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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ホラー・ホラー風味

【胸糞注意】1週間鑑賞し続けると命を落とす絵画

作者: まい

※ この物語はフィクションです

  それと後半は重いホラーです。 苦手な方は前半までで退避をお願いします。

 世の中には呪われているとしか言えないモノが存在する。


 科学技術全盛のこの世界でオカルトなんて……と鼻で笑われようが、それは厳然と存在する。


 むしろその科学技術の最先端を開拓する研究者達こそオカルトを信じる者がいる。

 なにせ現在の技術力では作れない、再現できない現象を理解しているから。


 つまり現在で解き明かせない現象は全て理解できない現象(オカルト)である。


 だが、そんな範囲のオカルトではなく、一般的なオバケだの霊だのの(オカルト)現象も本当に存在する。




 これから紹介する2例は、そうとしか思えない現象を体験した者の手記の一部である。


 なお両者とも絵画で亡くなる同じ命の落とし方だが、それぞれ違う絵である事は申し添える。




〜〜〜〜〜〜




Case.1  1週間鑑賞し続けると命を落とす絵画



1日目


 念願の絵画をようやく手に入れた!


 1週間の間、鑑賞し続けると命を落とす絵画として有名な、オカルト絵画!!


 絵画と言っても、暗幕がかけられた上で(ひも)でガチガチに縛られているから、まだ見ていないのだが。


 オークションで売り出されていた時に添付(てんぷ)された(ただ)し書きには、かけられた暗幕を絶対に取らないで下さいとあった。

 そして保管する際は少しでも空気の動きがない場所に置き、幕がめくれないようにしてくれと。

 さらに、ちょっとでもまくれているのを見てしまえば、それは鑑賞したカウントに入ってしまうらしい。


 そしてそこまで書いてあるなら、見たものの末路も書いてほしいと思った。 これではむしろ好奇心を(あお)って見る者が出て来るではないか。


 なんと気難しいオカルトの品か。


 だがそれが良い!!



 それはそれとして、やはり絵が気になる。


 命を取られてしまうまで1週間の時間が必要なら、1回見るくらいなら問題ないだろう。


 ほら、こうやって足らない注意書きでは好奇心ばかりを煽られて、気になってしまう。


 そう思って、早速絵を見てみた。



 最初はモノクロかと思うほど暗い色調で(えが)かれた、丸井戸と森の絵だった。


 これ自体はよくある風景画だ。


 確かに全体的に暗くて不吉感はあるが、これのどこが呪われているんだ?


 その程度の絵だった。



 もしや、この絵に何か呪い文字とか魔法陣とかが巧妙に隠されていて、それが影響を与えるとか?


