表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再審の男  作者: 藤澤トオル
62/100

3匹の若者

 冒険者の発見した犯人…カルロスの拠点への道は死屍累々と化していた。幾重にも張り巡らされたトラップで息絶える者もいれば、決死の想いで突破しても無惨に殺された者もいる。恐らく第二陣は少なからず動揺するだろう。いや、それを狙ってわざと被害を大きく見せているのかもしれない。


 しかし彼女の行動は威嚇ではない、素の行為だ。その女性は保険用に付けられたカルロスの部下に守られながら『死体の山に座り』、ティータイムを楽しんでいる。彼女をよく知る者は「彼女はいついかなる時でも定時になれば紅茶を嗜みはじめる。カップが無ければ死体の頭蓋骨であろうと利用して嗜む」と言う。今回ないのはカップではなく椅子とテーブルであったため、こういう事になっている。


 女性は紅茶を啜りながら部下に尋ねる。

「あなたたちもどうかしら?え、いらない?トイレが近くなるのを恐れてる?」

「いえ、そのうち増援がやって来ると思いますのでそれがいつ来ても良いように備えています。それ以前に、隊長から許可が降りていませんので」

「フーン…ま、いいわ。私は彼と戦えればどうでもいいし。はぁ~、速く私と彼を殺しに来てくれないかしら…考えただけでゾクゾクしちゃう」

部下の一人がどうしても気になってしまい、尋ねる。

「つかぬことをお聞きしますが、彼とはどういったご関係でしょう?」

「そうね……将来義理の弟になるであろう人物であったけど、少々問題が発生したために実験材料となってもらった…って感じ」

部下はいまいちその関係性がわからなかったが、これ以上聞くのも野暮であると判断し、やめた。



 監視用使い魔から反応があった。

「第二陣、そろそろ到着する頃合いかと思われます。お早いお片付けをお願い申し上げます」

女性はそれを聞き、ティーセットを仕舞う。

「ごちそうさま。普段は一人で嗜んでいるから、会話が出来て楽しかったわ。後でお礼してあげる」

「隊長から許可が下りましたら慎んでお受けします」

「堅物め。嫌いじゃないわ!」


 ぞろぞろと冒険者達がやって来た。使い魔から受けた情報の7割ほどの人数になっている。そのうち半分ほどが怒りに燃え、残りの半分が恐怖していた。それを見て女性は大笑いする。先頭の冒険者が声を荒げる。

「何がおかしい!!!」

「ハハハハハハ!!…………フフッ、いやぁごめんなさい、隊長さんの作戦がこうまで現れるとは思っていなかったから…プフッ、アハハハハハハハハ!!!おっかしい!!」

先頭の冒険者の怒りは頂点に達し、恐るべき速さの突きを女性へと放つ。



 だがそれは命中することはなかった。すれ違い様に女性は冒険者の攻撃を必要最小限の動きで避けつつ、彼の左足を『消し飛ばした』。ワンテンポ遅れて冒険者に激痛が走る。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!足がぁ!!!!」

「ハハハハ!!!そういうところよ!!判断力の低下!ほら速く立ちなさい!!まだ終わってないわ!私を倒せば英雄よ!!ほらっ!!」

女性は地面をのたうち回る冒険者の横腹に鋭い蹴りを入れる。脇腹が抉りとられた。あまりの重なる痛みに冒険者は気絶する。


 女性はそれを許さない。今度は顔面に蹴りをいれた。冒険者の目が覚める。女性は顔を近づけ、気味の悪い笑顔を浮かべる。

「おはよう、まだ眠るには速い時間よ、起きてなさい。続きを楽しみましょうよ」

「ひぃっ!!悪魔め!どけ!!」

冒険者は女性を振り払おうとするが両手を抑えられ、そこから頭突きを喰らわせられる。後頭部が地面に叩きつけられ、脳震盪が起こる。冒険者の視界は虚ろになり、平衡感覚が失われ、手足が痙攣する。

