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再審の男  作者: 藤澤トオル
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学習

ここはビザンティスにある武器市場。高品質高額の物から、性能はそこそこながらも手頃な値段の物まで、様々なものが揃っている。

「これとかどうよ、ん?」

アリシアは無骨ながらも堅実的な性能の剣を見せてくる。

「これにしよう。あと、拳銃はどこにある?」

「ああ、あっちだよ」


陽介はアリシアに案内されて銃火器コーナーへ向かう。ここも同じ様に種類が豊富だ。

「私は銃に関しては詳しくないから...あっ!店員さーん!」

アリシアの呼んできた店員に促され、陽介にとって最適と思われる物を選んでもらった。

1発の威力は決して高くないが、連射性能が高く、さらに故障の可能性も低い安全性を重視したものだ。


その後も手足の防具や回復薬などを購入したタイミングで陽介はあることに気づく。

「...アリシア、ちょっといいか」

「ん?なに?」

「...俺、剣も銃も使ったことないし、魔術使えない」

「...残念だけど、パーティー解消しましょう?」

「待ってくれ!初心者と未経験者歓迎って言ったのはアリシアだろうが!」

「はぁ!?初心者未経験者歓迎とは言ったけど教育の必要な人は求めてないわよ!」

「頼むよ!パーティーメンバー探すのにアリシアも苦労してるだろ!?なぁ!?」

「教育する時間を考えたらあんたよりもいいやつなんて沢山いるわよ!」


「なにあれ?痴話喧嘩?」

「可哀想な男の子、何かやらかしたのかしら?」

「私もあんな風に旦那を振って見たかったわ〜」

道端の事情を知らない婦人達にありもないことを言われている。これは陽介にもアリシアにも良くない。陽介は話を切り出す。

「...すまん熱くなりすぎた、適当な喫茶店でゆっくり話そう」

「...そうね、奢るわ」


武器店があるのとは違う大通りの喫茶店の窓際の席で2人は語り合う。

「整理しよう」

先に切り出したのは陽介だった。

「俺は戦闘経験も魔術の使用経験もない。だが単純なステータスは高い」

「私はパーティーメンバーを探しているけど、かなり長期の契約になるから相手を見つけるのに時間がかかる。だけどあなたに色々仕込むほど気長に待つわけにはいかない」

「それだよ、なんで待てない?」

陽介は純粋にアリシアに対して疑問を投げ掛ける。アリシアは呆れた様子で返す。

「いい?開拓は未開の地を切り開くからこその開拓でしょ。少しでも速く新しい土地を見つけた人こそ開拓者なの。あなたに仕込んでいるうちにも刻一刻と未開の土地は減っていく。それは嫌」

陽介は何も言い返せない。アリシアに対して反論するような事は思い浮かばなかった。


「わかった?あなたがすぐに技術を習得出来るなら話は別だけど普通は無理よね」

陽介はその言葉を聞いてあることを思いだす、自分の個人スキルの1つをだ。

「...1つ質問がある。『高速学習』ってどういうスキルなんだ?」

「さぁ?自分のスキルくらい自分で把握しなさい」

「じゃあスキルの使い方だけでも教えてくれ」

「んー、基本的には強く念じるだけど。まあ念じながら声に出しても発動はするらしいから、要は気の持ちようじゃない?」


陽介に一筋の希望の光が見えた。アリシアに対して賭けに出る。

「1日待ってほしい、その時間があれば仕上げてみせる」

アリシアは笑いながら答える。

「無理無理、基礎的な剣術技能だって習得には最低でも1週間は必要よ?それを1日で実戦レベルにあげるなんて馬鹿じゃない?」

「やってみせよう、その代わり本が3冊欲しい。『魔導書』と『剣術指南書』と『戦闘での心得』だ」

「いいよいいよ。それであんたの教育が済むなら安いもんだわ。じゃあ明日のこの時間、中央広場に集合ね」

陽介はそのままアリシアから金を受け取り、目当ての本を買って、開拓者集会所にある宿泊施設で学習を始めた。


最初に読みはじめたのは『戦闘での心得』。

「んで、スキル発動には強く念じるんだよな...」

陽介は目を瞑り、『高速学習』のイメージを持つ。そして、目を開け本を読みはじめ...



次の日、ちょうど決められた時刻に陽介はやって来た。アリシアは中央広場の噴水横にあるベンチに座っていた。

「やぁ、時間通りね。成果を見せてもらいましょうか?」

「あぁ、なんなら素手の勝負でも構わない」

カチンときたアリシアはひきつった笑顔を浮かべながら陽介の顔面に殴りかかる。筋力補正値を速度補正に回したパンチだ。破壊力はないが、当たればそれなりに痛むし、回避は困難である。

アリシアとしては、別に挨拶代わりにしか過ぎなかった。別に避けられなかったからといってすぐに解消しようという気はなかった。


だが、陽介はそう思っていなかった。

(不意討ちを想定した試験か、合理的だ!)

陽介の基礎ステータスはレベル90相応である。だがそれを活かせるだけの経験値が不足していたため、効率的な回避行動などは取れなかった。...今までは。


軽やかな身のこなしで一瞬の内にアリシアの視界から陽介の姿が消える。動揺するよりも前にアリシアは木を背中にするように動くが、なにかとぶつかる。そして肩に手をおかれ、それは呟く。


「俺が見た本には、背後を取られたら『負け』と思えと書いてあったんだがな」


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