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魔導士 マルス  作者: 白井 みちる
第一章
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subject : 時計

「彼らはきっと少人数の誘拐しかしないはずだと。ヴァッヘによればグレードの高い奴が動いているようには思えないって」

相手によって行動が読める奴らもいる。でも、いつもの情報は、『何かが起こる』それだけだ。とくに自由で気高いオオカミカールロルフは。今回は、情報が多い。いや、多すぎる。まるで、誰かが裏で操っているような嫌な気配がある。今回はいつもより気を引き締める必要がありそうだ。

「今回の情報がやけに多いのはどういう経緯かわかるか」

「ううん」

スアレフは首を振った。同時に耳につけた赤いピアスが揺れる。

「これだけ情報がそろってるっていうのは確かに不自然だよね。だから、用心はしといて」

「あぁ」

もちろん、いつだって用心してる。予想しないことが起きた時にどう対処するか。どう指揮するか。それに全てがかかっている。俺がやらなきゃいけない。二年前に、誓ったんだ。

手のひらに収まる程の懐中時計。ダイアルにはローマ数字が刻まれている。

ポケットに突っ込んだ手の中でコロコロとまわし、握りしめた。

「おそらくこの1週間の間に事件は起きる。連絡が取れるようにしといて」



「報告はこれで終わり」

スアレフの声に顔を上げる。

「じゃあ、みんな飲む?」

こんな昼間から飲む気分ではない。

「いや俺は」

「飲むに決まっとるじゃろう!なぁ若造」

うわっはっはっ、とイグナーツが背中を叩く。痛い。力の加減ってもんを知らないのかこのじじいは。

「ええもちろん。スアレフ、いつもの頂けますか?」

「はい!」

スアレフは満面の笑みでそれに応え、酒を作り始めた。俺の意見などどこへやら。

「俺にはスアレフの愛情がたくさん詰まった、今日のおすすめを」

「ふふっ」

アドラーの軽口にも慣れたらしい。

「覚えとけよじじい」

俺の言葉にイグナーツはニヤリとした。

「年寄りには何の事だかわからんなあ」

「酒に殺されるぞ」

「酒なんざ俺にとっちゃどうでもねえ。それより、なあ若造。こんな楽しい時間を1人で過ごすほど勿体ねえことはないだろ」

俺はイグナーツを見上げる。

「なんてな、年寄りの戯言じゃい」

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