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再審の男  作者: 藤澤トオル
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対等

陽介とアリシアは現在、あの2人組の家まで連れていかれ、拘束されている。


実は、陽介とアリシアは簡単に抜け出すことが可能なのだが、『ジヤヴォール』やこの異常事態についての情報を入手するため、拘束されるのを受け入れている。


男が銃口を突きつけながら陽介に尋ねる。

「お前達はなぜ『ジヤヴォール』の毛皮を持っている?中身はどうした?」

「その前にこっちから質問がある。ジヤヴォールもはなんだ?」

少し考えたあと、男は答える。

「私達に伝わる...悪魔だ。こちらは答えた。そちらも答えてもらおう」

陽介は包み隠さず全てを話した。


男は女性と顔を見合せ、頷いた後に再び陽介に尋ねる。

「お前達はこの森の怒りに触れた。だが、こちらとしては好都合だ」

「...と、言うと?」

現在、視線は陽介に集まり、アリシアの方は若干手薄である。アリシアは筋力補正値を向上させ、備える。

男は答える。

「私達が『ジヤヴォール』を仕留める為の囮になってもらおう」


アリシアは補正値を元に戻しながら尋ねる。

「私達が仕留めたのは『ジヤヴォール』よね?なら、もう『ジヤヴォール』は居ないんじゃないの?」

今度は女性が答えた。

「お前達が殺したせいで、肉体という枷から解き放たれてしまったのだ。この寒さもそのせいだ」

「だから、『ジヤヴォール』を倒す必要があるのね」

女性は首を振ってから言った。

「殺さなくてもいい、新たな枷を用意すればいいだけだからな」


陽介とアリシアは察する。要するに、陽介達を囮にして、『ジヤヴォール』を倒せればよし。囮役が死んでしまってもそれが新たな枷になるのでよし。

つまり、彼らが狙われる可能性を考慮しなければ、どうやっても彼らはこの異常事態から脱出出来るのだ。


陽介は『ジヤヴォール』の情報を探るため、男に尋ねる。

「その...なんだ、強いのか?『ジヤヴォール』ってのは」

男は淡々と答えた。

「肉体の枷を外したお前達からしたらわからないが、少なくとも俺達から見たら勝てる相手ではない」

「つまり、今の状態の『ジヤヴォール』との交戦経験はない?」

男は沈黙を貫いた、図星なのだろう。


アリシアと目配せをする、行動を起こすようだ。陽介は壁に背中を押し付けながら、立ち上がる。

「まあ、俺らだって人の都合で死ぬ訳にはいかない」

男は少し離れながらも銃口をそらさない。

「動くな!...撃つぞ!」

「俺らが死んで困るのはお前らだろう?生け贄が減るんだからな」

「こっちの女がどうなってもいいのか!?」

女性が声をあげる。陽介を見て、アリシアを見てないのが運の尽きだろう。

アリシアは拘束されていない足で女性の銃を蹴りあげる。その後筋力補正値を最大にして紐を引きちぎり、女性の顔を掴み、地面に叩きつける。


一瞬の出来事だった。女性は抵抗する間もなく気絶した。

「形勢逆転よ。あなたはどうする?」

アリシアが男に話しかける。

男は銃を落とし、両手をあげる。

「...降参だ。お願いだ、彼女の命だけは見逃してくれ」

陽介は魔術で手首の関節を外しながら答えた。

「とって食おうってわけじゃない。ただ、俺らとお前達の立場はあくまでも対等っていうことを示したかっただけだ」

「それに、私達もここから速く移動しないといけないからね」

「...そうか。わかった」


女性が目を醒ましてから、男は事情を説明し、本題に移った。男の名前は『ミーシャ』。女性の名前は『ニーナ』という。

ミーシャが説明するには、『ジヤヴォール』に関しての情報は枷を付けられている時の物しかなく、外された時の情報は伝承レベルでしかないらしい。


伝承によるとこうである。

・ジヤヴォールの枷が外された時、世界は永遠に冬に包まれ、それまでの全ては否定される。

・元に戻すには、新たな肉体を捧げそれを枷にするか、ジヤヴォールを消し去るしかない。

・人が支配を始めているこの世界を嫌う獣たちは、必ずジヤヴォールの味方をする。


アリシアが質問をする。

「『ジヤヴォール』の本来の姿は?」

「黒い布を纏っているらしい。だが、それすらも仮の姿だと伝わっている」

かなり情報が少ない。かといって、ミーシャ達が隠し事をしているようにも見えなかった。

陽介はさらに質問をする。

「1度交戦し、撤退するのはどうだ?」

「不可能ではないが、しっかりとした撤退は無理だろう。1度敵意を見せてしまえば、他の獣達がすぐに『ジヤヴォール』に報告するはずだ」


陽介は少し考えたあと、決断する。

「最初に俺が1人で突っ込んで、情報を確保しよう。そのあと、アリシアに魔術で教える。これでいいだろう」

「だが、そうすると君の負担と危険性が段違いだ」

「気にするな、丈夫に出来ている」

「しかし...」

「大丈夫よ、生存能力の高さは私が証明するわ」

アリシアがフォローしてくれた。それを聞き、ミーシャも納得してくれたようだ。


翌日、辺りは一面銀世界になっていた。3センチほどの積雪だろうか?いずれにせよ、『ジヤヴォール』の影響が出ているのを実感した。

陽介は現段階での最大限の準備を済ませる。昨日の夜、ミーシャ達の家にあった本を読み漁った。『高速学習』の効果が出ていればこの状況でも問題なく戦えるはずだ。

「行ってくる」

「気をつけて、周辺の獣は私達に任せなさい」

アリシアと拳を合わせてから、陽介は『ジヤヴォール』を倒した地点へと進む。


少し進むと、例の地点にたどり着いた。驚く事に、取り出された内臓などは未だ新鮮そのものである。

罠の可能性が高い。陽介はすぐさま最寄りの草むらに身を隠す。

それから数秒後、辺りが急激に暗くなっていった。そして、臓物の上に黒い霧が現れ、形を作っていき...

「...なるほど、アレか」


伝承通りの姿で、ソレは現れた。『悪魔』と言い表すのでは足りない、おぞましさを放つ何かであった。

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