subject : カールロルフ
「おかえりなさい」
大きな平家に見える俺の家。その家の地下にあるのは魔導士のたまり場。そしてそこが、俺のいるべき場所。
「ただいま」
地下へと続く階段を下りた先にあるコンクリートむき出しの扉を開けると、奥行きの長い部屋に出る。壁面には全国各地のワインボトルが並んでいる。
薄暗いその部屋にいつもスアレフはいる。お気に入りのドレスを身にまとっているため、派手な印象を与えるが、年は俺とほぼ変わらない。
人見知りが激しく相手を傷つけることを怖がるため戦闘にはあまり向いていない。情報収集でもしていたらいいのに、いつも俺の後ろに隠れて戦いについてくる。そのくせ使い物にならない。
「荷物置いたらきて」
スアレフはグラスをぬぐいながら言った。
「分かった」
さらに奥へと進むと階段が見える。そこを下りれば俺の部屋だ。
リュックを何もない部屋の隅に置いて、部屋を出た。
「もうちょっと待ってて。今」
スアレフが言いかけたところでブンと耳障りな音が地下に響いた。
「おーい、若造。死んでないか~?」
「お邪魔します」
「お、今日もかわいいドレス着てんじゃん」
全く統率のとれていない厄介なやつらが到着した。
なんで三人増えるだけでこんなにもうるさくなるのか。
答えは簡単だ。
個々がうるさい。
着いたとたんから騒々しい奴らだ。
「ハッハッハ」
なぜか俺を見て豪快な笑い方をするゴーロ=イグナーツ・ジラード。
もう年は70近いはずなのにそのたくましい体格は衰えを知らない。
「ガキと過ごしてるだけじゃ死なんか。若造の演技、ワシャ好きだけどな。いつもあれでいてほしいもんじゃい」
俺はイグナーツを一瞥する。
「なぁ、お前もそう思わんか?アディ」
「僕は、いつもの彼も好きですが」
似ても似つかないその息子。バカ律儀なヨシュカ=アーデルベルト・ジラードはイグナーツのほうへ体を向けて受け答えをする。
「学校での彼にも会ってみたい気はします」
そう言ってこちらへウインクするアーデルベルトを無視する。
「なぁなぁ、一回ぐらいいいじゃねぇか。こんな湿っぽいところにいないで、一緒に都会行こーぜ」
また、あいつは。
「いやぁ、でも・・・」
ちらちらとこちらを見て助けてくれるように念を送っているであろうスアレフ。
このままでは始まらないから助けてやることにした。
「おい、スアレフ。早く本題に移れ」
「あ、うん」
来るたびにスアレフを連れて行こうとするヴィルヘルム・アドラーは置いとくとして。
この三人が一気に集まるとは。まさか、あいつらか。
「自由で気高いオオカミに動きがあったと、ヴァッヘから連絡があったの」