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再審の男  作者: 藤澤トオル
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冒険者たち

 私の名前はマリー・デュカス、17歳女性。誕生日は10月20日で、孤児院育ち。趣味は料理。特技は弓。お付き合いしている方はいません。

 そして現在…ある方と冒険者をやっています。




 晴れた日の大ブリタニア王国辺境の街、マリーは『冒険者集会所』に入る。集会所は様々な人間で賑わっていた。

「おい聞いたか?『北欧の悪魔』、今度は西側の開拓を始めるらしいぜ」

「マジかよ、俺も開拓者になろうかな…」

「バカかお前は。俺らは冒険者で限界だわ。知らない土地に行って帰ってくるなんて無理無理。行ってはこれても、帰れないわ」

「うう…確かに。物資もその場で調達する必要があるもんな」

「しかも知らない生物が出てくるかもしれないぜ?」

「そりゃヤバイわ」

 そんな会話を他所に、マリーは受付で尋ねる。


「すみません、冒険者になりたいんですけどどのような手続きを行えばよろしいでしょうか?」

「ああ、でしたらこの紙に必要事項を記入してここに持ってきてください。そこの席を自由にお使いいただいて構いませんよ」

受付の人に促されるまま渡された紙に書いていく。

 主に書いたことは『氏名』と『出身』、そして『身元引き受け人』。最後のは、死亡時などの緊急連絡先ということなのだろう。


 書き終わった紙を受付に出し、チェックを受ける。

「…はい。問題ありませんね。おめでとうございます。これからよろしくお願いしますね、『マリー』さん」

「ありがとうございます。早速ですが、何か仕事はありますか?」

「そこに貼り出されている依頼を確認してください。左上に書かれているS~Eのランクが難易度になっています。マリーさんは初心者なのでEランクから、もしくはベテランの方の付き添いがオススメですね。あと、依頼の更新は不定期なのでやりたいと思った仕事は速めに受注した方が得策ですよ」


 礼を言ってから、マリーは依頼ボードを確認する。数が減っているのがBとCだった。

 危険度に伴った報酬なので、高すぎない危険とそれなりの報酬が期待できるランク帯ということなのだろう。もしベテランの付き添いなら、それくらいのランクの依頼が好ましい。ただ、やはり既に多くは持っていかれているので数が少ない。ベテランの付き添いは難しそうだった。

「なぁ、あんた初心者か?」

 不意に後ろから声をかけられた。振り向くと、4人ほどのパーティーだった。マリーは返答する。

「はい。ベテランの付き添いをオススメされたので探していたのですが、見つからなかったのでもう1つオススメされた低ランクの依頼をこなそうと考えていました」

声をかけた男が言う。

「だったらさ、俺達の付き添いをしてくれよ。治療魔術くらいは使えるだろ?」

「はい。あと簡易なら毒消しも出来ます」

「よっしゃ。じゃあ依頼を受けてくるよ。あ、場所は山岳地帯だからな」



 彼らが目的地へ向かった数十分後、ある男が冒険者集会所にやってきた。彼は受付の人に尋ねる。

「山岳地帯の依頼、どうなった?」

「ああ、5人組のパーティーが向かいましたよ」

「…同じ山岳地帯の依頼が欲しい」



 マリー達5人は山岳地帯の入り口に到着した。リーダーの男が他のメンバーに言う。

「今回の依頼は、最近山岳ルートを通る商人達を襲っている者達の取り締まり、もしくは討伐。ただ、情報を入手するだけでも報酬が出るから危なくなったら撤退しよう。わかったな?」

全員が頷く。

「よし、それじゃあ行くぞ!」


 彼らのパーティーはマリーを入れて前衛2、後衛2、補助1のやや攻撃的なパーティーだった。今回の依頼が戦闘になると予想してのものだろう。初心者ながら、マリーは感心した。

 奥に進んでいくと唐突にリーダーが呟く。

「…全員止まれ、監視されている」

「『気配感知』」

前衛のもう一人が『気配感知』を使う。さらに、後衛の女性が使い魔で索敵をする。


 使い魔の鳩が上空で打ち落とされた。瞬間、前衛の男が叫ぶ。

「囲まれているぞ!物陰に待避!」

マリーは促されるままに岩影に避難する。その数秒後、矢の雨が降り注ぐが、リーダーの魔術により難を逃れることに成功した。

「ありがとうございます」

「いやいや、パーティーメンバーを守るのがリーダーの仕事だから。他のメンバーは…無事か。しかし矢ということは…金に余裕はないと見た。装備は貧弱だが、数で押すタイプの相手だな」

