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再審の男  作者: 藤澤トオル
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龍星の乙女

それは、彼女の一言から始まった。



「ヨースケ!ドラゴン探しに行こうよ!!」


昼間に出掛けて、帰りが遅いと思い心配していたところに、アリシアは突然そう言い放った。

陽介は思わずペンを落としてアリシアを見る。彼女はそんな陽介を意に介さず念押しの様に言う。

「探そう!ドラゴン!」



数秒の沈黙の後、やっと陽介の脳が理解して尋ねる。

「急にどうしたんだよ。ドラゴン探そうなんて」

「ロマンだよ、ロマン!」

「それは認める。急に言い出した理由を教えてくれよ」

「見たいから!」

「ドラゴンを?」

「そう、ドラゴンを」


再び数秒の沈黙。陽介は質問をする。

「...何かあてがあるのか?」

「ある!」

勢いよく開けられたドアの前に立つアリシアの後ろから、ローブを目深に被った人物が入ってきた。

その人物はゆっくりとローブを脱ぐ。


大人の女性、というには少し若い、まだその顔にあどけなさを残す女性だった。日本で言うなら、高校生くらいだろうか?

そして何より目を引いたのは、前からでも僅かに見える龍らしき羽と、下半身から生えている尻尾だった。


「...はじめまして、『イーリス』と申します。種族は...ドラゴンと人間のハーフです」

「...彼女を使って探すのか?」

「そう!」

「ドラゴンを?」

「そう、ドラゴンを」

「えーっと、イーリスさんだっけか?すみません、なんかこいつが馬鹿な事言って、ドラゴンと」

「わ、私の!!!」




「と、父さん...私の父を...助けてください!」



「整理しよう」

陽介は目頭を押さえながら、そう言って続ける。

「君は...本当にドラゴンとのハーフなのか?」

「...はい。この外見のせいで街での生活に困窮し、路頭に迷っていたところをアリシアさんに助けていただきました」

「そう、ごめんね!身体が汚れてたから、ちょっと洗ってあげてた!」

アリシアが遅い理由はわかった。アリシアのテンションがおかしいのも、イーリスがドラゴンとのハーフであるという証明になる。


「君が本当にハーフというのは理解した。次に移ろう。君の父親は...その、あれだよ。どっちの方?」

「ドラゴンの方です」

「あぁ、それでドラゴン探そうなんて言ったのか」

「そう!人助け!ん?ドラゴン助けかな?」

「どっちもだろ」


陽介は暫し考える、この世界のドラゴンについて。

元々いた世界では空想上の存在でしかなかったドラゴンだが、こちらの世界では存在が確定している。目撃情報もある。

だが、本当にドラゴンと何らかのコンタクトを取った者は歴史的に見てもごく僅か。

いるのかもしれないが、決して人前には姿を見せない存在と言われている。

イーリスは、そんな存在の父親を探しているということになる。


「イーリス、君は父親を助けてほしいと言ったが、父親は何かをしたのか?」

「...ここより北の国、多分地図には記載されていない国に私の父はとても長い年月封印されています。理由は...父も教えてくれませんでした。ですがある日、父が私に夢で語りかけてきたのです。『命の灯火は残り僅か。我が娘よ、願わくば一目会いたい』と」


陽介は地図を出す。現在地も確認した。その位置より北となると...『スウェーデン』や『フィンランド』だろうか?どちらにせよ、地図情報は確定していなく、未開拓地域には違いなかった。

「この辺り...だったと思います」

イーリスは、スウェーデンの北部であろう位置を指差す。

「そんなところにも国があるのね。そっちにはあったの?陽介」

アリシアが陽介に尋ねる。今のところ、大まかな地図情報は元の世界と変わっていないことを利用するのだ。

「ああ、あったな。詳しくは知らんが...冬から春にかけて港が凍るとは聞いたことがある」

「今の季節は春だから...着く頃には夏でしょうね」


2人で頷いた後、陽介は深呼吸をしてからイーリスに向き直す。

「イーリス、最後の質問だ。『どうやってここまで来た?』」

「数年前に、密漁船に混ざって渡ってきました。しばらくは私の母とその友人達のおかげでどうにか暮らしていくことが出来ましたが...先程お話した父の言葉を聞いて、いてもたってもいられなくなり、母達を説得して飛び出してきました」


陽介はアリシアの方を見る。何も言わず、微笑を浮かべながら頷いた。

「...よし、じゃあまずは...服を買おう。父親に会いに行くんだ、そんな服装じゃみっともないだろ?」

その言葉を聞いて、イーリスは目に涙を浮かべながら頭を下げる。

「ありがとうございます!!」

「そうと決まったら、街に行きましょう!ほら、ヨースケも一緒に行くよ!男性の視点も欲しいし」

「...ドラゴンの感性と俺の感性は違うだろ」



こうして、後に伝説を残すことになるドラゴン救助隊は結成された。

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