加えられたり、磔にされたりしている。女や子供の獣人は犯されてる者もいれば、腕と足を縛られている者もいた。


アリシアは冷静に分析する。

「数は20くらい。装備は攻撃と防御重視。魔術師の有無は不明。...シェリー、村で最も強い獣人はどのくらい強かった?出来れば具体的に教えて」

「えーっと...他の人達5人かかりでも勝てる...くらい?」

「ありがとう。ヨースケ、人殺しの経験は?」

アリシアは唐突に陽介に話を振ってきた。日本で当たり障りない人生を送っていた陽介は...

「ない、殺された経験ならある」

「そっちの経験ある人ははじめて聞いたわ。じゃあやっぱりこの作戦ね」


アリシアの作戦は単純であった。陽介を囮と牽制に使う。隙を見てアリシアがヒットアンドアウェイを繰り返す。陽介のレベルの高さとアリシアの速度を最大限利用した作戦だ。

「それでシェリーだけど...隠れているのは駄目ね。見つかったら人質に取られる」

「捕縛されている村人を解放するのは?」

「それね。決定」


3人は手を重ね、互いに見合う。アリシアが啖呵を切る。

「いい?自分の命が危険だと思ったら迷わず殺しなさい。生きててはじめて価値があるのよ。それくらい神様だって赦してくれるはずだわ。赦してくれなかったら...神様も殺しましょう。よし、スタート!」


敗者には死あるのみ。果たして勝者は...?

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