踏み出す
現在、服屋。陽介は興味もないアリシアとイーリスの買い物に付き合わされている。というよりも、アリシアがイーリスに色々着せて遊んでいるようにも見える。
「こっちの方が似合うって!ホラホラ!ヨースケもそう思うでしょ!?」
「そう...かもな」
「あ、興味ないって顔してるよ!なんか言ってやりなさい!」
「いえ、私は言える立場ではないので...」
「私が許す!」
「アリシア、お前最低だよ」
「私は最高に楽しいけどね!」
そんな会話を繰り返していた。
しばらくすると、離れて別なアクセサリーを見ていた陽介の元にアリシアがやってくる。
「お、決まったか?」
「...気になるの?それ」
陽介が見ていたのはブレスレット。魔術効果などはない、単純なファッションである。
「まあな、こんなものもあるのかーって思ってさ」
「ふーん。そうそう、イーリスの服決まったわよ、一応見てあげて」
試着室の前、イーリスは顔だけ出している。
「ほ、本当にこれでいいんですか?」
「大丈夫大丈夫。念のためヨースケも呼んできたから」
「あてにはするなよ」
「わ、わかりました」
イーリスはカーテンを開ける。
その服装は、シンプルな組み合わせながらも上手く調和が取れており、さらにイーリスの特殊な体型の事も考慮されている。
一言で言い表すならば、『似合っている』。
「どうよ?」
「...いいじゃん」
陽介のその言葉を聞き、イーリスはほっと一息つく。
「よし、じゃあこれでお父さんに会いに行くときの服装は決まり!普段のはもう決めたからいいよね」
「...ファッションはわからん」
「私もです...」
陽介とイーリス、2人は特に嬉しくもない共通点を見つけ、互いに苦笑いをした。
装備品も新調し、失った『固定剣』も再び借りることが出来た。
本来ならば弁償するのだが、『ジヤヴォール』との交戦時に爆発した報告をしたことにより、その情報を『補償金として』公開することにより金銭を支払うことはなかった。
一行は次に数本しかない北欧行きの船に乗りこむ。
「それじゃあ、最終確認しましょう」
これからの行動をまとめる。
・最終目標は、イーリスの父親のドラゴンの封印解放。
・そのために封印している国家との衝突は避けられないため、開拓を進めて他国の侵入を誘発させる必要がある。
・また、各地で封印に関する情報を集める必要がある。
・冬季に入ると、陽介以外の帰還は絶望的になるためできるだけ夏のうちに終わらせねばならない。
「...言ってて思ったけど、やること多いわね」
「質問がある。他国への連絡はどうする?」
「それに関しては心配ないわ」
「...そうか、シェリーか」
シェリー。現在、あの村とその周辺から豊富な資源が見つかり、戦略的に重要拠点となっている。何度か軍隊が侵攻したが、周辺の村落との協力と異様な錬度を誇る獣人達により、撤退を余儀なくされている。
そのため、ほとんどの国はあの一帯と協定を結んでいる。あの村からの提案を断ることはほとんどないといっても過言ではない。
「すでに私が連絡は入れておいたわよ。『北に変な開拓ルートが現れたら、周辺国家に侵攻するよう呼び掛けて』って」
「それじゃあ、ドラゴン捜索始めるか!!」
「...の、筈だったんだけどなぁ」
港に着き、北に進むこと数日。一行は現在、先住民に囲まれている。捕まってはいないが、下手に動けば...大変なことになるのは目に見えていた。
「イーリス、この人達に心当たりは?」
「ありません」
「言語はわかる?」
「...少しなら」
「よしきた。イーリス、陽介に出来るだけ分かりやすく教えてあげて」
イーリスから先住民の言語を大体だが教わる。このような状況でこそ、『高速学習』は輝く。
数分後、陽介は先住民の言っている事を理解する。アリシアも、簡略ではあるが理解に成功する。
「この者達は、どうして龍の娘を連れている?」
「だが、人間だ」
「...紛い物か?」
「罰当たりな者達だ」
「だが、龍の娘だぞ!?」
彼らの様子を見かねて、陽介が声を発する。
「なぁ、ちょっといいか」
彼らの視線が一斉に陽介に注がれる。
「貴様!なぜ我らの言葉がわかる!」
「それはな...俺は天才だからだ」
「だっっっっさい言い訳!恥ずかしくないの?」
「そこ、黙ってろ。んで、俺は今の会話が聞き取れた。イーリス...この女性に用があるのか?」
先住民は少し内輪で会議したあと、武器を下げる。
そして、1人が前に踏み出してくる。
「君達の事はまだ信用出来ないが、交渉の余地はあると判断した。そちらも武器を振るわないと約束してくれるか?」
「約束しよう」
「では、我らの街へ案内しよう。私の名前は『エドガー』」
「『陽介』だ。よろしくたのむ」
一行はエドガーに案内され、彼らの街へと向かう。
出鼻を挫かれた捜索、その行方は何処に...




