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再審の男  作者: 藤澤トオル
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乙女の騎士

案内された街は、陽介達が生きている国々と国交がないことを踏まえれば、かなり発展している。

街灯と水路が、冬季の対策も考慮されたうえで整備されているのは非常に大きいだろう。

「驚いたな、ここまでとは思っていなかった」

「私達は君達と文化圏こそ違うが、同じように国があるのだ。...ここだ、入ってくれ」

そこは木で出来た家。造りはミーシャ達の物に似ているが、細部が異なっている。


中は生活感は溢れていないが、生きていくのに必要な物は揃っていた。

「ここは?」

「来訪者を一時的に留置しておく場所だ。もっとも、こんな所まで来る人間なぞほとんどいない。来てもエルフか、リザードマンだ」


3人は椅子に座るよう促される。部屋の中にはエドガーの他に、5人の先住民がいる。レベルは不明。

椅子に座ると、エドガーが口を開く。

「それでは、早速本題からいこう。我々の一族は、代々『龍とそれに連なるもの』を崇めている。そこの彼女には龍の特徴が見られる。だから引き留めた。君達が龍を害する者達ではないか、

とね」

反論しかけたイーリスをアリシアが制止する。それを確認してから、陽介が答える。

「そちらの疑問にお答えします。率直に言えば、私達は彼女の護衛です。イーリス、彼らに君の父親の事を伝えてもいいか?」

陽介の問いに、イーリスは頷く。彼女は、エドガー達を信頼するようだ。ならば、陽介もそれに応じた返答をしなければならない。


陽介はエドガーに向き直り、続ける。

「察してるかもしれませんが、彼女は人間と龍のハーフです。そして悲しい事に、彼女の父親...あなた方の崇める龍が生死の瀬戸際をさ迷っている。父親が亡くなる前に、どうか一目会いたい。しかし、彼女一人では父親の元まで辿り着くのは困難。そこで、私とアリシアは彼女の護衛を行っています」


エドガーは納得したらしく、周囲の人間に警戒を解かせた。

「すまないな、まだ警戒させてもらっていた。そちらの状況は把握した。こちらとしても彼女とその父親は敬うべき存在。あなた方2人もそれに仕える『乙女の騎士』として、扱わせてもらう。助力は惜しまない事を約束する」

その言葉を聞き、陽介は早速交渉を切り出す。

「では早速1つお尋ねしたいことがあります。この地より北の国に関する情報はありますか?」


少し思考したあと、エドガーは返答する。

「彼らも最初は我々と同じく『龍を崇める一族』が王であったが...それも遥か昔の話。今は太古の龍を我欲の為に押さえつけ...もしや、その龍か!?」

エドガーは思わず椅子から立ち上がりながらイーリスを見つめる。イーリスはゆっくりと頷く。

エドガーは椅子に座り直してから続ける。

「失礼した。非常に伝えにくいことだが...やめておいた方がいい」

「その訳は?」

「あの国の力は周辺国家とは比べ物にならないからだ。過去に周辺国家が結託して侵攻したが、敗北した。多分、それこそ龍の力だったのだろう。その力の源をそう易々と明け渡すはずがない。それに...」


陽介は次の言葉を察し、先に言う。

「父親が死にかけている今、次に利用されるのは彼女かもしれない...と」

エドガーは目を瞑りながら頷く。


「...それでも、それでも!私は父に会いたいんです!」

重々しい沈黙を破ったのは、他でもないイーリスだった。

「私は父の顔を自らの眼で見たことがありません。それは父も同じでしょう。...そんなの、悲しいじゃないですか」

陽介はその言葉を聞いて、少し笑ったあと、エドガーに言う。

「彼女がこう言っている以上、私達はどうあっても進みます。とはいえ、貴重な情報をありがとうございます」

「助力を惜しまないと言った矢先に申し訳ない。この村の施設は好きに使ってくれて構わない」



エドガーに教えて貰った宿屋に向かう前に、アリシアはエドガーに尋ねる。

「すみません、私から質問とお願いがあります」

「何かな?」

「この紋様に見覚えは?」

アリシアは左目の紋様を紙に書き写した物を見せる。そして、その横には陽介の左手の紋様。


しばし悩んだ後、エドガーは答える。

「私の記憶にはない。だが、北の国の文献を探せば見つかるかもしれないぞ。あそこには近辺の資料が集められているらしいからな。それでお願いだったな」

「ええ。もし、仮に南から軍隊がやって来た時は彼らを北の国へと案内して欲しいのです」

エドガーはその内容に含まれる意図を察したのか、笑いながら答える。

「正気か!?いや、面白い人達だ!その願い、承った」



陽介はアリシアとイーリスを先に宿に向かわせ、1人で街の図書館へと行く。

「さて、こっからは俺の仕事だな」

最初に手に取る本は『近辺の言語』。これさえわかってしまえば、以降の会話や協力要請、文献の解読速度は飛躍的に向上する。

4~5ヵ国分の言語が混ざりあっているせいか、『高速学習』といえど時間を大幅に取られることが予測される。しかし、やらねばならない。陽介のこれからの働きにより、準備が整った時の進行度は変動するのだから。


数時間後、気づいた時には夜になっていた。

学習度は半分、と言ったところだろう。過去の文献資料も読み漁る事を考慮して、古典表現にも学習時間を割いた事が裏目に出た結果だ。

かといって、この本をこれから長くなるであろう旅に持ち出すのは忍びない。

陽介はその日のそれ以上の学習をやめ、宿に戻る。



その帰り道、ふと陽介は思う。

「そういや、北欧の龍か...ジークなんとかだっけか?」

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