リーダーは他のメンバーに手振りで合図をする。そして、マリーに伝える。

「マリー、当てなくていいから合図をしたら矢を放て」

「わかりました」


 見えぬ敵がにじり寄ってくるのがわかる。恐怖で押し潰されそうになるのをこらえ、マリーはリーダーの合図を待つ。

「…今だ!」

マリーは立ち上がり適当に矢を放つ。奇跡的に一人に命中。相手はオークだった。

「でかした!」

 リーダーはマリーの脇をすり抜けるようにして続けざまにさらに二人を斬り殺す。そちらに注意が引き付けられた直後、他の場所に隠れていた男がオークを倒していく。

 先程とは逆に、オーク達は挟み撃ちされる形になった。


 オーク達はこちらの話せる言語で言う。

「すまなかった、降参する。俺達も生きていくためには略奪するしかないんだ。だから殺さないでくれ」

リーダーは頭を掻きながら返答する。

「でもなぁ…俺達の依頼は『取り締まりか討伐』だ。俺達も無闇な殺しはしたくないが…お前達がもうやらないという保証はないだろ?」

「それは…」

「だから、下にある街に行って交渉して、仕事を貰え。例えばそうだなぁ…この山岳地帯の整備とか?」

 少し顔を曇らせてからオークは言う。

「それは出来ない。俺達がなぜ略奪をしなければいけないのかお前達はわかっていない」

 リーダー達は身構えながら尋ねる。

「なぜだ?理由によっては…わかるな?」

「それは…」



 オークの頭が吹っ飛び、リーダーとマリーの顔に脳漿がかかる。リーダーは顔をぬぐい状況を確認するが、マリーはあまりの唐突な出来事だったせいで硬直する。

「馬鹿な!?もうバレたのか?」

「おしまいだ!逃げろ!」

オーク達が慌てた様子で逃げ惑う。リーダー達は彼らを止めようとするが死に物狂いで逃げようとする彼らに押されたうえ、突き飛ばされた。

 突き飛ばされた補助の魔術師の女がオーク達を見ると、オーク達はすでにその大半が死に絶えていた。生き残りも走れる様子ではなかった。そして、オーク達の死体の上に一人立っているものがいる。『オーガ』だ。



 リーダーは叫ぶ。

「撤退だ!交戦は考えるな!!」

彼の判断は至極当然だ。単純なオーガはAランクなので、彼らでも辛勝できる。この人数ならほぼ確実に勝てると言っていい。

 だが、このオーガは違う。オークを従えているだけでなく、『遠くの対象を破壊する』魔術が使える。決して身体能力に物を言わせて戦うタイプでも圧倒的な魔術で押しきるタイプでもない。彼らの知らない未知のオーガだった。

「速く逃げろ!殿は俺がやる!」

 前衛の男が続けて叫ぶ。リーダーが誘導して3人を逃がし始めるが…。


「…そんな!」

オーガがもう一体。それもマリー達を塞ぐ様に立っている。彼もまた、オーク達を殺戮していた。

 オーガが近寄りながら言う。

「我が領土を荒らさんとするものはお前達か」

「許してはおけん、生きては帰さん」

リーダーが剣を構えながら言う。

「もう2度とこの地には踏み入らない。それでは駄目か?」

オーガは強い口調で言う。

「駄目だ。お前達は家に入ってきた害虫を『もう来ないだろう』と考えて見逃すのか?」


 リーダーは諦めて斬りかかる。オーガは棍棒でガード。リーダーは叫ぶ。

「俺が引き付ける!速く逃げろ!」

「でも…!」

「頼む!長くは持たない!」

一瞬躊躇した後衛の女性だったが、オーガの脇をすり抜け走る。マリーと補助の魔術師も続く。

 オーガは敢えて見逃す、いつでも殺せるからだ。そして、つばぜり合いの姿勢のままオーガはリーダーに尋ねる。

「君が心配すべきは、後ろじゃないのか?」


 後ろで叫び声が上がる。リーダーが振り向くと、前衛の男がオーガの棍棒で全身を破壊されている。

「死ね!!死ね!!俺に傷をつけたことを後悔させてやる!」

オーガの顔は強烈な打撃を食らった様に変形していた。男が食らわせたのだろうが、逆にオーガの神経を逆撫でし、手痛い仕返しを食らっている。

 うつ伏せになり、原型を留めていない顔で男はリーダーに言う。

「たす…け…」

その言葉は、最後まで発せられなかった。


 リーダーはオーガを弾き飛ばしてからもう一人のオーガに向きなおし…。

「うおおおおおおおお!!!!」




 男は走る。準備に手間取ってしまったうえ、彼らの情報を手に入れるのが遅れた。彼らは生き残ってはいまい。冒険者の勘ではなく、『開拓者の勘』がそう感じさせた。

「…『起動』」

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