第2話:紫陽花
それから、会いに行く回数が徐々に減っていった。
次逢ったら壊れてしまうかもしれない
それが怖かったんだ
壊れたら、僕にはどうしていいかわからなかった
わからないから、会いに行かなくなった
それが、今となっては大きな後悔で、あれは間違いなく僕の弱さだった
最後まで泣かしてばかりだった?
あの半年間、何を君にしてあげられた?
見舞いに行かなくなって、ただ味気無い毎日を憂鬱に過ごしていた僕に、最悪の知らせが、届いた…
「央が病院の屋上から飛び降りて自殺した」
あの日は憂鬱なぐらいのうっとうしい土砂降りだった。
走って走って走って走って
今までにないくらい走った。
家から病院まで3km
ひたすら走った。
ペース配分なんて余裕はなく、全力で走った。
傘なんてさしてない
ずぶ濡れになっても気にしなかった。
ただ、早く。
死んだのだ、と分かるまでやたら時間がかかった。
病院について央を見たときは、既に息を引き取った後で、痛々しい傷はあれど、綺麗にされて眠るように横たわっていた。
なぜ自殺に至ったかはわからない。
遺書も何もなかったのだ。事故ではないようだった。屋上のフェンスは壊れてなかったし、乗り越えていかない限りは落ちたりはしないからだ。
悔やんでも悔やみきれなかった。あの日だけでも会いに行けばよかった。
誰か止める人がいたなら…叶うわけもない。でも三年間、ずっと悔やみ続けてきた。
忘れたフリは、辛かった。それでも僕には明日が来るから、泣き叫び続けるわけにはいかなかった。
生きるために、何事もなかったように生活してきた。
大学に入って、本当にためになってるのか分からない講習を聞いて、ただ
毎日を過ごしていた。
悲しみの傷は癒えたわけではない。
傷の深さは、自分にしかわからない。
周りはたぶん、もう立ち直ったのだと思っているのだろう。
そんなわけないのに
交友関係は浅いものばかりだ。月日も含めてだが、ここ三年、誰かと深く関わることを恐れている。
また誰かを失う気がして