序章
「では、ホームルームを始める。委員長、生徒会からの連絡を」
「はい。現在学園周辺で変質者の報告があり…」
毎日毎日不審者の話がばっかりしやがって、そんなヤツ出てきたところで俺が一発で倒してやる。
今日はゲーセンにやりたかった新台が入る日なのに。剣で戦う格ゲーで前作も爽快だったけど、
今回は前作よりもアクション性がましてリアル感がすごい。
剣の種類、敵も人型だけじゃなくて動物やゴーストタイプなんかも…
「布九君、あなた私の話聞いてるの?」
「ああ、聞いてる。聞いてるから早く終わらせてくれよ。帰りにゲーセン行きたいし」
「ちょっと、ゲームセンターへの入店は校則で禁止されているでしょ」
「あーわかった、わかった」
ムカつくなあのメガネサル!
「先生」
「あ、はい」
「はあ〜ボーっとしてないでしっかりして下さいね」
丁度良い、何時ものオモチャでストレス発散と行くか。
「えっと職員会議の方から変質者が…」
「それ委員長から聞いたし」
「ははは、しっかりしてよね○○先生」
「それにその変質者先生なんじゃないの?先生昨日スリッパで帰ったよね」
「嘘!超ウケる~写メとかないの?」
「あーソレな、忘れてた今度撮っとくわ」
「ちょっと静かにしなさいよ!先生も先生らしく注意して下さい」
「なんだよ!うるせえな!」
「きゃあああーー!」
「おおお前背中に…」
「なんだよ⁉︎」
「ごっごっゴキブリが居んだよ!!超気色悪りー」
「嘘だろ⁈おッオイ取れよ」
「ギャ〜〜!近寄らないで、こっち来んなっ来たら酷いわよ!」
「おい!委員長イスを置け危ないから」
「ゴキブリが居ないぞ、どこ行った!超怖いんだけど」
「イヤーー!来んなーーっ」
委員長がイスを振りかぶった!
「委員長待て!」
このままじゃ危ないと感じ、鞄を手に取り教室を飛び出した。
「ふざけんな、あの暴走猿!」
溜まり場の家庭科準備室に駆け込み、急いで服脱ぎゴキブリを居ないか確認した。
居ないことに安心すると、同時にやるせない怒りが込み上げてくる。
「くっそ、最悪だ~!腹の虫が収まらない。このままじゃ明日笑い者になる、それだけは避けないとな」
何かいい手はないか…そういえばさっきスリッパで帰る写真見たいって言ってたな、それを明日の朝見せてネタにして帳消しにするか。
「確か…この辺りあった○○先生は…コレだ」
持ち出した先生の靴を持ち近場の倉庫に投げ入れ先生が下校する6時過ぎまで、近くのコンビニに行ったり、携帯でゲームなどをしながら適当に時間を潰した。
「そろそろ、時間だな」
職員用の下駄箱からちょっと離れた所で俺は携帯の準備をして待つ。
「早く来いよ~先生」
暫くすると廊下の向こうからアホづらでやって来て、下駄箱を覗き溜息を吐いたのがみえた。いよいよだと思い携帯をカメラモードにする。
「え!?」
不思議なことに先生は迷いなく隠し場所である倉庫へと向かい靴を見つけて帰ってしまった。誰かに見られていた?
「くっそ!誰だ」
辺りを見回したところで誰もいるはずも無く、
苛立ちだけが残った。
翌日も朝から雨が降りイライラが募る上に今日に限って信号が赤ばかりに感じる。
「おう!昨日は超災難だったな」
「うるせいー、それよりお前昨日先生にちくったりしていないだろうな」
「はあ?なんのことだ」
「なら良い」
「変なヤツだな」
授業をパスして溜まり場で寝ていた。
午後になり教室に向かうと教室から何やら女子の悲鳴が!
「まさか…」
慌てて教室に入ると。
「こっちにくるなー!」
俺の席のところで委員長が悲鳴に似た声を出して暴れている。
原因はまたゴキブリだった。
「くっそ!なんでだ!」
怒りに任せてゴキブリを潰そうと、
近くあったカバンで叩きつけた。
バシン!
ぶーん
俺の攻撃は外れ、ゴキブリは飛び上がり委員長の顔に着地した!
「!?」
委員長はそのまま倒れてしまった?
「何かすごい音がしたが!」
先生が入ってきて委員長に駆け寄った。
「お、おい!大丈夫か⁉︎ これはやりすぎじゃ…それよりも保険室へ連れて行くから、みんなは自主しててくれ」
そう言って委員長を抱え、保健室へと運んで行った。
「さすが先生ね、いざとなったら頼りになるけどそれに比べて」
「それよりゴキブリはどこに?」
「俺を見るんじゃね!」
最悪だ、一体どうなってんだ!怒りに震えながら用務員室に走った。
「おい!用務員!俺の席にゴキブリが出るんだ何とかしろ!」
「え?ゴキブリ?教室のある方で最近出たなんてきいてないが」
「うっせえ!出たんだよ何とかしろ」
「そしたら、業者を呼んで」
「今すぐなんとかしろ!」
「イヤでも」
「早くしろ!」
「ヒィ」
その後、用務員が殺虫剤などを散布したが、
毎日の様にロッカーや下駄箱などに現れやがった。
「クソ!きっと誰かが持ち込んでやっているんだ!」
片っ端から問い詰めたてもわかねぇ!
「ほら、あの当たり散らしてるのがゴキブリマンよ」
「うっそ、ヤバそう」
「うるせいな!その言葉次言ったらタダじゃおかねぇぞ」
何もかもが上手く行かねぇ!
ゴキブリマンというあだ名で陰で呼ぶ奴まで出始めやがった。
撮ろうとしてた先生の写メも、何度やってもダメだった。
「絶対俺の邪魔をしている奴がいる、委員長?いや先生が見張ってるのか…それともこの前俺にビビッてひきこもったアイツか、それかクラスの…」
委員長、先生、クラスの奴を問い詰めたが確証も無く、その行為が逆ギレだの言ってる奴が増えてきた。
「このままじゃマズイな」
怪しいのは先生と委員長この二人だ…なんとか証拠を掴まねえと。
そんなある日チャンスは訪れた、放課後のホームルームのあと先生と委員長が職員室で今度のクラス会の打ち合わせをするとのことだった。
「今なら…」
そう思い急いで先生の靴を隠しに行き先生の靴を抜き取ると下駄箱から一番遠い倉庫に隠し、今回はその場を離れずに見張ることにした。
「様子を見に来るのは誰だ…」
しかし、誰もこなかった上に先生は何の迷いも無く靴を見つけ玄関を出て行ってしまった。
「くっそ!一体どうなってんだ!」
完全に頭に血が上り先生を問い詰めようと急いで下駄箱の靴を取り出し先生を追おうとするが靴を履いた瞬間…
グニャ
「なんだ…」
靴の中を見ると数匹のミミズが…
「誰だ~~~~~!出てこい!」
叫び声に答える者は居ない…