サヨナラだけが別れじゃない
ここは、秋田のとある田舎町。私は小夜子、28歳。旦那は、裕二、31歳。旦那の転勤で、東京から、この田舎町に、来て一年目だ。最初は、物珍しかったので、出歩いていたが、言葉も、理解できなかったこともあったりして、嫌になってきていた。私は、東京のネオンが、懐かしくて、たびたび、東京に、帰っていた。
私は、もう、この田舎での生活には、嫌気がさしていたので、離婚を切り出したこともあったが、旦那が、別れたくないと、すがってきたので、考え直した。旦那の上司も、心配していたようだった。
正直、転勤族の妻にも、疲れ果てていた。どこに、とばされるかは、本当に分からないので、ストレスが、溜まっていた。
夫の裕二とも、最近は、うまくいかなくなっていた。仕事が、毎日遅く、疲れて帰って、寝るだけだったので、話も、できなかった。当然、子どもを作る気にも、なれなかった。
東京に帰って、もう、戻ってこないことも、考えたが、さすがにそれは、裕二が、かわいそうな気がした。小夜子は、東京に、戻って、昔の様に、バリバリ、仕事がしたかったのだ。
裕二とは、もう、結婚して、間もなく、レスになっていた。寝室も、別々に、していた。外では、仲の良い、夫婦のふりをしているだけだった。
この田舎町での生活は、小夜子にとって、退屈以外の何物でもなかった。
ある時、小夜子は、あまりの退屈さに、マッチングアプリを始めたのだ。それで、何人かに、会い始めた。
最初にあったのが、徹といって35歳、地元の銀行員だった。その人もまた、転勤族だった。話しが、とても、面白い人だった。カフェで、話に花がさいた。人目もあったが、気にせず、何回か、会った。徹とは、ずっと、続くかと思っていたが、地元の銀行だったので、人目もあるということになり、お別れした。
次に、あったのが、和也といって42歳、保険会社の代理店をしている人で、自由がきくひとだった。その彼とも、カフェで、お茶をしながら、地元のことを、いろいろ、教えてもらっていた。とても、優しい性格で、面倒見のいい人だった。その人とは、郊外まで、ドライブをして、ランチを楽しんだりした。
三番目にあった人は、洋といって、60歳の会社の社長さんだった。とにかく、たくさん、プレゼントをもらって、ドライブデートを、楽しんでいた。タイプでは、なかったが、支払いは、すべてしてくれたので、甘えていた。
こうして、小夜子は、暇つぶしには、事欠かなくなっていたが、夫婦仲は、もう、最悪になっていた。裕二も、小夜子も、結婚していることに、疑問は、持っていても、取り立てて、2人の関係を、壊すほどのことも、ないと思っていた。今のところは、子どももいないし、お互い、自由に、過ごせば、いいと思っていた。
2番目に会った、和也は、地元の人間だったが、小夜子の洗練された魅力に、本気になっていった。小夜子も、年は、少し離れてるけど、優しい和也に、惹かれていった。和也は、バツイチ独身だった。頻繁に、ドライブデートを重ねて、楽しんでいた。行く先は、あまり人目につかない、遠出が多かった。
2人共、本気に、なりかけていた。小夜子は、田舎での生活は、イヤだったが、裕二と別れて、和也と、再婚してもいいかな、と、思い始めていた。和也も、小夜子となら、もう1度、結婚して、やっていけるかもしれないと、思っていた。
2人の気持ちは、まだ、確定ではなかったが、徐々に、気持ちが固まりつつあった。
そんな折、裕二が、小夜子のために、東京に転勤願いを、出していたのが、通ったのだ。東京に、転勤が決まって、裕二は、ホットしていた。これで、もしかしたら、小夜子と、また、元のように、仲良くやっていけるのかもしれない、と。
家に戻り、裕二は、小夜子に、東京へ転勤が決まったことを、話した。もちろん、大喜びする小夜子を、想像していたが、小夜子は、うかない顔をしていた。
裕二は、「東京転勤、うれしくないのか?」と、小夜子に聞いた。小夜子は、複雑な心境のまま、「嬉しいわよ。」と、答えた。小夜子は、まさか、東京転勤が、決まるとは、思っていなかった。裕二が、自分のために、転勤願いを出していたことを、考えていた。
次の日、和也に会って、転勤が決まったことを、話した。和也は、小夜子に、「どうするの?」と、聞いた。小夜子は、即答せずに、「少し、考えたい。」と、言った。和也は、「わかった。」と、言った。
家に戻り、荷造りをしながら、小夜子は、考えた。私は、東京生まれの東京育ち、本当に、この田舎町で、暮らしていけるのだろうか、と。確かに、和也は、優しくて、いい人だけど、私は、ここでは、暮らせない。と、思った。
愛のない生活でも、やはり、住む環境が、あまりにも、違いすぎるよりは、いいのかもしれないと、思っていた。とても、悲しい気持ちになっていた。このまま、この田舎町に、残っても、自分は、ダメになる気がした。
残りの人生、愛のない人生を、私は、選んだ。それで、後悔は、ない。




