15話
これからくる黒鬼襲来イベント。
近距離攻撃が有利なイベントだから、きっとマオさんはボクに連絡をよこすだろう。いや、たとえ連絡がこないとしてもポイント稼ぎのために準備しておくものがある。
それはゴーレムのコア。このアイテムから作るエナジーチャージは一撃の火力をアップさせるアイテム。
黒鬼は殲滅力重視のイベントでもあるから、火力だけじゃなく手数の多さも重要になってくる。
マオさんにブルームーンハニーとエナジーチャージを渡すことができたら、マオさんはランキングの上位になることは確実だろう。
ランキング上位になれるマオさんがポイントを稼いでくれるなら、ボクはそれ以上イベントに参加する必要はない。
イベントより攻略優先で立ち回りをした方が効率的だ。と言ってもこれはきっとボクだけ。
鬼襲来イベントの報酬にはステータスアップがある。これがメイン報酬と言ってもいいくらい。
戦闘が苦手なボクにとってはこのステータスアップのバフは無意味に等しい報酬だ。
だから最低限の報酬を得ることができたら、それ以上頑張る必要がない。先の先を見据えた攻略を考えた行動をするべきなんだ。
「でもまず先にマイファームを覚醒させて鉱山や畑のパワーアップさせて鬼イベントの準備をしないといけないな」
生産3種の神器をパワーアップさせてから、本格的にマイファーム育成が始まる。
今まで採取したことのある鉱石はマイファームで取れるようになるし、薬草などの錬金術に必要な素材もマイファームで採取できるようになる。
マイファーム育成はそれだけじゃなく、育成が進めば、町になり、城になり、どんどん大きくなっていく。
といっても、それははるか先の目標である。青鬼襲来イベントでランキング上位にならないと築城なんて夢のまた夢。
でも、ちょっとだけ期待し始めた自分がいる。トップ生産者のレオさんに認められて、ヨム様にも認知されている。
「よし、頑張るぞ」
マイファームから見える鉱山は富士山のようにフィボナッチの黄金螺旋を描く綺麗な形をした山。
ボクは鉱山に向かって歩いていき、入り口の前にたどり着いた。
そこにはいくつもの扉があり、様々な名前が書いてある。
鉄鉱石、銀鉱石、ムンリル鉱石。
そして離れた場所に黄金色に光り輝く扉が目に入った。
「なんだろ、あれ」
光り輝く扉の前に立つと、ようやく全貌が見えてきた。
「黄金の間……見た目どおりそのまんまだな」
扉に手をかけると、開いて中に入ることができる。
「これって入ってもいいんだよな。ベータ版の時にこんな情報はなかったはずだけど……」
ボクは恐る恐る中に入ると、黄金のサクラの花びらが舞い散る空間だった。そして、奥に誰かがいるのが見える。
「富士山とサクラ……となれば、そこにいるのはコノハナサクヤヒメ」
ドキドキしながら奥に行くとそこには黄金色に光り輝く人が見えてきた。
いや、人というのは失礼がある。今、ボクの目の前には神様がいる。
バナナの……バナナの神様!!!
「よくぞ参ったな、神品質を作りし者よ。我が名はコノハナバナナヒメ。現世を司る神様じゃ。神品質を作ることができるお主に頼みがある」
コノハナバナナヒメ……たしかコノハナサクヤヒメのような寿命が短くなるという神話は世界各地にあると聞いたことがあるな。
そのような神話はバナナ型神話と呼ばれていると。
このゲームはAIのビッグデータを元に作っているから、きっと混じってしまったんだろう。
でもコノハナバナナヒメはさすがにないだろ……
「って、おい。そこのお前、私の話を聞いているのか。まぁ、私の美貌に驚くのも無理はない。なんたって人目に出るのは初めてだからな。って聞いてなくても、話を進めるぞ」
「あっ、すみません」
目の前にいるのは神様だが、バナナの神様だと思うと威厳というものが感じられないんだな。
「まぁ、よい。話を元に戻すぞ。お主に頼みがあるのじゃ。現世を救うためには黄泉の国の桃太郎を倒す必要がある。そのためには、」
「えっ!」
「驚くのも無理はない。ひとまず話を続けるぞ……って、どこまで話したかな?」
なんだろ、このバナナの神様。とりあえずリアクションはしないでおいた方が話がスムーズにいきそうだな。
「あっ、そうだそうだ。お主には召喚の指輪を作ってもらいたい。ここは現世の国と黄泉の国の狭間にある空間。私はここに封印されて現世に戻ることができないのだか、召喚の指輪があれば一時的だが戻ることができる。頼んだぞ」
「は、はい……」
色々考えていた攻略が全て台無しになってしまったな。
今のところ神品質を作れたのはおそらくボクだけ。バナナヒメも人目に出るのは初めてって言ってたし、多分そうだろう。
そうなると攻略の最前線は召喚の指輪を作ることになる。
「それでは、さらばだ」
一瞬の暗転。気付くとボクは鉱山の前に立っていて、黄金の間の扉は消え去っていた。
「何はともあれ、まずはゴーレムのコアを採取して、鬼イベントの準備をするぞ」
ボクはそのままムンリル鉱石の扉を開けて、そのまま中にいるムンリルゴーレムを乱獲し、コアの採取をし続けた。




