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七話 【竜との対話】【エリジオス】

【竜との対話】


 解呪の成功を確認すると、優馬はククルのもとへ駆け寄った。

 ククルは片膝をつき、荒々しい息遣い、口元には血が流れていた。


「キ……キリハラ殿、先程のあれは? キリハラ殿は使役も出来るのですか……?」


「ククルさん、後で話すから今は治療が先だ」


 ククルの背中に手を当てる。


 イメージする。


「傷を治し、汚れを浄化するイメージ」


「光魔法〈エイド&リフレッシュ〉!」


 優馬の掌が光り、ククルが緑の光に包まれる。傷が癒え、口元の血も消え、青い瞳に力が蘇った。


『中魔法を使用しました寿命が一ヶ月減少しました』


「キ、キリハラ殿、これは? 魔術!? あなた、魔術が使えるのですか?」

 

 戸惑いと驚きが混ざった視線を送る。


「これも後でちゃんと話すから、とりあえずこの事態を解決しよう」


「そ……そうですね」


 優馬はドラゴンの方に向き直る。


「ドラゴン! 使役は解いた。こちらに戦闘の意思はない!」声に出して言ってみた。


 ドラゴンはゆっくりと目を細め、頭の中に語りかけてくる。


『まずは礼を言おう、キリハラユウマ。感謝する。そしてそこの娘よ、術が掛かりかけていたとはいえ、すまなかった』


 優馬はククルの方を見て伝える。


「ドラゴンがすまなかったって」


 ククルの目がテンになった。

 そして今度は青い瞳をキラキラさせて、興奮気味に詰め寄る。


「すごい! あなた、ドラゴンと会話できるの?」


 ククルが顔をぎゅっと近づけてきたので優馬は思わず目をそらす。


「この事については自分にもわからない、なんか会話できるみたい……」


 ごにょごにょとした声になってしまった。


 すると、ドラゴンが再び口を開く。


『我は“ドラゴン”という名ではない ドラゴンは貴様たちが勝手につけた総称だ。我の名は──』


 ドラゴンが胸を張る。


『地を支配する黒鉄大翼竜ハッシュパピーだ』


「くろがねのだいよくりゅう……ハッシュ…」


「……え?」


『なんだキリハラユウマ! なぜそんな顔をする! なんだそのフニャっとした目は! 誇り高き名前であろう!』


 ドラゴンは誇らしげに胸を張るが、優馬は祖父が飼っていたジョンを思い出していた。



【エリジオス】


「あの……キリハラ殿。ドラゴンに触ってみたいのですが……」


 ククルが急にもじもじと喋り出した。


 ずきゅーんと優馬の胸が鳴った。


『かまわぬ』


「良いってさ」


 ククルはキャーッとドラゴンに駆け寄り足に抱きついたが翼竜は特に気にすることなく優馬に語り掛ける。


『キリハラユウマ貴様に礼がしたいのだが何か望みはあるか?』


 ルルルには魔法についてしか聞いてなかったのを思い出した。


「そうだな、この世界について教えてくれないか?」


 ファンタジーではドラゴンは太古から生きているのが定石なはずと思い聞いてみる。


『よかろう』


 優馬の頭の中に膨大な映像が流れ込んできた。



〈惑星エリジオス〉


 二千年前――創造主は自分の分身として三体の翼竜を生み出した。


 その後、〈エルフ〉〈ノーム〉〈ドワーフ〉そして〈ネフィル(魔族)〉が次々と創造され、さらに五百年を経て〈ヒューマン(人間)〉と〈バルグ(獣人)〉がこの世に誕生した。

 それぞれの種族は独自の領域を持ち、互いに干渉することなく平穏な時を過ごしていた。

 だが、ネフィルがエルフに対して同盟を持ちかけた時、その均衡は破られた。エルフはネフィルの策略気づき、この誘いを拒絶した結果、ネフィルによる「エルフ狩り」が始まった。

 ネフィルは力ずくでエルフと交わり、闇なる血脈を引く〈ダークエルフ〉を生み落とす。

 やがて、ダークエルフはエルフの王の胸にその鋭き爪を突き立てる――それはエルフの終焉を告げる残酷な一撃であった。


 危機感を抱いたノームとドワーフは堅固な同盟を結んで抵抗したが、侵略者ネフィルの猛攻を完全に防ぎ切ることはできなかった。


 多くの命が失われ、辛うじて生き延びたノームたちはヒューマンに救いを求めた。だが、ヒューマンはその信仰心につけこみ、ノームたちを操り強力なマジックアーティファクトの制作を強いた。そしてノームたちはヒューマンの奴隷同然の身となり、自由を失った。


 ネフィルは領土こそ拡大したものの、度重なる戦いで消耗し、その勢力を失い始めていた。

 彼らはやがて闇の中に潜み、静かに次なる戦いに備えることを選んだ。

 一方で、ヒューマンは向上心、好奇心、技術力を武器に、勢力を拡大し、人口を飛躍的に増やしていった。

 自由国家を謳うバルグは、森や山岳、湿地、海域などを自由気ままに支配し、各々が自分の望むまま領土を広げていた。


 そして今から五百年前、ヒューマンは世界の覇権を掌握すべく、ネフィルに対して宣戦布告を行った。


 バルグは組織的な戦闘こそ苦手だが、個々の戦闘力が非常に高く、傭兵としてネフィル側につく者、ヒューマン側につく者、そしてどちらにも関わらない者と、分かれた。


 百年を超える終わりなき戦争により、全ての種族は疲弊し、次第に衰退の道をたどっていく。


 戦争はやがて停戦状態になり今に至る。




 生々しい光景が頭に流れ吐きそうになったが、優馬はサムズアップをとり笑顔で応えた。


「うん 異世界ガチャ ハズレだな」



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