邂逅
本日3話目
8月10日(土)
午後
キーンコーン カーンコーン
「やったー、やっと終わったー」
誰かが叫んだ。それをきっかけにするようにクラス全体がざわめき出す
ザワ、ザワザワ
うーん、今日の晩御飯の材料買ってこなきゃ
同じグループの人に買い物をしなければならないと伝えて教室を足早に立ち去る
買うものは、と
冷蔵庫の中にこの前ペペロンチーノを作った時のオニオンチューブがまだ残ってた
パスタの乾麺もまだあるはず
「ベーコンがないと騒ぐだろうな。優奈」
肉は当然買い置きできないので新しく買ってこなければならない
そんなことを考えながら、デパートに行くための道を歩いていると
ドカッ、バサッ
「ん?」
振り返るとガラの悪そうな連中とおばあちゃんがぶつかってしまっているのが見えた
「ってえな。おいコラ何ぶつかってんだオラあ」
うわあ典型的な不良だ。巻き込まれないうちにさっさとデパートに向かう
途中の曲がり角で曲がる時にさりげなく後ろを見ると
「チッ」
不良がおばあちゃんを殴っていた
おばあちゃんはよろめいて不良に謝っている
よかった気分が一気にどん底まで落ちていく
「・・・とは言っても、逃げ出してる自分もあいつらとそんなに変わらないけどな・・・」
自嘲気味にそう呟いて、その場をあとにする
スーパーで買い物をした後家に戻る
「・・・ただいま・・・・・」
返事のする人のいない家にそう言って中に入っていく
「思ったより時間がかかったな・・・。すぐに晩御飯作らないと」
お湯を温めて、沸騰するまでにベーコンを3センチほどに切る。お湯が沸いたらパスタを入れ、タイマーをつける。
3分間の間で手早くパセリを切ってフライパンで炙ってパスタの茹で汁を少しもらってにんにくのチューブを溶かして入れる
3分経ったらパセリ、ベーコンと混ぜて一緒に炒める
「あ、唐辛子忘れた。一味で代わりになるかなあ。」
一応同じ唐辛子のはず。きっと大丈夫だ
とろみがついてきたら完成
「おお、美味しそうだねー。さすがにいちゃん」
「あれっ。いつの間に帰ったんだ」
「相変わらずの集中力だね・・・」
呆れたような目でこっちを見てくる
「まあ、冷めないうちに早く食べちゃおうよ」
「ああ。そうだな」
他愛ない会話をして少し経ってから優奈がいきなり切り出した
「にいちゃん、なんかあった?なんか考え事してるみたいだけど」
「あ、いや何でもない」
優奈に嫌われてしまう気がしてあの時のことは言う気になれなかった
「ふーん。まあ困ったら相談してよ?」
「ありがとう。大したことじゃないから大丈夫だ」
あの時のこと、老婆が殴られていた時のことが頭からちらついて離れない
風呂に入ったあとベッドに倒れこみ、ブラ下がる蛍光灯を見ながらボーっとする
いくらか経って時計の針が0時を指した頃パッと部屋が明るくなった気がして起き上がる
するとそこには・・・
「やあ会いたかったよ。さあ彼の物語を読みに行こう」
神が立っていた
やっと会えました