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君のノコしたモノ  作者: 白神灼 優鈴
3/5

好2 カレン編

2話です。

よろしくお願いします。

……チャポン

「ふぅ〜……」

浴槽の中で脚を伸ばして、天井を見上げる。

毛先が少し湯船に浸かってしまっているのを見て、もう少し髪を上げておけばよかったなぁと、少し後悔する。

あの後、どうやって家に帰り、晩御飯に何をたべたのか、いつ制服を脱いだのか、いつ脱衣所で服を脱ぎ、いつ髪と身体を洗ったのかわからない。

「あの人のこと、知りたいな……」

あの時見た人影の片方。

あの人のことが知りたい、話してみたい……。

そう思いながら湯船に浸かっていたら、ふと明日から学校が本格的に始まることを思い出す。

学校が本格的に始まることは、つまりチーちゃん、美梨、楓にほぼ毎日会えるのはもちろんのこと、勉強も同時に始まると言うことで、嬉しさ半分、気だるさ半分みたいな気持ちになる。

「出るかな……」

湯船からあがり、体をタオルで拭き下着を着け、パジャマを着る。

「喉渇いたなぁ〜……」

冷蔵庫の前で立ち止まり、扉を開ける。

「あ、コーヒー牛乳さんがあるじゃないですか♪」

冷蔵庫の中からコーヒー牛乳さん(紙パック)とグラスを取り出す。

他の家ではなかなかお目にかかれないのだが、私の家ではガラス製のグラスを冷凍庫の中に入れておく習慣がある。小さい頃から見ている光景なので、特別珍しいとは思わないが、友達に聞くとやっぱり珍しいらしい。

冷凍庫から取り出したグラスに、先ほどまで冷蔵庫で冷やされていてキンキンに冷えたコーヒー牛乳さんを注ぎ込む。

コーヒー牛乳さんを注ぐと凍りついていたグラスが徐々に溶け出し、冷気をあげる。

その光景を見て、自分が生唾を飲み込んだのがわかった。

「もう待ちきれない……」

勢いよくグラスを取り、そのままの勢いでコーヒー牛乳さんを飲み干す。

キンキンに冷えたコーヒー牛乳さんが、私の乾いた身体を喉から順に身体全体を潤していくのがわかる。

「ん〜……っうまい! やっぱりお風呂上がりのコーヒー牛乳さんは格別ですなぁ〜」

〜♪

グラスを流しにおいた時、ポッケに入れてあった携帯が振動した。

振動と同時に気の抜けるような音楽が流れる。

「こんな時間に誰だろ?」

携帯の画面を確認すると、チーちゃんからNYAN(ニャン:巷で流行りのメッセージアプリ)の私、チーちゃん、美梨、楓の4人で構成されたグループチャット[甘菓子組]にメッセージが届いていた。

