好3 カレン編
待っていてくださった方々、お待たせしました4話です。
楽しんでいただけたら幸いです。
「何さっきからニヤニヤしてるの?」
「ニヤニヤなんかしてないよ?」
「いや、してる」
楓が私の顔を見ながらからかうように言ってくる。
その顔は、何処と無く嬉しそうだ。
「カレン、何かいいことあったの?」
チーちゃんがお弁当を食べながら聞いてくる。
「それが、カレンったらさっきからからずっとニヤニヤしてて気持ち悪いのよ。 何か知らない?」
「いや、質問をしてるのは私なのだけれど……。 というか、そもそも私は楓じゃなくて、カレンに質問したはずなのだけれど……」
チーちゃんが少しムスっとする。
許しておくれチーちゃん、私はいま嬉しいのはもちろんなのだけれど、それと同じかそれよりも大きな後悔をしているんだよ……。
「美梨はなんか心当たりないの?」
チーちゃんは仕方なくという感じで、弁当にがっついている美梨に話を振る。
「…………」
「話聞いてるの美梨!」
チーちゃんが美梨の弁当を取り上げた。
「あっ…………う、うぅ〜」
美梨は主人に大好物を取られた犬のような悲しみに満ちた表情に変わり、頬に一つの雫をつたわせた。
「ちょ、ちょっと泣かないでよ……うぅ〜」
罪悪感を感じたのかチーちゃんは謝り、そして泣き出した。
「え? あ、ちょ……」
それを見た楓はわけがわからなくなり、見るからにパニックに陥っている。
え、なんでこんな大惨事になってるの?
もしかして、私のせい?
「あ、そのね……別に渋ってるとかそういうわけじゃないし、言うのが恥ずかしかったから何も答えなかっただけだから、みんな泣き止んで?」
「カレン、多分美梨と千華はそのことで泣いてるんじゃないと思うのだけれど……」
取り乱しながら、楓がそう言う。
確かに、美梨は弁当を取り上げられて泣いてるし、チーちゃんもそれに影響されて泣いてるわけで……。
状況を整理すると、この混沌がなぜ生まれたのか、誰が生んだのかがますます分からなくなってきた。 多分、事の発端は私なのだけれど、それもそれで何か違うような気がしなくもない。
それよりも、この状況をなんとかしないと……。
「ち、チーちゃん、とりあえず美梨にお弁当返してあげて? そしたら泣き止むと思うから……」
泣いているチーちゃんに促す。
「う、うん……わかった」
チーちゃんが美梨のもとに行き、弁当をそっと返す。
「ごめんね美梨、ついカッとなって弁当取り上げちゃったりして……」
「うっ、んーん。 話聞いてなかったの私も悪かったから……あたしこそごめんね」
美梨が泣き止み、一件落着……とはいかないようで、楓が質問をしてくる。
「で、さっきの言葉の意味を教えてくれないかしらカレン」
「お、おう……」
完全に油断していた。 というよりも忘れていた……事の発端は私の沈黙で、さっき沈黙の理由をいったのだった。
「あのですね、恥ずかしながら私山本カレンはこ、恋をしてしまったようです……はい」
カシャッ
美梨が箸を落とした。
「え、まじ?」
「まじです……」
「まさか、カレンが何処の馬の骨ともわからないような男子に恋をしたというの?」
楓が見てはいけないものを見たような物言いをする。
「なにその言い方! まるで私が今まで付き合ってきた人がみんないいとこのお坊ちゃんみたいな言い方は!」
それは流石の私でも少しムスっとしてしまいますよ楓さん!
「まあまあみんな落ち着いて……」
チーちゃんがみんなをなだめるように手をヒラヒラとさせる。
流石は私の自慢の幼馴染。 ちゃんと場をわきまえることのできる子……惚れちゃいそうだぜ。
「ありがとうチーちゃん。 止めてくれなかったら、今頃この生徒会室がリングと化していたところだったよ」
「それは良かった。 ところで……誰のことを好きになったの?」
ん? おかしいな、今チーちゃんに誰が好きになったのか聞かれたよ?
さっきのは場を静めたかったんじゃなかったのかな?
「あれ、チーちゃん? 今みんなをおとなしくさせたのは私をかばってくれたわけじゃないの?」
「違うわよ? ただ私の独壇場にしたかっただけよ?」
当たり前でしょとでも、言いそうな顔でチーちゃんは言う。
この幼馴染は、場を静めたかったわけではなく、場を制したかっただけらしい。
「私のために場を静めてくれたたと思って、あらイケメン。 って思った私のときめきを返して!」
「まぁまぁ、そんなに怒らないでよカレン。 実際場は静まったし良かったじゃない?」
「良かったの? 振り出しに戻っただけのような気がするけど……?」
楓がキョトンとしながら言う。
まさにその通りで、振り出しに戻ったと言うことはまた私が質問攻めに会うという事ですね、はい。
「んで、だれ?」
チーちゃんが嬉々として聞いてくる。
「いや、名前がわかんないんだよね……うん」
「またまた〜隠しちゃって」
実際ほんとにわからないのだから仕方がない。
「いやいや、ほんとなんだって! わかってたら苦労しないよ!」
名前がわかっていたら、そこからクラスを割り出せたりするんだから、出来れば知りたい……いや、絶対知りたい!
「もしかして……」
ここで沈黙を決めていた楓が口を開く……
「能登君のこと?」
次話でやっと能登君の本格登場の予定です。