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魔導士 マルス  作者: 白井 みちる
第一章
7/26

subject : 緑目

「若造」

アーデルベルトもアドラーも帰ったのに、イグナーツはまだ酒を飲んでいる。馬鹿みたいに酒に強い爺だ。

「その目はどうした」

そう言ってグラスに残った酒を飲みほした。それを見たスアレフは新しい酒を注ぎ始める。俺はそれに対してどう返事をしたらいいものか迷った。イグナーツの雰囲気が普段のそれと違うきがした。

「学校じゃ何かと不便なんだ。別になんでもない」

そう言って俺は右目のカラーコンタクトを外した。生まれつき、俺の右目は緑色をしている。

「そうか」

イグナーツがこちらを見る。

数秒、俺を見つめ何かを言いたそうにしたが、結局口を閉ざした。スアレフから差し出されたグラスをあおる。

少し、しわが増えたな。無意識にそう思った。

「ワシにとっちゃ、7年なんてあっという間だった」

「そうか」

「久しぶりに会えてよかった」

馬鹿みたいに元気なのに、酒を飲むと昔を思いだしてしみったれる。イグナーツも普通の爺だ。そんなことを考えてしまう俺も年を取った。

ぐいっと、酒を飲み干すと、イグナーツはおもむろに立ち上がった。

「酒が回ったわい」

上へと登る階段に向かった。

「ちょいとだけ、上にいる。なに、すぐ帰る」

イグナーツは階段を登っていった。扉はその重さを示すかのようにゆっくりと閉じた。

何十年もこの世界で戦い、そのたびに生き残ってきた戦士の背中には、どうにも見えなかった。


二人になった部屋で、グラスを揺らした。ワインには自分の顔がゆらゆらと揺れていた。

「マルス」

目線を上げる。スアレフは少しだけ、悲しそうな顔をしていた。そして悲しそうに笑った。どうしてかは、わからなかった。

「夕ご飯にしよっか」




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