「もう終わりかぁ…良かったのは威勢だけね。さよなら、お兄さん。地獄で会いましょう」



 しかしその冒険者は死ななかった。代わりに死んだのは不意を突こうとした、女性の背後に立つ別な獣人の冒険者である。女性のチョップ突きは獣人冒険者の心臓を貫いていた。

「後ろを気を付けてないとでも思ったのかしら?残念だけど私はそんなヤワじゃないの。さようなら、名も知らぬ獣の勇者」

女性は突き刺した手を横に振り、完全にトドメをさす。

「お待たせ。じゃあさようなら、えーっと…まあいいか」

最初の冒険者は頭と胴体が泣き別れになった。



 一瞬で抵抗する間もなく二人が死んだ。その揺るぎない事実は他の冒険者には充分すぎる衝撃だった。それを見て見逃してくれるほどその女性とカルロスの部下は優しさを持っていなかった。逃げようとした冒険者の後頭部に女性は先程切断した冒険者の頭を投げつける。後頭部に後頭部が命中。地面にうつ伏せになった冒険者と死体の頭の目が合った。

「……うわぁぁぁぁぁ!!!」


 女性は笑顔を浮かべて拍手をしながら、死体の山に足を組んで座ってその光景を眺める。

「パンとサーカス…これでサーカスが揃ったわね。後は任せるわ。さぁ冒険者諸君!出口へ向かって走りなさい!脱落者には死をプレゼント!!」

冒険者達は一斉に来た道を引き返す。だが忘れてはならない、ここのトラップは来るものを拒み、去るものも拒みことを…。


 数人の部下が走って追跡する。部隊長らしき男は女性の横に立ち、話しかける。

「あなたも悪いお人だ。最大限恐怖を煽ってから残らず殺戮させるなんて」

「あら?そっちの方が貴方達にとって好都合ではなかったのかしら?」

「そうでしたね、ご協力感謝します。では、引き続きサーカスをお楽しみください。我々はピエロになりますので」

男は小走りで冒険者達を追跡しに行った。



 最後尾の冒険者…即ち逃走時の先頭の冒険者はすでに8度交代していた。ある者は蜘蛛の様な怪物にからめとられ、ある者は帰る時のみ発動する地雷を踏んで動けなくなり、後からくる冒険者達に踏みつけられた。

「何がパンとサーカスだ!!俺達が愚か者だとでも言いたいのか!!」

その冒険者は先程前を走っていたドワーフの冒険者が壁と一体化していたゴーレムに引きずりこまれて『岩』になった結果、代わりに先頭を走っている。皮肉にも無用心が過ぎ、かなり奥の方まで入ってしまっていた弊害が出ている。


 だがそれももうすぐ終わる。僅かに光が見えてきた。偽装された明かりではない、自然な日の光である。

「もうすぐ出られる…!!速く伝えて増援を!!」

そんな彼の安心を嘲笑うかのようにその光は小さくなっていた。光自体が遠ざかっているようにも思え、冒険者は『幻惑解除』の魔術を詠唱するが効果はない。つまり

「やめろ!!閉めるな!!!俺達は味方だ!!」


 冒険者は速度を上げて光の元へと走る。自分だけでも脱出せねば。そうすればいくらでもやりようはある。それは仲間を見捨てるわけではない、むしろ仲間を助けるための最善の策でもある。速く、早く、迅く。

「…やった!!!」



「……え?」

冒険者の心臓に衝撃が走る。思わず立ち止まり、その衝撃の正体を確認する。……槍だ、出来の悪い槍だ。眩しい外からの光で見えなかった槍を刺した者の正体が段々とはっきりしてくる。

