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原罪の破壊者 -魔弾の射手-  作者: 四童子 薫
永眠に誘う者
31/36

忠義

『二週間前にインベリス協会軍用機(乗員六人)が消息を絶った問題で、海軍などは機体がレーダーから消えた地点の半径約百キロメートルに捜索範囲を拡大したが発見には至っていない。操縦士が明確な意図を抱き自動操縦装置を操作、高度や速度を変えた可能性を指摘した』


 いつも通り居間に向かうとそんなニュースが流れていた。

 テーブルに目を向けると朝食の準備が進められ、一部料理が運ばれ始めている。

 ……一体誰が?

 山盛りにされたサラダが中央に置かれ、マモンが棚から取り出した食器をアリスが並べている。

 イリスは既にちょこんと座り、「マテ」と命じられた犬のようにじっとしている。

 ティアはまだ寝ているとしても、フローラとエルの姿が見えない。

 確かに料理を教えたことはあるが、フローラの奴ここまで上達したのか?

 すると、フローラがやってきた。人数分のオムレツとハムが盛られた皿をトレンチに乗せている。

「あ、フローラ」

「おはようございます」

「その朝食はお前が作ったのか」

「いえ、不本意ながら私は補佐しか……。厨房にはエル様が立っておりますよ」

 あいつが? 意外だな。

 さっそく僕は厨房へ覗きに行った。

 エプロン姿のエルが確かに料理をしている。

 真っ赤なスープの入った鍋があり、彼女はそこから小皿にひとすくい。味見をしているようだ。

「人は見かけによらないって本当なんだな」

「い、居たの?! というかどういう意味よそれ」

「少し驚いた。だけどどういう風の吹き回しだ?」

 真っ赤な鍋から刺激臭はしない。ミネストローネか。

 鍋を見ていると彼女は改まって語り始めた。

「ほ、ほら。私、使徒の力も失って、なんの役にも立てないじゃない? だから……」

 そうか……こいつ。

「これからも頼むよ」

「え?」

「この通り、片腕じゃ厳しいからな」

「う、うん! 任せなさいっ」


 料理が全て運び終わる頃、一人遅れてティアがやってきた。

「ふぁ~ぃ……。いいにおい……ぬぁ! なに?! 今日ってお祭りかなんか?!」

「さて、飯にするか」

「……待ちくたびれた」

 お前はくたびれるな。


 長方形の大きめなテーブルに全員座ると、フローラが台車を引いて飲み物を運んできた。

「私はコーヒー。ブラックね」

「どうぞ、エル様」


「……紅茶」

「あぁ、僕も紅茶で頼む」

「はい、どうぞ」


「あたしオレンジジュース」

「妾もじゅーしゅ!」

「はいはい、お待ちくださいね」


 フローラも席に着く。食事を必要としないマモンはアリスの横に立っている。

「いただきまーす」「いただきます」「頂きます」「朝ごはんじゃー」「……ます」

 ゴキュ……ゴキュ……ゴキュ。

「プハァ! もう一杯!」

 ティアにジュースを注ぐマモン。

 それでいいのか悪魔。それじゃただの執事だろ。

「お言葉に甘えて、今日はエルの料理を頂かせてもらうよ」

「口に合うか、わからないけど……」

 テーブルに並べられた料理は、バイキング方式のサラダに、同じく積まれたロールパン。

 オムレツと焼かれたハムに、ミネストローネのスープがつく。

 僕はオムレツを一口食べた。

「ん……すごいな。スポンジのようにふわふわで、焦げ目もないし綺麗だ」

「そ、そう?」

「待ってください。紅茶は私がいれたんです、飲んでみてください!」

「あぁ……」

 僕は恐る恐る一口飲んだ。

「お、美味い。香りも引き立っている」

 カップは持ち手部分まで暖かい。あらかじめカップ自体を暖めてあるんだ。

 フローラは誇らしげな顔をしている。

「料理は出来ませんが、お茶やコーヒーなら協会でよくいれていたので」


 ほのぼのと朝食をとりながら、僕は本題に入った。

「マモン、頼みがある。必ず見つけ出せとまでは言わない。ルシファーの居所を突き止めてくれないか? 奴の魔力を感知しやすいのは同族であるお前だけだ」

「仰せとあらば」

 朝食を終えた後、マモンはカラスに擬態し飛び立った。

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