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期待、願い、現実。

作者: ちゃちゃ

タイトルがそのままテーマです。

一時間で書ける範囲を書きました。

理由はあとがきにて。

――頑張って。


 わたしは単なる様式美で言葉を投げ掛け、肩越しに振り返ってくる顔に視線を合わさずにその背を見送った。わたしの事を心配そうに振り向いてくる顔は憎らしいし、肩から掛けられたボストンバッグも憎らしくて憎らしくて仕方ない。すぐに背中を見ているのも嫌になって、視線は落ちる。やがて足元に落ち着いた視線は、カレが着ているスーツの裾を臨んで、やはりわたしは憎らしく思ったの。


 ああ、わたしからカレを奪うなにもかもが憎らしい。


 だけどそれを主張できない馬鹿なわたしは、気だるそうな掛け声と共に発射していく鋼鉄の塊にシアワセをさらわれて、やがて独りになる。田舎町の駅舎にはこの日も人気がなくて。


 わたしは一人で、独りになって、ここに取り残された。


 切符を買うお金を取っちゃえば良かったのに。

 手足を折ってでも動けなくすれば良かったのに。


 泣いて喚いて叫んで、わたしを独りにしないでってすがれば良かったのに。


 ああ、憎たらしい。

 笑顔でカレを送り出したいい子なわたしが、何より一番憎らしい。


――欲張りな人。


 わたしっていう一人の人間だけじゃ足りないなんて。

 夢なんてものを追いかけたいだなんて。


 ほんと、酷い人。


 わたしの表面だけわかった風で、わたしの中にあるこんな暗い感情は、きっと一生知らないままなんだろう。知って欲しいだなんて思わないし、そのくせ酷いだなんて思ってるわたしが一番酷いけど。


 ぽつりぽつり溢す言葉に力なんてなくて。

 心を伝える筈の文字はいつも何の力もなくって。

 わたしの声はきっと誰の心へ響きはしない。


 でも仕方ないじゃない。

 伝えてしまえばカレを苦しめてしまうんだもの。


 苦しめたい。

――でも苦しめたくない。


 わたしの為に苦しんで欲しい。

――だけどわたしの分も幸せでいて欲しい。


 ああ、いい子なわたしはどこかへ行っちゃってよ。もう。


 わたしはもう独りなの。

 独りだからいい子なわたしなんて、もう必要ないの。


 だっていい子を見せてきたカレは、鋼鉄の塊に連れて行かれてしまったじゃない。


 もう、いい子のわたしを見せたい相手なんていないじゃない。


 振り向いても、そこにカレはいない。

 いい子のわたしに騙されて、呑気に笑っているカレはいない。

 わたしのカレはもう、鋼鉄の塊(ゆめ)にさらわれて行ってしまった。


 だからこれで最後。

 最後なんだから『わるい子』でいさせてよ。


 明日からは『いい子』になるんだから。



 さよなら、わたしの――。



 踏み出した足へ、桃色の花弁が一枚。舞い落ちてきた。

普段スマホで投下しているのですが、今回初めてPCで打ってみました。どんな感じになるのかなと気になり、しかし連載で試す訳にもいかなかったので、知人からお題を頂いて書いてみました。


半小説、半詩。を心掛け、言葉遊びを数箇所挟み、タイトルをコンセプトに書き上げた次第です。


カレへの恋愛感情をダイレクトには一切書いてませんので感情移入は難しいと思いますが、タグに入れつつも「悲恋」がテーマではありません。テーマはあくまでもタイトル。何がどの比喩に当てはまるかをお探し頂けるようにしました。また、隠しテーマとして「季節のはじまり」というものを組み込んでいます。これは最後の花弁ではなく、別れそのものが比喩となっていたり……。



普段解説なんて詳しく書かないのですが、PC慣れを目的としているので時間制限を考慮してみたら、それだけ書ききれなかったと思って頂ければ幸いです。


では、お目汚し失礼しました。

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