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一話 【絶望と決断】【補助神ルルル】

第一章の下書きが終わりました。


月曜〜金曜 十二時半に投稿します。

【絶望と決断】


 ブラック企業で長時間労働を強いられ、精神的にも肉体的にも疲弊していた霧原優馬(二十六歳)は、ついに限界を迎えた――

 締め切りに追われる日々、終わらない業務、上司からの叱責。眠れぬ夜が続き、食事も満足に取れず、気がつけば鏡に映る顔には生気はなかった。


「もう、これ以上は耐えられない……」


 彼は震える手でスマートフォンを握りしめ、最後のメッセージを誰かに送るか迷ったが、結局やめた。

 静かに屋上のフェンスに手をかける、フェンスは夜風にさらされて冷たくなっていたが優馬はそれを感じる事も無かった。

 

 ゆっくりと体を乗り出した。そして、そのまま、重力に身を任せた。

 

 しかし――


 衝撃とともに意識が揺れた。

全身を鋭い痛みが駆け巡り、呼吸するたびに肋骨がきしむような感覚があった。肺もつぶれたのだろうか、息を吸うたびに胸が悲鳴を上げる。


「……い…き…て…る?」


 どこか遠くから聞こえるような自分の声。微かに目を開けた。視界は赤く滲み、あらゆる輪郭がぼやけている。ビル風に吹かれて揺れる木の葉のざわめきが、頭の奥で不規則なノイズとして反響する。

 あり得ない角度で曲がっている足元には砕けた枝と剥がれた樹皮。周囲には湿った土が散乱し、木の根元から漂う青臭い匂いが鼻をついた。会社の入口脇に植えられていたシンボルツリーの一本――


「そういえば……樹が植えられて……たな……」


 だが、状況も把握する間もなく――


 ドスン……ドスン……


 地面が、わずかに跳ねた。


 コンクリートに響く、重たい足音。小さな震動が、背骨を伝って脳髄を揺らす。かすかに舞う砂ぼこり、空気のざわめきが、不安を増幅させる。

 視界の端、巨大な黒い影がうごいた。まるで霧の中に現れた幻のように、シルエットだけが浮かび上がる。


「ブゴォォォォ!」


 不意に大気を割るような轟音。鼓膜を破壊せんばかりの咆哮に、全身の筋肉が凍りつく。音の圧で頬が揺れ、腹の底まで振動が突き刺さった。


 次の瞬間――


 ドゴォッ!!!


 全身を殴打されるような衝撃が襲った。

 モノローグなのか発せられた声なのかわからないが言葉がでた。


「えっ、なぜここにイノシシが――?」


 優馬の身体と意識は空高く舞い上がっていった――



【補助神ルルル】


 ――気が付くと、彼は雲の上のような場所にいた。雲の上に立った事は無いが、足元には白いモヤが床のように広がっており、上を見上げると青色のグラデーションが何処までも続いていた。


「ここは……どこだ?」


 目の前には、人の形をしたぼやけた光が浮かんでいる。優馬は目をこすってみたが変わる事は無かった。


「ご、ごめんなさい!!!本当に申し訳ないです!!」


 光が喋りだした。


「私は補助神ルルルです。創造神の補佐をし、異世界間の魂の流れを管理する役割を担っています。通常は転移や召喚の調整をしているのですが……」


 何か聞き慣れない単語が溢れていた。

 ルルルは申し訳なさそうに光の形を揺らしながら続けた。


「今回は、私の手違いであなたを巻き込んでしまいました……本当に、ごめんなさい!」


 ルルルはしきりに頭を下げ、光の揺らぎが落ち着かない。声も震えており、どれほど動揺しているのかが伝わってくる。


「召喚されたミニ豚ちゃんの送り先を間違えてしまって……」


 あれが豚?ミニ?


 優馬は頭を抱えた。

 言ってる事は段々と理解は出来てきた。そういうジャンルの作品を好んで読んでた時期もあったから――


「まあ死のうとした奴が腹立ててもな……」

 

 乾いた笑いが自然と出てきた。


「で、俺は死んだのですか?」

 

 両手を見ながら握ったり開いたりしてみる。身体も痛むこともなく頭の中で渦巻いていたモヤもなくなり思考はクリアだった。


「いえ、まだかろうじて生きておられます……そこでご提案があるのですが」


 ルルルは申し訳なさそうに頭を下げ、お詫びとして俺を異世界に転生転移させることを提案した。地球に戻っても瀕死の身体に戻るだけらしい。


「あの、いかがでしょうか?」


 いっそ死んでてもらった方が良かったのにな、と一瞬考えてみたが。


「わかりました。転生でお願いします」

 特に深くは考えずに答える。


「受理しました」

 キュイーーンと電子音ような音が聞こえた。


 ルルルはさらに、転生転移の際に以下の能力を授けるという。


〈身体能力の向上〉


〈全種族の言語習得〉


 そして――



「他に何か望むものは?」とルルルが尋ねる。


 優馬は腕を組み、しばらく考え込んだ。


「……望むものか、幼い頃から生きるのに必死だったからなあ、のんびり平和に過ごせるなら……」


 一度死んだせいか、余りにも現実離れした現状に妙に気持ちが高揚してきた。

 環境が変われば少しは前向きになれるのだろうか?


 ルルルは静かに彼の言葉を待っている。


「いや、せっかく異世界に行くのなら……俺は魔法を使ってみたい」


 しかし、ルルルは少し困ったような声で、


「転移先の世界では魔術が衰退しており、適性のある者でも古代のアーティファクトを使わなければ魔術を行使できません……」


 そこで、彼女は代わりに特別なスキルを授けると言った。


〈ソウルサクリファイス〉


【あらゆる魔法を自由に行使できるがその効果に応じて自身の寿命をコストとして使う】


「えっ、命を削るのか!?」


「はい、でも安心してください! 余命ではなく寿命の方です。ですが優馬様が想像しておられる。ずきゅーん! どかーん! な魔法が使えます」


「ずきゅーん!?」


「はい、どかーん!です」


 安心?……何か思っていたものとは違うような気がするが、ここはおまけの人生なんだし。

「じゃあそれでお願いします」


 ルルルの頭のてっぺんにピコンとアンテナのようなものが立った。


「他に望むものはありますか?この世界のコトワリであるものなら」


 と再び尋ねられた彼は、ふと何かを思いつき、ルルルに耳打ちする。

 ルルルは呆れながらも了承し――ついに霧原優馬は異世界へと転生転移する。


読んで下さりありがとうございます。


導入部分はテンポ良く書いてみました。

主人公 霧原優馬のパーソナリティに関しては後程詳しく書いていこうと思います。


よかったらブックマークして頂き、続きも読んでくれたらうれしいです。

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