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再審の男  作者: 藤澤トオル
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悪魔再臨

メイドはロングスカートを途中で切り離してミニスカートにする。そして、その動作の途中で陽介に毒の付いたナイフを投げる。

不意を突いてくると予想していた陽介は回避。狭い廊下は回避が困難だが、その分相手の投擲武器の軌道も制限される。


次は陽介が仕掛ける。フェイントとブラフを組み合わせた連続攻撃。メイドは数発食らうも、致命打は確実に捌ききっている。

メイドはナイフを持ち、素早く滑らかな軌道で切り刻もうとする。陽介はカウンターを交えながら対処するも、脇腹に蹴りを食らってしまう。

「...いける。こいつはリカルドには及ばない」

「リカルド?誰ですか?」

「英雄だよ」


陽介は左右に身体を揺らしてコースを翻弄しながらメイドの懐に入り込む。バックステップで距離を取ろうとしたメイドだが、脚を踏まれる。しなやかさと俊敏性を鍛えたため、防御力に乏しい脚は容赦なく折れる。

しかし、激痛に悶える暇はない。即座にナイフを持ち替え、陽介の足に刺そうとするが、手首を握られて阻止される。さらに腕を折られ、ナイフを落としてしまう。


陽介はメイドが落としたナイフを拾いつつ、反対の腕を壊す。そして、腹を踏みつけながら膝をついてメイドの顔面に向かってナイフを振り上げながら言う。

「終わりだ」

「ひぃっ!!」


メイドの恐怖の表情はすぐに消える。陽介が手心を加えたのではない。切り裂かれたスカートで顔を縛ってからナイフを刺したからだ。これによって、廊下に残る血の跡の量を格段に誤魔化せる。

陽介はメイドを先ほどまでいた部屋のクローゼットに隠す。これでいくらか発見が遅れるだろう。


ここで始めて、陽介は自分に起きた違和感に気づく。

「...今俺は何をした?相手は人間だぞ?」

開拓者としての生活に慣れすぎた弊害を感じたのだ。生き延びるための術が、余計な残虐性を産み出している。そして、それをイーリスには教えてしまった。

やはり、イーリスに教えるべきではなかった。そんな後悔を胸に、陽介は彼女を追いかける。



王の間の下。クラウスは10人程の騎士を連れて連れて龍の前に立つ。

「これから君の解体を始める。何か言い残すことは?...フッ、喋るわけないか」



イーリスは武器庫を目指して走る。角を曲がると、遠くに騎士達が集まっている。幸い、イーリスには気づいていない。去るまで待とうかとも考えたが、彼らの待っている部屋から何人かが出入りしているのが見えた。

彼らの装備が変わっている。間違い、あそこが武器庫だ。魔術ならば倒せる人数。だが、確実に相手の命を奪ってしまう。


やむを得ない犠牲。これをやらなければ、殺されるのは自分。イーリスは覚悟を決めて6節唱える。『炎と氷の柱』。


騎士達がソレに気づくには遅すぎた。騒乱のせいで、いつもなら気づくことのできた距離の詠唱に気づけなかった。そのことが全てを分けた。

騎士達は着ている鎧すら燃やし尽くす炎に焼かれたあと、溶けることのない氷に閉じ込められた。


「...ごめんなさい」

イーリスは涙を流さないように堪えながら、武器庫に入っていく。



王宮前。多数の民衆が集まっている。竜騎士団は彼らの鎮圧に人員を割かれ、王宮への侵入は容易だった。

だが、内部には別な騎士団がいる可能性もある。アリシアは慎重にイーリスと陽介を探す。

「...ん?あの装備は...」



イーリスは武器庫を探すが、陽介の剣は意外にも雑に置かれていた。抵抗できるはずがないという王の自信が騎士に伝播したのだろう。

武器を持った後、イーリスはとある武器が目につく。

「ん?なんだろうこの武器...」



陽介はイーリスを追いかけて走る。その途中で、別な騎士とメイドに見つかる。

「あ、やっべ」

「なに!?始末に失敗したのか!?」

「悪いが、通させてもらう」

陽介は二人に準備させる間もなく接近する。最初に狙ったのはメイド。装備持ちを倒すよりも、数を減らすことを優勢した。反応が遅れたメイドは容赦なく壁に叩きつけられて気絶したあと、陽介の盾に利用された。