「お前……!!!!」

醜悪な外見を持つ緑色の小人であった。


 その者は光を塞いでいく。

「やめろ!やめてくれ!お願いだ!!」

だが緑色の小人はその懇願に笑いを返すだけであった。

「クソが!!!!!」

冒険者は必死の思いで剣を突き刺す。だがその剣は緑色の小人の後ろにいた大きな緑色の者にへし折られた。もはや打つ手なし。

「たす…け…て…」


 冒険者が光と共に最後に見た外の光景、それは醜悪な外見でこちらの努力を嘲笑う緑色の小人の笑顔であった。



 不意に後ろで悲鳴と血飛沫があがった。刻一刻と彼らが迫っているのが直感で理解できる。

「……やるしか、ない!!」

折れた剣を構える。不思議と震えはなかった。これが死を悟ったという事なのだろうか?いや、自分はまだ生きることを諦めていない。こんなところで終わるはずがない、終わってはいけないのだ。まだ親に恩を返していない。友との約束を果たしていない。生きて街に帰り、あの店の娘と添い遂げなければいけない。そうだ、これは死を悟ったのではない。生きる決意ができたのだ。


 金属光沢を数多の鮮血で上書きされた鎧を身に纏った者達が近づいてくる。勝てるだろうか?いや、勝つのだ。深呼吸し、精神を統一する。やるべきことは決まった。放つべき魔術は決まった。最も基本的で、効率的な、何度もやってきた攻撃魔術。


 息を吸い込み、叫ぶように詠唱する……。





「まあ、そんなに上手くいかないのが人生ってもんよね。お疲れ様、道化としては最高だったわ」

女性はワッフルを食べながらその一部始終を部下の使い魔を通して見ていた。最後尾の冒険者が死の直前に浮かべた、満足気な笑いと恐怖の入り交じった顔は、女性にとっては最高の『見世物』であった。しかし、それももう閉幕した。恐らくしばらくは冒険者達もやって来まい。だがそのあとはまたお楽しみの時間がやってくるはず。


 その時間を心待ちにしていると、唐突に連絡が来た。カルロスからだ。

「なに?完成した?」

「いえ、あと少しです。それよりも別な問題が」

その声音から彼女は次に続くであろう言葉を理解した。だがあえて尋ねる。

「…その問題とは?」

「やってきました、『ヨースケ・サエキ』なる人物が」

溢れ出る様々な感情を圧し殺しながら彼女は答える。

「わかったわ。今すぐそちらへ向かう」

連絡はそこで終了した。

「……フッ…フフ、フフフ、ハハハハハハハハハ!!!!どうやって来たのかしら!?どうやって探し当てたのかしら!?どうやって『殺しあって』くれるのかしら!?ハハハハハハ!!!」




 佐伯達の選んだ道は間違ってはいなかった。いなかったのだが、どうやらカルロス達の想定とはかけ離れているものであった。具体的に言えば、カルロス達が不要と切り捨てた道である。なので整備されていないのでほぼ天然の洞窟なんら遜色ないものであった。当然ながら灯りとなるものなど一切ない。


 時折アリスの愚痴が聞こえてきたが、その度にマリーがなだめていた。佐伯はそんな二人に謝罪の気持ちを抱きながらも先頭を進んでいた。そして

「行き止まりか」

「はい終わり。引き返して他の冒険者達と合流しましょう」

「引き返すのもちょっとアレですけど…仕方ありませんね。……何してるんですか?」

返答せずに佐伯は壁をコンコンと叩き続ける。そして、ある音の時だけ蛍光物質で印をつける。やがてそれは概ね円形になった。


 アリスとマリーは気づく、佐伯がやろうとしていることに。そして愚痴をこぼしながらも、ある想定のもとわざわざこんな道を突き進んだ努力をほぼ無に帰す行為であることも。アリスが声を荒げる。

「やめなさい!!」

佐伯は無視。

「やめて!!!」

佐伯は無視。


 引き返せば佐伯は自分の過ちを認めることになり、これからの何が起きてもそれをネタにされる。それはなんとしても避けなければならない。別にアリスもマリーもネタにはするだろうが、本人が嫌がればやめるつもりでいた。だが、そこにいたるまで佐伯の頭は回らなかった。


 アリスが拳を振りかぶりながら叫ぶ。

「やめろ!!!!」

アリスの拳よりも先に佐伯が放った中国拳法めいた技が壁に命中した。


 それは佐伯が元の世界でプレイしていた格闘ゲームにあった八極拳の技で、『鉄山靠てつざんこう』と呼ばれる物であった。本来は対象の姿勢を崩すためなどに用いられるのであるが、佐伯はそのことを知らない。ただ、自分が知っているなかで最も面での破壊力が大きそうなものが『これ』であったため記憶を頼りに繰り出したのである。


