3/15
第2話 最弱ステータスの少年
俺――シエル=アークライトは、辺境の小さな村に生まれた。
静かな草原と、どこまでも続く青空。
そんな平和な場所で、幼いころから木剣を握っていた。
十歳のとき、村の神殿でステータス測定を受ける。
水晶盤に手を置き、祈るように息を止める。
――結果、すべて「E」。
「シエル、悪いけど……今年の狩りは無理そうだな。」
村の男たちは苦笑し、俺の肩を軽く叩いた。
彼らに悪意はない。ただ、現実を突きつけられただけ。
努力が数字に出ない世界。
なら、数字じゃない形で証明するしかない。
翌日から、俺は丘で素振りを始めた。
百回、千回、万回。
手の皮が剥け、血が滲んでも、やめなかった。
前世で一度だけ感じた“動けた瞬間”の感覚を、もう一度掴みたかった。
「……また倒れてる。」
振り返ると、幼馴染のミリアが薬草を抱えて立っていた。
柔らかな金髪と、真っすぐな瞳。治癒魔法を学んでいる彼女は、いつも心配してくれる。
「うん。でも、昨日より少しだけ長く立てた。」
「努力してる人って、きれいだよ。」
その言葉が、胸の奥に残った。
笑われても、成果がなくても。
この言葉だけで、剣を振る理由ができた。