騎士は、それを見て手を出せなかった。王宮警備の騎士とはいえ、仲間を盾にされた状況での剣術などほとんどやったことがない。

「貴様!卑怯だぞ!騎士道に反しないのか!」

陽介はそれを聞き、鼻で笑う。

「残念ながら、俺は騎士道よりも生存を最優先しているんだ。だから、こういうこともする」


陽介はメイドが隠し持っていたナイフを抜き取り、メイドを盾にしながら騎士に接近する。

「くっ...!うおおおおお!!」

騎士はやむを得ず、剣を振るう。当然の如く、それはメイドを切り裂いた。

「...あ、そんな」

「同士討ちに偽装させてもらう」

そう言い、陽介は背後に回り、頭の鎧の隙間にナイフを突き刺して走り去っていく。

「...悪魔め」


「違う!違う!違う!何故なんだ...!何故俺はこうしてしまう...!」



イーリスが見つけた武器、それは骨で構成された剣だった。彼女の乏しい知識でも、骨で出来た武器など基本的にはあり得ないことはわかっている。

悩んでいると、陽介が合流する。

「イーリス、怪我は!?」

「大丈夫です。ヨースケさん、加工されてますけど、これって骨ですよね。そんなものが武器になるんですか?」

それを手に持った瞬間、陽介に悪寒が走る。この武器は曰く付だ、呪いが込められている。イーリスが所持しても何もなかったということは、この骨の主は想像がつく。


「...ああ、武器になる。多分この骨の元々の持ち主は、龍だろう。未だに謎が多い龍だ、大方武器にしようと考えたんだろうさ。だが、それが龍の怒りを買って、呪いを付与している」

「そんな...!じゃあ、父さんの身体は見た目以上に...!」

陽介はドラゴンを思い出すが、骨を摘出したような跡は見られなかった。骨を摘出したと仮定しても、骨剣の本数が多すぎる。


「...別な龍達を大量に殺した?」

「他にも...龍がいるってことですか?」

「それなら何故イーリスの父親だけ生かされているんだ?失礼な話、他の龍を大量に殺すよりも君の父親を殺して素材にした方が遥かに効率的と言える」

「父さんにしかない秘密...」


しばらく思考したのち、陽介はある文献を思い出す。といっても子どもの絵本の様な物だったので、軽く流していたものだった。

そこにはこう書かれていた。『りゅうのおうさまは、ほかのりゅうとはちがうかたらものをもっています。そのたからものは、りゅうのおうこくをゆたかにしました。』

そして、アリシアから聞いた『炉』についての話。ドラゴンはこう言った、『一族の誇りだ』と。


陽介はイーリスを見て呟く。

「『炉』だ。イーリスの父親が持つ炉だけがこの国には必要だったんだ」

「それで父さんだけは生かされた...」

「だが父親は死にかけで、国は危機的状況。あの王が取るかもしれない行動は...」


ふと、ドラゴンの話をした時のクラウスの顔がフラッシュバックする。

ほんの一瞬、まばたきほどの時間でしかなかったが、クラウスの顔は憎悪に満ち溢れていた。

「...君の父親が危ない。あの王なら炉を取り出して何をしでかすかわからない」

「...はい!」



部屋を出ると、アリシアと遭遇した。

「陽介!丁度良かった。話があるんだけど」

「急ぎの話か?こっちも話がある、急ぎのな」

「話というか仮説よ。さっき全身鎧の騎士達が王宮内を見回りしていたんだけど、その装備がどうみても普通じゃなかったの。...もしかして、彼らは別な龍を持ってて、それを素材にして武器にしてるんじゃない?」

「大正解だよコンチクショウ。続いて俺の話だが、移動しながら話す」



地下を目指しながら先程の話をアリシアにし終えた数分後、騎士団に見つかってしまう。

「いたぞ!我らは第2竜騎士団!王の命令に...あれ?」

先頭にいた騎士の首と胴体が分裂する。陽介がやったのだ。

「貴様!許される行為では」

「許されない行為してるのお前らだろ!!...ジヤヴォール、『門を開けていいぞ』。この王宮にいるこんな感じの騎士は全員『地獄に落として構わない』」


それまで光輝いていた王宮、および王都は黒い霧に包まれる。そして、陽介の背後にはあの黒衣の『何か』。

「...陽介」

心配そうなアリシアに、陽介は声をかける。

「大丈夫だ、アリシア。俺は迷わない。だから少しだけ...無茶を許してくれ」

「...わかったよ。イーリス、下がってなさい。あと、彼から目を反らさないで。あれが『悪魔』よ」



黒く変色した左腕、それを確認してから陽介は悪魔の笑みを浮かべて言う。

「騎士団様、悪魔退治の時間だぜ?」

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