千華『大丈夫?(´・ω・`)』

カレン『ん?なにが?(´・ω・`)』

千華『帰りに学校の前を通り過ぎた辺りから、ぼーっとしすぎってくらいぼーっとしてたから|ω・`)』

美梨『本当だよ!いきなり立ち止まっちゃって∑(・`ω・ノ)ノってなったよ∑(・`ω・ノ)ノって!』

楓『私も心配……(´・ω・`)』

カレン『大丈夫だよ?心配してくれてありがとね(*´ω`*)』

3人が心配してくれることは、すごく嬉しい。が、なんて答えたらいいかがわからない。

千華『何かあったらすぐにいってね?(´・ω・`)』

美梨『そーだよ!すぐにいってね!あと、明日から学校やだ_(°ω°」 ∠)_三_(°ω°」 ∠)_三 ザッザッ』

楓『ならいいのだけれど……(´・ω・`)それと、美梨はうるさい(  '-' )ノ)`-' )べ』

美梨『あう(´;ω;`)』

なんかあったら言ってね……か。

正直、あの桜の後ろに見えた人影の片方へ強く惹かれたことを言うべきか言わないべきか自分の中で答えがでない。

千華『カレン?』

美梨『おーい』

楓『どうかしたの、カレン?』

みんなが心配そうにメッセージを送ってくる。

早く返さなきゃ……。

書きたいことは頭でわかっているのに、なんて書いたらいいのかがわからない。

あの人影のことを思い出すと、自分でもわかる程心拍数が上がる。

果たして、この気持ちがただの興味なのか、恋なのかすら、考えれば考える程にわからなくなっていく。

結局、私がみんなに送れたメッセージは……

カレン『ごめん、本当に大丈夫だから心配しないで?(*´ω`*)』

だった。

その後私たちは、内容の無いような、他愛もない話をした。

千華『そろそろ寝ましょうか。明日から学校だし(´ぅω・`)ネムタス』

言われて時計を見ると、針は12時を指していた。

カレン『そうだねぇ〜(๑•́ωก̀๑)zzZ』

美梨『ん、おやすみ〜・:*。・:*三( o'ω')o』

楓『おやすみ〜(´ぅω・`)』

その会話を最後に、私たち4人は床についた。

明日、あの人に会えるかもしれない……。

そんなことを夢見ながら、私は眠りにおちていった。



「おはよ〜」

「あら、今日は早いのね。ごはんできてるわよ」

「う〜ん……」

目をこすり、まだ覚醒しきっていない意識のなか、テーブルに並んでいる自分の朝食の前に座る。

「いただきま〜す……はむ」

トーストをかじり、牛乳を飲む。

炭水化物おいしすぎる。

トーストをくわえ、リモコンでテレビをつける。

『おはようございます。それでは早速、天気予報から行きたいと思います……』

いつも見ているニュース番組がテレビに映し出され、いつもと同じように進行していく。

『さて、次は星座占いです!』

「お母さん、ごちそうさまでした〜。ん、今日は何位かなぁ?」

「はいね〜。 支度しなさいよ?」

「わかってるってぇ〜。 これ見たら支度する〜」

毎朝楽しみにしている星座占いが始まる。大抵の女子、女性は星座占いや、占いが大好きだと、私は認識している。だって、私がこんなに好きなんだから。

マヌケな音楽に合わせ順位が2位から11位まで、運勢、ラッキーアイテム&カラーが表示され、アナウンサーがその表示を読み上げていく。

「お! 私1位か、12位だ! でも、12位だったらやだなぁ……」

『それでは、いってみましょう! 今日、最もラッキーな星座は……』

一瞬アナウンサーが間を開ける。

この人、間の取り方うまいな。

『こちら! さそり座のあなたです! 今日はなにをやっても成功しちゃう、超ハッピーな1日になるかも! もしかしたら、運命の人が……! ラッキーアイテムはボールペン、ラッキーカラーは黄色です! さて、続いて今日、最も悪い運勢なのは……』

「1位だぁーーーー!!!!」

跳びはね喜ぶ。これで私の今日は約束されたも同然……なにも怖いものはないのだ!

私が1人で喜びの舞を何処かで見ているであろう、今は亡き祖母に奉納していると、背筋に悪寒がしだす。

「カレン、早くしたくしなさいよ?」

後ろから地を這うような低い声が聞こえた。

恐る恐る振り返ると、すごくいい笑顔をしているのに、目が笑っていない包丁をもったお母さんがこちらをみていた。

「は、はい……ただいま」

私は一目散に2階に上がり自分の部屋のクローゼットにかけてあった制服を着ると、急いでカバンを持ち玄関へ駆け下りる。

「いってきます!」

「いってらっしゃい、気をつけてね」

玄関を出ると、チーちゃんがチャイムを鳴らそうとしているところに出くわした。

「あ、チーちゃんおはよ〜」

「あら、今日はもう起きてたのね。おはよ」

チーちゃんが心底驚いた顔で挨拶をする。

そんなに驚かれると、すこしだけ傷ついちゃいますよ、ねぇさん。

「あ、おっはよー!」

「おはよー」

しばらく歩くといつも待ち合わせで使っているベンチで美梨はドーナツを、楓はコーヒーを飲みながら座っている。

「おはよ〜」

「お待たせ」

そのまま学校へ一緒に行く。

「今日から学校かー、たるいなー」

美梨が小石を蹴りながら言う。

その言葉に全員が賛成し、そのあと学校が始まって嫌なことや、いいことを話しながら学校へと向かった。


ーー♪


お昼休みを告げるチャイムが教室中に鳴り響く。

「やっとお昼だぁ〜」

大きく伸びをして、立ち上がる。

「腹減ったー」

「カレン、今日はどこで食べる?」

美梨と楓が自分たちのお弁当をもって私の席にちかづいてくる。

「う〜む……。 ま、いつも通り生徒会室でいいでしょ」

「それもそうね」

言いながら生徒会室へ向かい歩き出す。

「チーちゃんいるかな?」

「一応、連絡は入れておいたわよ。カレンはいっつも連絡入れずに行くから」

「さすが楓、手がはや〜い」

「ちょっと! そんな大きい声で、しかもそんな勘違いされるようなことを言わないでよ、カレン!」

楓が顔を紅く染めて、追いかけてくる。

「え〜? だめ〜?」

「だ、ために決まってるでしょ!」

「そんなにムキになるなよ、楓ー」

「あ、こらカレン! 逃げないの!」

楓が私の後を走って追ってくる。

「ひゃっ!」

急に何か物にぶつかり、その拍子に廊下に尻餅をついてしまう。

「あ、ごめん。 大丈夫? 怪我はない?」

「カレン大丈夫?」

「大丈夫かー? カレン」

どうやらぶつかったのは、物ではなく人だったようで、心配そうに声をかけて来てくれる。

綺麗で良く耳に届く声の持ち主はどうやら男子生徒らしい。さっきちらっと制服が見えたからそう判断したんだけども……。

「あ、双子戦姫(ツインヴァルキュリー)、ですよね……?」

男子生徒が少し申し訳なさそうに聞いてくる。

「やっぱりあの噂は本当だったんだ……とほほ」

噂が本当だったことを実感させられる。

「あ、立てます?」

男子生徒が手を差し伸べてくる。

「あ、ありがと……!」

お礼を言いつつ、顔を上げると男子生徒の顔が目に入る。

静かに、確実に、着々と鼓動が早くなっていく……。

その顔は昨日、桜の向こう側でみた人影……私が一目惚れしたその人だった。

そう思った瞬間に、鼓動が一気に加速し顔が熱くなる。


ーやっと逢えた……!

次回では、少し物語が動きます……本当に少しだけ。

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