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再審の男  作者: 藤澤トオル
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王都騒乱

次の日は、あっさり終わってしまった。王都の見学、と言えば聞こえがいいかもしれないが要するにクラウスは先手を打って陽介とイーリスの行動を完全に制御したのだ。

見学を断れば、何か裏があるとすぐにバレてしまう。2人はそれに従うしかなかった。

そんな中でも、クラウスの暴政は僅かに見えた。陽介達の発見が速かったのと何か関係があるのかもしれないが、情報が足りていなかった。


幸運だったのは、アリシアの努力によりイーリスの父親についてと、シェリーを経由して軍隊が翌日に侵攻する情報が二人に渡った事だろう。これにより二人は作戦を練ることが出来た。


そんな中、イーリスは陽介に質問する。

「...ヨースケさん、ヨースケさんの父親ってどんな人でしたか?」

「そうだな...普通って答えは悪いか。大企業の下請け企業に勤務している中流階級だったよ。特別何かをしてくれる訳ではなかったけど、質問すれば真摯に答えてくれる。お願いすれば、できる範囲で対応してくれる。多分、社会全体に与える印象はほとんどないけど、周りの人には好かれる人だったんじゃないかな」

「...私、不安なんです。父のあんな姿を見て、父の覚悟を引き継ぐのが私でいいのかって」


イーリスの表情からそれは見てわかる。陽介はにこやかに答える。

「前にも言っただろ?俺らを頼っていいって。大丈夫さ、安心してくれ。なんたって、俺らはお嬢様の騎士だからな」

「ふふふ、まだあのフレーズ気に入ってるんですね」

「格好いいじゃん?そんなんでいいんだよ」



翌朝、用意された朝食を食べて二人は用意された服とは別の服に着替える。武器等の装備品は全て預けられている。回復薬などはアリシアが所持しているから問題ない。まずは武器の確保が先決だろう。

作戦は昨日何度も確認した。

・軍が攻めきたのを確認したら、民衆を扇動して出来るだけ王都への侵攻を速めさせる。

・王宮が混乱状態になったら隙を見て地下に侵入。その途中でアリシアと合流する。

・連合軍が地下に到着するよりも速く終わらせなければならない。

・イーリスが父親から『炉』を回収し、速やかに退却。

・退却ルートはエドガーの指示に従う。

・出来るだけ無闇な戦闘は避ける。

・戦後処理はゴードンに一任。


陽介とアリシアとゴードン、3人はそれぞれ別な位置で時計を同じようにして数える。

「「「3...2...1...作戦開始!」」」



王の間に慌てた様子の騎士が入ってくる。

「報告します!東西南の3国、及び見知らぬ軍隊が我が国に一斉に攻め行って来ました!」

「馬鹿な!私の『龍眼』には何の反応も!...まさか!」

クラウスはそこで始めて気づく、種族スキル『龍眼』の特徴に。


種族スキル『龍眼』。自らの領域内を全て見通す事が出来る。1日の使用回数はランクに依存。

ここまではクラウスも暗記するほど覚えている。問題はその先だった。

万が一、1人分の龍眼を二人で分けた場合は、共に使用可能になる。但し、主導権は最大魔力値が高い方になる。


クラウスは椅子の肘掛けを殴りつけ、怒りで顔を歪ませる。

「あの忌々しい龍が...!どこまでも俺に逆らうのか...!どこまで俺を愚弄すれば気が済むんだ...!!」

深呼吸をし、頭を軽く冷やしてからクラウスは命令する。

「早急にあの特別大使二人を始末しろ!第4から第10までの竜騎士団は各方面の防衛に回らせろ!突破されても構わない、とにかく王都への侵攻を出来るだけ遅らせろ!第3竜騎士団は王都内部の鎮圧だ。この混乱に乗じて市民が反乱するとも限らん。第2竜騎士団は王宮の防衛。第1竜騎士団は...私と来い」



連合国総司令部。ゴードンは各国代表を取り仕切る立場にいる。

ゴードンと、5つの国からなる異邦人部隊の各代表と東西南の代表の計9人が集合している。

「各国、互いの仲間割れだけはくれぐれも避けるようにお願いします。それと、これからの作戦ですが」

「これだけの大軍だ、いかな大国であろうと敗北は必至。我々は戦後処理をしても構わないぞ?」

ゴードンの言葉を遮るように、異邦人部隊『プロイスト帝国』の男はそう言った。


ゴードンは冷徹に返す。

「北の国を甘く見てはいけません。単純な部隊練度で言えばこの大軍でも五分五分と言えます。...しかし、今の国王はなんでも恐怖政治を行っているとか」

代表のうち、察しの良い者はニヤリと笑った。それを見てからゴードンは続ける。

「皆さん、出来るだけ民衆への攻撃や略奪を避けるよう指示してください。なんなら、救援活動を行っても構いません。...クーデターを起こさせます」



王都。アリシアはざわついている王宮を見て、不安に感じている一般市民に紛れて、声をあげる。

「...そうだ!今こそ私たちの手で国を変えましょう!」

「...そうだな、あぁ!やろう!」

「だが騎士団がこちらを妨害するかもしれないぞ?」

「騎士団にだって不満を持つものは多い!彼らを引き込めば...あるいは!」

「よし、やるぞぉ!!」

民衆が立ち上がるのを確認して、アリシアは人知れず王宮へと向かう。



王宮が騒がしい。作戦の第1段階は成功したと見える。

部屋で待機していると、ノックがしてメイドが入ってくる。いつもの騎士ではなかった。慌てた様子でメイドは言う。

「民衆が暴動を起こし、この王宮に攻めてきています!速くお逃げください!」

そうして、外に出るよう促される。イーリスが先に外に出るが、陽介はまだ座っている。

「どうされましたか?お速く!」

「あぁ、すまない...な!」


陽介は相手が最も反応しにくいタイミングでメイドに接近し、顔面を壁に叩きつけようとするが、ガードされる。

「...メイドに暴力は、いけませんよ?」

「...凶器を持って殺意に溢れた奴が言う台詞じゃないな!」


イーリスは呆気に取られている。それは見なくても理解できた。陽介はメイドから視線を外さずにイーリスに叫ぶ。

「先に行って俺の武器を持って来てくれ!大丈夫だ!お前は強い!」

その言葉を聞いて、イーリスは武器を探しに走りだす。


陽介とメイドは廊下に転がる。メイドは陽介の顔面に仕込み刃付きの蹴りを入れてイーリスを追いかけようとするが、蹴りを回避されてしまう。

「女性とは言え、俺は手加減はしない」

「あら?手加減出来る立場なのですか?」

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