 そして佐伯の予想通り壁は轟音を立てながら崩れ去った。それまで暗かった道を人口灯と魔石の光が照らす。

「ほら、これで問題ないだろ?」

そう言う佐伯の顔はどこか自慢気であった。

「問題しか…ない!!」

アリスが佐伯の尻に蹴りを入れる。マリーは天を仰ぎ見る。

「……最悪です。隠密行動はどこへ行ってしまったのか…」


 しかしこの行動が予想外だったのはマリーやアリスだけではなかった。

「……あ」

「ん?……あ」

カルロス達もである。付近にいることはカルロス達も認識していた。正面突破はないと踏んでいたので、複数ある出入口を警戒に当たらせていた。


 だが彼らが入ってきたそこはどうであろう。完全に封鎖し、誰も入ってこれないようにした地点である。しかもあろうことに最重要機密の『真横』であった。スプリガンの守護領域を辿ってきたのだから巨大な空間に出るのは当然と言えば当然であるが、なんであれ敵味方関係なく動揺した。


 そして佐伯とガラス越しに目の合った人物こそ、隊長ことカルロスその人であった。二人はほぼ同時に頭を戦闘状態に切り替える。佐伯が『起動』と同時に踏み込み、左腕を強化ガラスに突き刺す。強化ガラスは瞬間的に凍りつき、脆く崩れ去った。剣を引き抜きその脇腹を抉らんとするが、カルロスは肘と膝で剣を挟み込む。速度、攻撃力、共に佐伯の圧勝であったが、今この場に限って言えば佐伯は先手を打ってガラスを破壊したため、カルロスに対処する猶予を与えてしまったのだ。


 初撃で仕留めきれなかったことは佐伯にとって不利である。ここはカルロスの本拠地、いってしまえばこの環境全てが彼の味方なのだ。しかも佐伯には時間制限がある。戦闘が長引けば長引くほど彼はジリ貧になっていくのだ。


 ならば神速の二撃目で殺すのみ。佐伯はすぐに手から剣を放し、前転宙返りの勢いで踵落としを放つ。カルロスは半身を既に防御に使っているため片腕でガード。だが片腕なうえに片足重心では回転の勢いが加わった蹴りを防げるはずもなく、カルロスは腕をへし折られ、さらに前から顔を地面に叩きつけられる。佐伯はそこから左手でチョップ突きをカルロスの脊髄に放つ。無慈悲にも手を引き抜き、もう一本の剣で首を切り落とす。さらにサッカーのインサイドキックの要領で頭を蹴り飛ばし、防御された剣を拾い心臓に突き刺す。


 複数の足音が近づいてくる。流石にこの状況では不利になってしまう。一旦マリー達と合流したほうが良いと状況判断し、佐伯はマリー達が隠れている謎の巨大な立方体の裏側へと移動する。それから間もなくしてカルロスの部下が数人やって来た。装備からしてかなりの強者達であろう。


 佐伯は自身の状態を確認する。まだ戦えそうだった。

「一応まともな人間なら復活不可能な状況まで持ち込んだ」

「でも、あの人はまともじゃないでしょ?」

「そうだな。だから、こうやって隠れてるんだろ」

「二人とも静かに!!…何かおかしいです」

3人は先程まで佐伯のいた地点を見る。




 いかなる手段を用いたのだろうか?カルロスは頭を押さえながら傷ひとつなく立ち上がった。よろめくカルロスを部下が支える。

「申し訳ありません。もう少し速く到着していれば…」

「ああ気にするな。ったく、ワルシャワの地獄再来…てところか?それより、彼女は?」

「いるよー」

女性はいつの間にか壁によりかかって、凍結したガラス片を弄っていた。女性はガラス片をカルロスに投げつける。カルロスは的確にキャッチ。未だ冷気を発し続けるそれを顔に近づけて眺める。

