表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中二病の俺が影のダンジョンヒーローを目指していたら、変てこな幽霊と不思議な股旅に出会う  作者: 本尾 美春
第二章 「巾着田ダンジョン ―救うべき者と見捨てられた者―」
6/153

第6話

 巾着田ダンジョンはなんか不思議なところで、一面に広がる彼岸花畑だ。天井は高く、どこからともなく差し込む淡い光が赤い花々を照らし出している。足元には細い小道が幾筋も伸び、迷路のように交差している。

 洞窟の中に花畑がある。そういう感覚に近い。

 花々にも昆虫や微生物がいて、生態系が成立している……天井が高いのも物理法則無視してるし、本当どうなってるんだと突っ込みたい。

 

 あ、ちなみにこの昆虫は現実世界にいるやつでモンスターじゃない。木々や植物はその限りじゃないけど……。

「植物系のモンスターが普通にいるから、な!」

 俺は闇属性の弾丸【アビスブレット】を右手指から発射して、提灯状の花とか蛙とかをどんどん駆除していく。

 モンスター自体はEランクだしそこまで苦戦はしない相手だ。

 

 ただ…………問題が一つ。

 彼岸花と紛れて、すっっげえ分かりづらい!!

 提灯の花なんて彼岸花そっくりだし、蛙なんて蕾に擬態してるし!

「隠密系でもやってんのかよ……、奇襲されても軽いケガ程度だけど正直うっとおしいわ……」

「だいじょーぶー?」

 ククルはふわふわと俺の頭の上にくっついている。心配しているつもりなんだろうが……お前楽そうだな、ほんと。

 

「本当に心配するなら、なんかやってくれないか?」

「分かった! 応援するね!」

「逆に疲れるようなことはやめろ!」

「じゃあ歌います!」

「モンスターの気配消すようなことはやめろ! 邪魔したいのかお前はっ!」

 ダメだったかな、もうクビにして追い出すか?

 

 そんな考えがふと頭をよぎったのだが――。

 

「じゃあ……あか~~いひとだま~~おいで~~」

「え?」

 そう言ってククルの周りに、赤い火の玉のようなものが出現した。

「うわ! なんだこれ?」

「ひとだまだよー? 大丈夫! こわくないよ」

「ひとだまっていう時点で怖いんだが……」

 まあ、幽霊だし人魂呼び出せるのは何ら不思議なことではない……のか?

 

 幽霊とかって人魂とセットで表現されてること多いしな。

 

「……で、それで何をする気なんだ?」

 まさか芸人みたいに呼び出しただけだったら怒るぞ。

「こうしまーす」

 

 そしてククルは人魂をいくつか前方の道に放ったのだった。

 

 

「……?」

「お、見つけたか? アスちゃん見つけたよー!」

 そう言ってククルが指差した先――――右寄り前方数メートルのところに――。

 人魂に群がられている彼岸花があった。

 いや、よく見ると彼岸花の茎――細長い緑色の蔓が微かに動いている。

 

「!!」

 俺はすぐさま【アビスブレット】をそのモンスター向けて射出した。

 完全に自生している彼岸花に擬態していた。ククルが指摘していなかったら絶対気づかずに奇襲されていた。

「マジかよ……全然気づかなかった……」

「どう? ククルすごい? すごい?」

 ククルは目をキラキラさせて誉めて誉めてとアピールしてくる。

 うざいなお前……でも――――。

 

「ああ……ありがとうククル。お陰で凄い助かるよ」

 俺は素直にククルの想いに応えた。

 正直な想いだった。うるさいしウザイけど……俺を助けてくれたのは本当に嬉しかったから。

「えへへ、もっと褒めろー! ククルとアストラルが協力すれば敵なしだぞー!」

 胸を張り誇らしげなククル。自信満々なククルの目の前に――――。

 

 蜘蛛が上から糸を垂らして降りてきた。

「きゃあああああっ!! クモ! クモッ! 助けてアスちゃあああーん!!」

 クモを振り払おうと必死に逃げ回るククル。

 俺はそんなククルの姿を見て……盛大に溜息を吐いたのだった。

「前言撤回。やっぱバカだわお前」

 

 ◇◇◇

 

 時を同じくして。

 池袋南ダンジョン入り口前。

 自然と調和するよう設計された、朱色の屋根をした木造の受付小屋。

 監視役と受付を兼任している男の前で、新たに一人の探索者が訪れていた。

「物好きだね、あんた」

「そうでござんすか?」

 

 受付の男にそう言われて、答えた男は不思議な口調をしていた。

「そりゃそうさ。Aランクの探索者がEランクのダンジョンを訪れるなんて滅多にないよ。特に目新しいものがあるわけでもない。何が目的で来たのさ?」

「あっしは別に探索を目的に来たわけではありませんよ。ただ――」

 

「9層で窮地に陥っている人たちを助けたいだけでござんす」

 

 そう言って、ダンジョンの中へ入っていく男は、三度笠に道中合羽という現代に似つかわしくない格好をしていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