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中二病の俺が影のダンジョンヒーローを目指していたら、変てこな幽霊と不思議な股旅に出会う  作者: 本尾 美春
第二章 「巾着田ダンジョン ―救うべき者と見捨てられた者―」
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第5話

 日曜日の早朝。

 

 俺はアストラルの衣装を荷物に入れて今日もダンジョンを探索しに行く。

 流石に影のヒーローが「時の鐘ダンジョン」ばっか籠ってるわけにはいかない。

 居場所が特定されそうだし。

 というわけで別のDランク以下ダンジョンだ。アストラルとして活躍できるよう、危険度高めなところが望ましい。

 近くにするのも……やめるべきか。なるべく離れた方がいいかもしれない。

 その気になれば横浜にも行けるけど……片道一時間以上かかるのはちょっと。ここは余裕あるときかなあ。

 

 ネットで調べると埼玉県日高市にランクEダンジョンがあるらしい。行くならここか。

 最下層ボスまで行かなければソロで行けるレベルだ。

 最下層ボスは……勝率七割といったところか。少しでも死ぬ可能性があるものは避けたい。

 

「――というわけだ。お前の初仕事だ。気合入れていけよククル」

 電車の中、俺は同行させているククルに声をかける、が――。

「グ――スカピ――……」

「寝てんじゃねええええええっ!」

 

 隣で思いっきり寝ていた。

 本当に役に立つのか不安になってきたぞこれ…………。

 

「えーと、巾着田曼珠沙華公園…………ここか」

「おお、凄い人いっぱいだあ!」

 曼珠沙華の赤い群生で知られる巾着田。観光シーズンを過ぎると人の姿はまばらになるが、ダンジョン入口は探索者たちで賑わいを見せていた。

 受付の周りには探索者向けの掲示板があって、最新の注意事項や討伐依頼が貼られている。初心者向けの地図や簡易的な装備を販売する露店が並ぶ。間違いなくここだ。

 

 ところで幽霊のククルが人ごみの中入って大丈夫なのか? と思うだろうが……。

 ククルの姿は普通の人には見えないようだ。

 

 ここにたどり着くまでに数百人の人とすれ違ったと思うが、ククルに反応した奴は一人もいなかった。

 時折人や物をすり抜けたりしていた……流石幽霊だ。

 相当霊感高くないと見えないのかもしれないな。

 といっても俺は別に霊感高いわけじゃないんだけどな…………なんで俺だけククルの姿が見えるのかは正直分からない。

 

「えーと……」

 俺はスマホの情報をスクロールしながら呟いた。

「10層まであって、極低確率で魔法スキルカードが出るらしい。あと、9層には——」

 俺は思わず息を飲んだ。

「パーティーメンバーをランダムワープさせ分散されるトラップがあるって。マジでこえーな、このトラップ」

 アストラルの出番あるなら九層か。とりあえず目標は定まったな。

「あとホームレスが拠点としているので特に夜間は注意されたし、か」

「ホームレスって住む家ない人だよね? 注意しなきゃいけないの?」

「そりゃあ不潔だし臭いし……みんな嫌ってるよ。だからみんな夜間は避けるんだよ」

 もちろん彼らはなりたくてなってるわけじゃない。親を失い一人暮らしをしている俺にとっても、いつかその立場になる可能性はゼロじゃない。今は残された資産で何とかやっているけど……。

 

 ホームレスで探索者をやってるやつはかなり多い。F〜Eランクに出没するとか何とか。

 

 Dランク以上ともなると収入が増えるからホームレスがいなくなる、とのことだ。俺詳しくは知らんけど。

 詳しくないのは数える程しか遭遇してないからだ。どうも一般人との接触を避けるために、夜から深夜あたりで探索するらしい。

 だから俺にはあんまり関係ない話なんだよな。

 

 でも助ける人を選別するなんて、ヒーローには相応しくないし、ホームレスでもピンチになってたら俺は助けるつもりだ。

 どんな人でも差別することなく平等に助ければいろんな人からの評価が集まり、俺の痛いという評価も変わるはずだ。だから選別しない。絶対に――。

 

 

「さて、前知識は手に入れたし、早速ダンジョンに入るか」


 入口はひと目で分かった。巾着田の一角にある大きな石の間から覗く暗い洞穴。洞穴の周りには彼岸花が不自然なほど密集して咲き、まるでダンジョンへの道を示すかのように入口へと続いている。

 受付を済ませゲートの前まで来ると、入口から冷たく湿った空気が漂ってきた。冷たい風が指の間を通り抜ける。

 

「怖いねぇ〜、ここ」ククルが少し震えながら言う。

「怖がるな。お前は幽霊だろ。むしろモンスターの方が怖がるんじゃないのか?」

「そんなことないよ〜。ククルは怖がりなの!」


 俺は覚悟を決めてゲートを開き洞窟の中へ入る。ヒーローになるための第一歩。ククルと共に新たな冒険が始まる。

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