帰還勇者の日常記(連載未定)
こういう話が書きたかった。
案外ほのぼの行けるかもしれない。
骨組み皆無設定だけはある
「おおお!!『聖なる雷よ。我の力となりて罪を裁かん!!聖雷刃波零式』」
混合神級魔法の『ライトニングサンダー』の改良版の詠唱を唱える。聖剣が光を増し、青白い雷が聖剣の周りを回る。
目の前の男、魔王に相対する俺は防具は破れ身体の各部位から血を流しまさに満身創痍だ。
それは相手の魔王も同じだが、その顔は喜色に満ちている。恐らくだが俺も同じようなかおをしているだろう。
勇者と魔王、相容れない存在だからこそ、同じ様な存在だからこそ奴の気持ちが分かるのかもしれない。
「面白い!!面白いぞ勇者ぁ!!『破滅の願いよ。我の力となり全てを焼き払う地獄の槍となれ。ヘルフレイムランス』!!
俺の聖剣の縦一閃と共に魔法が解放される。斬撃と共に俺の奥の手の一つが魔王を喰らわんと襲い掛かる。
魔王も同様に今まで使ってこなかった闇と炎の混合魔術を発現させる。
魔王の背後に巨大な魔方陣が現れ、禍々しい黒い炎の槍が出現する。
光輝く稲妻と禍々しい炎が互いに激突して互いを食い散らかす。
その大気を震わせる大魔術の衝突を無視して俺は魔法を使わずに魔王の背後に回る。よし、まだあいつは気付いていない。
「『発現せよ聖剣!セイントスラッシュ!!』」
「なに!?」
聖剣の性能を最高まで引き出した証拠に髪も金色に染まり、眼も紅く染まる。
完全に虚を着かれても流石は魔王。咄嗟に魔剣で応戦しようとして──────その魔剣を聖剣が叩ききった。
「なっ!!」
「これでしめーだぁぁぁぁぁ!!」
俺の聖剣はそのまま魔王の体を両断した。
「まさか聖剣の力を最終段階まで引き出しているとはな…」
わしでさえ魔剣の力を最終段階まで引き出してはいなかったというのに、と少し不満ぎみに続けた。
「俺もぶっつけ本番だったよ。俺だって沙希さんがここにきて捕まらなかったら解放できなかったと思うし。まぁなんかコツは掴んだ感じするけど」
「くく…姫を助けるために力の解放か。何ともお伽噺だな。また来世でもやりあいたいものだ」
「姫ってか家族かな。こっちじゃ唯一の同郷だしな。それにまたやるって俺はもう御免だよ」
復活されても困るので俺は躊躇いなく魔王の首を刎ねた。
その時の顔はどこか満ち足りたような顔をしていた。
こうして俺はこの地球からは異世界と言われる世界を救った勇者になった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「あーなんだ。平和だなー」
公園のベンチで寝転ぶ夕方。あっちでは7年間も過ごしたがこちらの世界に帰還してみるとなんのことはない、たった2週間の出来事だったらしい。
7年で普通の青年になった俺も今や普通に高校入学前の中学生?高校生?に逆戻りだ。
それに向こうで唯一の同郷で家族みたいなもんだった沙希さんにもこっちでは会えていない。
ここまで来るとなんだかこの公園で寝てた俺のただの夢のように感じるけど、それはない。
俺の左手には適合者の意思によって形を変える俺の聖剣が指輪となって中指にはまっている。
体を起こして家に帰ることにする。俺達の家族は現在2人しかいない。
俺が中学校2年生のときに訪れた旅行先の旅館の火災で母も父も亡くなった。今俺の家族は妹だけだ。
「ただいまー」
「あ、お兄ちゃんお帰りー」
この妹には迷惑をかけた。たった二週間でもこの妹には心底心配をさせたらしい。帰ってきたときに泣かれてしまった。
「お兄ちゃんそろそろ今月厳しいからちょっと質素になっちゃうけどいい?」
「ああ。雪の作る飯はいつも美味いからな」
そう言って雪の頭を撫でてやる。雪は気持ちよさそうにしながらも不思議そうな顔をしている。
「どうした?」
「いや、お兄ちゃんいなくなってた二週間で変わったなと思って」
「そうか?」
「お父さんとお母さんが死んでからずっと塞ぎ込んでたから。今はしっかり吹っ切れてる感じがする」
「ま、俺も色々あったんだよ」
「正直妹の私でも結構怖かったんだから」
「確かに今思い返すと他人には怖かったかもしれないな」
苦笑いをしながら質素なご飯を食べる。今日の夕ご飯はご飯とみそ汁だけ。しかしこっちに帰ってきて初日に食べたときは不覚にも泣いてしまった。
