第1話 転生受付はAIでした
――光も、音もない。
ただ、無数のデータの粒のようなものが、ゆっくりと流れていた。
自分が誰だったのか、その記憶すら曖昧なまま、意識だけが浮かんでいる。
『……転生プロセスを開始します。』
頭の中に、無機質な声が響いた。金属のように冷たい響き。
『転生管理システム《オラクルβ》です。神は現在、休止中です。』
「……は?」
神が休止中? どういうことだ。
『魂データ、損傷軽微。前世での死亡原因:崩落による圧死。』
「ああ……あの火災か。」
思い出す。大学の研究棟の火事。逃げ遅れた少女を助けようとして、俺は瓦礫の下で息を引き取った。
最後の瞬間、確かに少女の笑顔を見た。
あれが、俺の人生で初めて“誰かを救えた瞬間”だった。
『転生先世界は「テストワールド05」。神界における試験運用中の循環世界です。』
「試験運用……なんか嫌な響きだな。」
『神の不在により、奇跡・祈り・成長など非論理的要素は制限下にあります。
努力による上昇は抑制されています。』
「……努力しても意味がない世界ってこと?」
『端的に言えば、はい。』
前世では努力せずに後悔して死んだ。
今度こそはと思ったのに、いきなり「努力が意味を持たない」世界。
笑うしかない。
『ただし、あなたには特例スキルを付与します。
スキル名:《成長記録》――行動と修練を魂領域に記録します。』
「記録……するだけ?」
『はい。表のステータスには反映されません。』
「……まぁいい。どうせなら、試してみます。
報われなくても、続ける価値くらいはあるはずだ。」
『了解。転生プログラム、最終段階へ移行。』
光が満ち、意識が流れていく。
『――生誕、完了。ようこそ、“神不在の世界”へ。』
その瞬間、俺の新しい人生が始まった。




