二年後の子狼そして翁
はい、二年経ちました。えっ? 修行編に入ったんじゃないのかって? いや~まあそうなんですけどね。それはその内ってことで。
………………えっ? べ、別に震えてなんていませんよ? 思い出したくもないなんて想ってもないデスよ? 本当デスよ? ジュウジツシタ、ヒビ、デシタ、デスヨ。
…………最初は、普通だったんですよ。基礎的な身体テストだったんです、まずは体力がどれくらいあるかで、母さん(白虎様→白虎さん→母さん。……親子揃って強引でした)の周囲を走り続けました。まあ、あの狼の群れに追われて気づいたけど、ボクの体力は結構あるようで、母さんも驚いていたよ。
次に力、攻撃力。これは自分でもビックリしたよ、だって人の体くらいの太さの丸太を、爪で抉る(えぐる)ことができたんだもん。あの時はもうポカーンとフリーズしちゃったね。
次は防御力。母さんの手加減した攻撃を、受けることになった。うん、死ぬかと思ったよ。受けた後体動かなかったもん。まあ評価的にはあまり高くはないそうだ、残念。
体が動かなくなったもんだから、その日のテストは終了で、次の日にまたやることになった。
スピード、速さ。これはヤバかったよ。なんせ母さんの、攻撃を避けまくるってゆうテストだったからね。しかも、攻撃の速度がどんどん上がっていくの。最後のほうなんて、マシンガンよろしくの弾幕だったよ。
テストはこんな感じかな。あ、後魔力測定やったんだっけ。特になにも言われなかったから、忘れてた。
その後の初期修行とか、ここら辺は普通だったよ。うん、普通。……普通ったら普通!!
まあ初期修行、基礎造りの修行だね。半年は身体能力の強化、魔力の操作、ハクとの組手が基本だったよ。
ある程度地力が付いてきてからが本番(地獄)でした……。それまでの修行がまるで、天国に感じました。修行メニューが二倍、いや三倍以上になり、能力を制限された状態で、赤黒い毛並みのいかにも危険ですって感じの熊が住み着いている洞窟に放り込まれたり、化け物がうようよいる森に放逐されたり、そこで蝙蝠みたいな羽や、二本角生やした虎みたいなやつに追いかけまわされたり。その他にもアレやコレや!?
………………神様、ボクはまだ生き残っていますっ。
………………ふぅ。生きてるって、素晴らしい!!
「クロ坊や、なぜ泣きながら天に仰いでいるのじゃ?」
そう声をかけてきたのは、どこぞの山奥に住んでいる仙人みたいな、白髪で長い白髭のTHE・仙人なお爺ちゃん、一応人間。みんな翁って呼んでる、名前は不明。……もしかして変な名前なのかな?
「……クロ坊や、なにやら不躾なことを考えておらんか? ん?」
「えっ!? か、考えてなんかないよっ。おはよう翁。ってゆうかクロ坊って呼ばないでっていつも言ってるじゃん」
翁って、いかにも好好爺って感じだけど、メチャクチャ強いんだよねぇ~。あの羽付き角虎を簡単に倒しちゃうんだもん。怒らせたら……、ブルリッ!?
き、気をつけなくちゃ。あっそれと、何故クロ坊と呼ばれているのか、……それはボクの毛色が黒いからです! いや~、最初は白っぽい灰色だったんだんだけど、月日が経つ毎に黒くなっていったんだよね。
「うむ、おはよう」
「スルーされた……。ハァ、もういいよ。ところで翁こそ、こんなところでなにしてるの?」
「お主を探しておったんじゃよ。ハクビとスー(・・)が、お主が見当たらないとあちこち探しておったからのう。……にしてもクロ坊、お主だいぶ気配を隠すのが上手くなったのう。見つけるのに少し、時間がかかったしのう」
「それは日々の弛まぬ努力の成果です!」
「フォッフォッフォ。日々、成長しとるようじゃのう。じゃが、慢心してはいかんぞ?」
「はいっ」
「うむ。それでは早くハクビやスー(・・)の下に行ってやりなさい」
「は~い。また後でね、翁」
そう言ってシロウは消える様に森の中を駆けていった。
「……幼子の成長とは速い物じゃのう……。たった二年で、この森の強者の域に達しようとしとるとは……。白虎殿の予想通り、そろそろ試練を与えるべきやもしれぬな……」
そう、寂しそうな翁の呟きが、森のさざめきに消えていった。
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