「……0ケルビン。今は違うけど」

0ケルビン、即ち摂氏-273.15…絶対零度である。原子の振動が停止状態にあることを示していた。道理で強化ガラスが粉々にくだけ散るはずである。


 女性は指の骨をパキパキと鳴らしながら続ける。

「良かったわねカルロス。彼の左腕で殴られてたら流石のあなたと言えど復活出来なかったんじゃない?」

「そうですね、リソースを2回分…いえ、4回分消費するところでした」

「復活出来るんだ……まあいいわ。ほらほらボサっとしない!速く捜索捜索!!」


 女性は部下を急かすが、カルロスが制止して返答する。

「その必要はありません。あの部屋のどこかに必ずいます」

「その心は?」

「なぜなら……ほら!」

カルロスは先程まで握っていたガラス片を黒い立方体の方へと投げつける。それは立方体に命中することなく空を切った。


 否、僅かに赤い液体が飛び散るのが見えた。部下は見えなかったが、女性にはしっかり見えていた。

「…なるほどなるほど、な、る、ほ、ど?じゃあ頃合いを見て私も行くから」

そう言い残し、女性はその場から一瞬で姿を消した。部下は割れた箇所からロープを数本垂らし、懸垂下降していく。カルロスは隠しておいた装備を展開する。対硬質、重量、高速、破壊、魔術……あらゆる状況を予測したセットがいくつもある。

「……これだな」

カルロスが選んだそのセットは…。




 カルロスが放ったガラス片、それはマリーの右目横を掠めただけであったが、モノクルの制御部分が破壊されてしまい爆発。咄嗟の判断で眼を閉じて守ったため失明は免れたものの、安易に治療魔術を使えばモノクルの破片のせいで眼が開かなくなる可能性があった。

「すまない、もっと速く気づくべきだった!」

「……大丈夫、です、戦闘は可能ですから。それよりも彼らは?」

佐伯に破片を摘出されながらマリーは周囲を見渡す。アリスが答える。

「あの女性は不明。カルロスの部下達は下降してからこっちに向かってるからちょっとは時間が稼げそうよ。カルロスは…ごめんなさい、わからないわ」

「いえ、ありがとうございます。こちらこそ申し訳ありません。本来は私の役目なのに……」


 致命的となりうるガラスの摘出が終了し、マリーは治療魔術を用いる。眼を開けると、僅かに視界が霞がかっていた。恐らく完全に防ぐことは失敗していたのだろう。だが贅沢はいっていられないのも事実だ。

「…どうだ?いけそうか?」

佐伯が心配そうに尋ねてきた。正直に答えてもいいが、必ず彼は自分を下がらせるはずだ。足手まといにはなりたくない、1年前のあの時とはもう違う。佐伯に付いていくと決めたのだ。

「はい!問題ありません!」

「よし、じゃあ当初の予定通り遠方支援を頼む。アリスは近接援護だ」

佐伯の安心した顔を見て、少し胸が痛んだ。



 隠れている地点へと続く階段の途中、彼らは現れた。出会い頭にショットガンを撃たれたがガードが間に合った。

「よぉ!隊長は元気か?」

こんな事を言いながら佐伯は拳銃とショットガンを撃ち込んでくる。

「答える義務はない!」

先頭の部下は剣に風の弾丸を付与し、突きを繰り出す。弾丸そのものの速度に突きの加速が加わり、異次元のスピードを発する。固体である鉛の弾であったならこうはうまくいくまい。佐伯はそれを左腕で固形化しキャッチ。もはやその左腕は黒い霧を纏う必要がなくなっているのだ。佐伯は握りつぶし、球状にしてから投げ返す。当然の如くガード。


 だがそちらに気を取られ過ぎたのだろう、部下達は異変に気づけなかった。下から轟音が鳴り響く。振り向くと、途中で階段が破壊されていた。相手が上にいて、足場として不安定なうえ、『装置』が近くにある。万が一そちらに倒れでもしたら……それよりも先に倒せばいいだけの話だ。



そんな覚悟を嘲るかのように佐伯は右目を輝かせる。

「あまり長丁場は嫌いなんでね……はじめようぜ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