8話
マオさんと別れたボクは次の段取りについて考えていた。
「月の次は太陽。やることは……」
次の最終目標は猪の紋章を入手すること。
死獣・堕天の猪豚に太陽の鉱石、オルソレイユ鉱石とスネークアップルを奉納すると、力を認めてもらえる。
「まずはオルソレイユ鉱石の採取からだな」
南の王国にある鳥エリアの鉱山地帯。再び足を踏み入れた時、そこには異様なまでの人だかりができていた。
「なっ、何だこれ……」
「あぁ、これかい?なんか今、アイドルの亀梨レオが鉱石採取に来てるみたいだよ。ったく、いい迷惑だよな」
近くにいた人が話しかけてきた。ボクは適当に頷き、自分の目的地へと向かう。
「さすがにここに人はいないな」
フランス語で太陽の金。それがオルソレイユ鉱石。月の銀で作られたムンリルのハンマーでなければ採れない。ちなみにだが、ここに来る前にムンリルのハンマー(銀狼)は作っておいた。
さらにここの鉱山は太陽の金の名が表す通り、銀狼のマントによる隠遁効果がなくなり、ゴーレムが襲いかかってくる。
普通の人なら普通に倒せばいいだけなのだが、鈍臭いボクには無理。これを防ぐ方法は無属性魔法のグラビティを使うこと。
正式リリース直後だからここには誰もいない……と思っていたら、奥の方で戦闘の音がする。
「やっぱり最低品質のムンリルハンマーだと最低品質のものしか取れないな……そこの君!見ない顔だね……」
ボクの目の前に現れたのは亀梨レオ。
実物で見る彼はテレビで見るよりも魅力的に見える。
「すみません。邪魔するつもりはありませんでした」
「いや、俺も人が来ると思っていなかったからな……ところで君のその格好……実に美しいね」
「えっ?」
ボクの格好は初期装備の服と銀狼のマントのみ。
「その姿……最短距離でここまで来た者だけにしかできないその格好……実に美しい!」
あっ、この人こういう人なんだ……
「君は一体何者だい?少なくとも大手クランに属してはいないはずだ」
「あっ、いや、えーと……」
「無理に答えなくてもいいよ。ソロにはソロの秘密があるもんだ」
「そ、そうですね」
「それじゃあ俺はこの辺で失礼するよ」
ゴーレムを倒し、コアの採取とオルソレイユ鉱石の採取が終わったレオさんはそのまま帰っていった。
最初変な人かなって思ったけど、話してみると意外と丁寧な人だし、なんかアイドルのようなイケイケ感も感じられなかったな。
「ってボクも急がないと。少なくともレオさんよりは出遅れてるんだ」
グラビティで動けなくなっているオルソレイユゴーレムを倒すのは簡単だった。
ボクは最高品質のコアと最高品質のオルソレイユ鉱石を採取し、鉱山を後にした。
「これでオルソレイユ鉱石の準備はできたぞ。次はスネークアップルだ……の前にやることがある」
スネークアップルは北の王国にある蛇エリアにいる。そこは寒い場所でもあるので、防寒具が必要。
「いよいよ初期装備の服から変わる時がきたぞ!」
次に向かうのは東の王国エリア。このエリアだけ4大死獣が2匹いるという特殊なエリアになる。太陽の金猿と無敵の青龍の2匹と陽炎の夢羊。
ボクがこれから向かうのは陽炎の夢羊がいる羊エリア。
始まりの街に戻り、そこから東に向かい、中央街道を通り、北に足を進めると、羊エリアが見えてきた。
「これから狙う獲物はムーントン。月の羊豚だ……えっ、羊エリアなのに豚なの?」
月の羊豚の毛皮。これにオルソレイユ鉱石を組み合わせて防具を作ると、太陽と月の毛皮の鎧ができあがる。
暖かい太陽の光を月の毛皮が優しく包み込み、暑さにも寒さにも耐えられる万能の一品。もちろん防御力も一級品。
「スネークアップルは強いって言うから、万全の体勢で挑むぞ」
ムーントンは豚の顔をした羊。グラビティで動けなくしたところをムンリルのハンマーでぶっ叩く。月の羊豚を名乗るだけあって、月の銀狼のハンマーとの相性は良く、一撃で倒すことができた。
「あとはこれを解体して、毛皮を採取」
錬金ナイフを使い、皮に沿って丁寧に剥がしていく。でもその手つきはぎこちなく、ところどころでナイフが引っかかる。
「そろそろナイフもグレードアップしないとな……」
『ムーントンの毛皮、80%の高品質』
「やっぱり最高品質は無理だったか……こればかりは仕方ないな」
ボクは東の王国の鍛冶屋へと向かい始めた。
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私は何者だろう。
目には見えない鏡の表情。
沈黙の音は何を聞いているのか。
虚空を触る手は何を感じとるのか。
記憶の中にある香りは何を嗅いでいるのか。
無意味の味はとても味わいがある。
では心が表すものは何だろう。
そうか、わかった。私はドーナツだ。