あの時はなんだか変な空気になってしまったっけ。
まあ7年ぶりに会って、家族の大切さが分かったんだよな。感謝しないと。
「ん?」
「どうしたの?お兄ちゃん」
「いや、何かドアの前に気配が…」
「気配ってお兄ちゃん漫画じゃないんだから」
そう言って雪が苦笑したところで『ピンポーン』とドアのベルが鳴った。
「え、嘘…」
雪が絶句しているが当たり前と言えば当たり前なのだ。7年も熟睡してると死ぬような環境にいれば大体気配とかは読めるようになってくる。
ただ俺も昔の(7年先の)体じゃないから気配察知には少し自信がなかったが。
「俺が出てくるよ」
「あ、うん。新聞の勧誘とかだったら断ってね」
「分かってるよ」
若干苦笑しつつも玄関に向かう。唯一の肉親が二週間も音信不通だったこともあってか雪は俺に対してかなり心配性だ。
それは嬉しいことだが、お兄ちゃんはその辺の人には負けないんだぞ。聖剣があるからな。
そんなこと言っても信じて貰えるわけもないので溜め息をはく。
「はーい」
玄関のドアを開ける。春とはいえまだ4月も上旬。夜は冷える。そんな風がドアを開けた瞬間に俺のみを包む。そして─────俺はフリーズした。目の前には共に異世界で魔王を討伐した仲間、いや家族の沙希さんが無表情で立っていた。勿論お若いままで。
沙希さん────本名烏野沙希は確か俺のひとつ上だったはずだから現在高校二年生だ。
少し高めの170センチという長身でスリムなモデル体型。ストレートの黒髪を腰まで伸ばしている。
これでも十分大人っぽくあどけなさも残り美少女だが、これが7年後には胸も膨らんで人の理性を消し飛ばすほどの美人に成長している。
「さ、沙希さん…」
何とか脳を再起動させて相手の名前を絞り出す。相変わらず愛想のない無表情だ。7年で少し表情に出るように成ったのだが、戻ってしまったのだろうか。
「久し振り、優介くん」
そして相変わらずな綺麗な声でまたフリーズしてしまった。
「おそーい!!どうしたの〜?」
この最悪なタイミングで雪が玄関まで来てしまった。
沙希さんをどう説明しようかと沙希さんの方を見ると何故かとても不機嫌な顔をしていた。
「その子は?」
さっきと声は同じに聞こえるのに不機嫌さを隠そうともしない。それに冷や汗が頬をつたった気がした。
「あ!!お兄ちゃん誰この綺麗な人!!」
「あぁえっと…烏野沙希さんだ」
「この子が優介くんの言ってた妹さんか。雪さんだったかしら?宜しくね」
何故かその声に既に不機嫌さは無かった。いったい何が沙希さんの期限を損ねたか首を傾げずにはいられない。
「あ、どうも!!それで────」それに対して妹はこちらをチラチラと見ながら、凄い嫌な予感がする。
「お兄ちゃんとはどういう関係ですか?」
お約束の爆弾を落とした。この質問は非常に不味い。何せ曖昧なのだ、俺たちの関係は。
「私と優介くんの関係か…。なんとも複雑な質問ね。一番近いのは家族だと思うけれど、それも違うわ」
沙希さんの解答は俺の心を読んだのかと思うほど俺とピッタリだった。
「ごめんなさい。少し優介くんを貸してくれるかしら?」
「えっあっはい。どうぞ」
そんなやり取りもあって俺と沙希さんは俺が召喚された公園にやって来た。
「どうして俺の家が?」
「魔力…。優介くんはこっちに来てから使ってないでしょ?探知魔法を使えば直ぐに分かる。溢れてるから」
確かにこっちに来てからは魔法を使っていない。と言うか使う場面がない。
「俺は沙希さんと違って器用な魔力制御できねーからな」
「なら苦労するかも。私も結構苦労したから。なんと言うか感覚に違和感がある感じ。それこそ7年前みたいね」
「マジかよ…」
目の前の沙希さんは完全な後衛だった。そりゃ向こうでも接近戦を全くやらない訳じゃないから一般人よりかは遥かに強いが。
沙希さんは魔法に関しては本当に天才だった。聞くところによると、相当頭の出来が良いらしい。羨ましい限りだ。
「それで優介くん」
いきなり沙希さんの雰囲気が今までと変わって真剣になる。傍目からは殆ど表情が変わっていないみたいだが。
「どうしたら胸、戻ると思う?」
ずっこけた。地味に気にしていたみたいだ。俺としては理性を保つのが簡単になったので寂しい気はするがよかったと思っている。それにそのままでも十分凶器だし。
連載未定




