12話
レオさんとの待ち合わせ場所は南の王国の猪エリア。今日はここで桜庭アンナさんと配信用の動画撮影するとのこと。
「そろそろ来てもいい時間だと思うんだけど……あっ、来た来た」
先に姿を現したのは亀梨レオさん。この間会った時より顔の影が濃くなっていた。
「ハヤトくん、お待たせ。いや~、申し訳ないんだけど、今日は特にアンナの機嫌が悪くてね。さすがに露骨な態度を取るとは思わないけどさ。ってハヤトくんが手に持ってるのはプレゼントかい?」
「はい。変な武器とかをあげるより、実用的なモノがいいかなって思ったので、MPポーションを持ってきました」
ボクが作った自慢の一品だ。絶対喜ばれる自信はあるぞ。
「みんな同じような考えで、ポーションばかりプレゼントするから、もしかしたら受け取らないかも。その時はゴメンね」
え~、そんな~
その後、少し話をしているとレオさんはスマホを取り出した。
「おっと、アンナから連絡来た。もうすぐ来るみたいだ」
いよいよ、憧れの桜庭アンナさんに会える。でも機嫌悪いって言ってたんだよなぁ……
少しの不安を抱きつつ、ボクはアンナさんの到着を今か今かとドキドキしながら待ってると、ついにその時はやってきた。
「レオ、お待たせ。そちらの方が紹介したいって言ってた方?」
「あぁ、そうだよ」
「み、三上ハヤトと申します」
「よろしくね。ニコッ」
アンナさんの素敵な微笑み。ボクだけに見せてくれた最高の笑顔。ボクは天にも登る気持ちになった……のはわずかな時間だった。
「で、申し訳ないんだけど、この後の撮影に集中したいから、もうこの辺でいいよね。でさ、レオにちょっと相談したいことあるんだけど、ちょっといい?」
「おう、わかった。ってことでハヤトくん、本当に申し訳ないんだが、俺にできることはここまでのようだ」
「あっ、全然大丈夫です。本日は大切なお時間いただきありがとうございました」
思ってたより会えた時間は短かったし、笑顔からの真顔になる瞬間が正直ちょっと怖かった。
プレゼントは一応受け取ってもらえたけど、なんか気持ちが冷めちゃったな。
こうなったら気持ちを切り替えよう。これからマオさん推しでいこう。
ボクはマイファームに戻り、次の作業に取り掛かることにした。
「まずは錬金ナイフのパワーアップをしようかな」
錬金ナイフは猿エリアのモンスターの爪とオルソレイユ鉱石をアイテム合成すると作れる。
「まずはゴールドモンキーの爪を採取して、次はプラチナモンキー。最後にサンゴールドモンキーの爪を集めると、最上位の錬金ナイフの完成だ」
理想を言えば、マオさんに協力してもらいサンゴールドモンキーの爪をゲットして、一気に最上位クラスにレベルアップしたいんだけどな。
「よし、猿エリアにレッツゴーだ……と言いたいところだが、ボク一人で勝てるとは到底思えない」
レオさんやアンナさんと一緒に行くことも想定してたけど、そうそう上手くはいかないもんだよな。
「今すぐに必要ってわけじゃないし、マーケットでゴールドモンキーの爪だけ買って間に合わせておくとするか」
ボクはマーケットに売られている普通品質のゴールドモンキーの爪を購入し、オルソレイユ鉱石とアイテム合成し、錬金ナイフ(金)を作り上げた。
「次にパワーアップするのは魔法のジョウロだな」
生産3種の神器。鍛冶ハンマー、錬金ナイフ、魔法のジョウロ。
魔法のジョウロをパワーアップさせれば、純生産職でも水魔法は使えるようになる。
もちろんマイファームでも使用するアイテム。パワーアップすれば、作物のグレードもアップするし、品質もアップする。
「目標は龍エリアにある龍泉水の入手だ」
ボクはマイファームから現世の世界に移動しようとした時だった。
レオさんからメッセージが入った。
『アンナが先程のことを謝りたいと言ってるんだが、もう一度会うことは可能だろうか?』
アンナさんが謝りたい?
でもボクはもうアンナさんへの気持ちはなくなったし、これから龍エリアに行こうと思っていたところだ。
『申し訳ありませんが、ボクも忙しいので、会うのは難しいです。謝罪の気持ちがあるということだけで十分です』
ボクはレオさんに返信し、龍エリアへと向かい始めた。
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「ハヤトくんは会いたくないようだ。アンナ、諦めろ。あんな態度をとった君が全面的に悪いんだ」
「だって、神品質のポーションをプレゼントに持ってきてるなんて思うわけないじゃん。いつものようにコネを使って無理矢理レオに紹介してもらったって思うじゃん」
「それは君が勝手に勘違いしただけだろ。俺はもうこの件でハヤトくんに連絡するつもりはないからな」
「……わかったわよ」