 なんて目を皿にして舐めるように絵を見ていたら、なんと変化がおきた。


 絵に、ボサボサな髪をのばし放題のばし、ボロボロの布を巻き付けた幼い女の子が絵に現れた。


 気が付いたら対比して大きな水タライを(かか)えた女の子がいたので驚きだ。


 この変化はまるで動画やテレビみたいにしっかり動く。


 その幼女は井戸へ近寄り、一生懸命に水()みをしていた。


 見た目からして非力な幼女では、水汲みは大変な作業。


 それでも懸命に水汲みを行う姿に、感動を覚えて思わず心の中で応援した。


 すると作業の手を少し止め、辺りを見回す絵の中の幼女。


 その後、更に少しして水汲みへ戻ったが、時おり小首(こくび)(かし)げる幼女はとても愛らしかった。


 それで水汲みを終えた幼女が去っていく。



 時計を見たら、この変化は1時間位の間続いていた様だ。


 それで何か変化がないのかを絵の近くで他の事をしながらチラチラ見ていたが、再び変化があった。


 また幼女が井戸で水汲みをする様子だった。


 この絵の変化を何度か目撃したが、それによって法則性を確認できた。


 絵の変化は1時間。 その変化が終わったらクールタイムで1時間。 クールタイムが終わってから見はじめて5分後に変化が始まる。



 ここまでは分かったが、水汲み中に辺りを見回して小首を傾げたのは最初だけ。


 この条件が分からない。


 解明はまた明日か。


 1日だけと思っていたけど、この幼女が気になって仕方ない。


 7日あるならまだ見ていられる。 大丈夫だろう。 きっと。




2日目


 今日も幼女は水汲みをしていた。


 水汲みの途中で汲んだ水をちょっと飲み、ほっとひと息ついていたのが本当に本当に愛らしくて頭の中が「可愛い可愛い」で埋まった時に、また幼女がキョロキョロした。


 2回目は変化が無いだろうと思っていたのだが、変化はあった。


 水を飲んだ後に物足りなかったらしく、2杯目の口をつけていたので「また飲むんかい!?」と心の中で強くツッコんだら、幼女が()いて(むせ)た。


 ハラハラしながら見た3回目以降は、変化がない。


 水汲みして水を2杯口にして、絵の外へ出るだけ。



 本当はもう見てはいけないのだろうが、どうしても気になる。




3日目


 水汲みは変わらないが、その途中で井戸の裏に何かを見つけたらしい。


 しゃがんで、楽しそうに揺れながらその何かを見つめている。


 「幼女可愛い!!」その気持ちが頂点に達した時に、またキョロキョロしていた。


 2回目以降の変化は、ない。


 がっかり。



 まだ3日目だ。 まだ7日目じゃない。




4日目


 水汲みする幼女に、最低な事が起きた。


 絵の中の、描写されていない部分と何かがあったらしい。


 水汲みの途中で手を止め、こちらを(おび)える目で見てきて、その数秒後に幼女が頭を抱えてしゃがみ込んだ。


 何に対してしゃがみ込んだのかを、よく見たら石だ。


 幼女が誰かに石を投げられているのだ。


 「なぜそんな事が出来る!? こんな幼くて頑張っている子に、そんな仕打ちをなぜ出来る!!!」そんな気持ちが爆発したら、投石が止まったらしい。


 幼女の怯えがなくなったことで、それが分かった。



 2回目以降は見たくない、見る気力が湧かない。


 でも明日は、明日こそは。




5日目


 今回は何も無い。


 幼女が水汲みして、その途中に井戸周辺が陽だまりスポットになって、水汲みを終えた幼女が日向(ひなた)ぼっこでうっかり転寝(うたたね)して可愛かっただけ。


 明日もこんな日が続いてほしい。




6日目


 石を投げていたヤツはあいつか。


 複数いる中で1番キレイな服を着てて、1番背が高くて体格もいいヤツ。


 いるよね。 ガキ大将ぶって自分が絶対に正義だと思い込んでいる恥ずかしいヤツ。



 この幼女は見た目からして恵まれた環境にはない。


 そんな子に、追い討ちとばかりに殴る蹴るの暴行。


 本当に最低。



 自分が絵の中の人物だったら、このガキ大将っぽいの達を○○○○○○(ピーーーーー)してやるのに。



 あまりにも気分が悪くなって、幕を掛けた。




7日目


 7日目。 もう絶対に見てはいけない。


 ダメ。


 のはずなんだけど、やっぱりあの幼女が気になって仕方ない。


 自分なら7日のを見ても大丈夫。 命を落とさない。 きっと。


 そう信じて、幕を取り払った。



 今日の幼女はいつも以上にボロボロだった。


 昨日やられた傷が痛むのだろう。


 そのまま痛む体で、いつもよりゆっくりした速さで水汲みをしている。


 時々手が止まったり、痛みで思わず手を()ね上げて顔を(ゆが)ませたり。


 本当に痛々しい。


 がんばれ、がんばれ。


 ひどい体でも懸命に作業する姿を心から応援しているが、その思いは届かなかった。



 ヤツ等がまた来た。


 アイツ等はまた、幼女へ暴力を振るおうとしていた。


 その様子に自分の心は沸騰(ふっとう)


 あらん限りの殺意を込め、ガキ大将っぽいの達を(にら)む。


 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。


 幼女を傷付ける悪いヤツ。 絶対に許さん。


 ガキの間違った一方的な正義で、こんな健気(けなげ)で可愛い女の子を傷付けて言い訳がない。


 絶対に殺す。 やめてとどれだけ泣き叫んでも殺す。 動けなくしてから指を1本ずつ折って苦しめてから殺す。 何がなんでも殺す。



 どす黒い心のまま睨んでいると、ガキ大将っぽいの達はなぜか(そろ)って腰を抜かして尻もちをついた。




 なんだ、情けない。


 すこしスッキリした気分で幼女の無事を確認する。


 拍子抜けな気持ちのまま絵を見ていると、ガキ大将っぽいの達がなぜか急に尻もちをついた事に(おどろ)呆然(ぼうぜん)としている幼女。


 そんな姿を見て、自分はふと絵の監視ついでに(つま)もうとしていた間食のお菓子を思い出し、絵の前に差し出してみた。


 絵の中の話だろうから届く訳はないのだが、それでも気持ちとして幼女になにかしてあげたくなったのだ。



 すると、不思議なことが起きた。


 絵の中の幼女の手の中に、自分が差し出したお菓子があった。


 この怪現象に自分も絵の中の幼女も驚いた。


 が、それとは別に幼女は持っているものが食べられる物だと分かったようで、お菓子を恐る恐るといった様子で口に入れた。


 直後にまるで背景に花が咲いたような、本当に幸せそうな笑顔を浮かべたのだ。



 そう。 頑張る良い子にはそんな笑顔がよく似合う。


 自分はとても満足した。



 その幸せそうな様子を見守っていたのだが、幼女は急に視線を持ち上げ、まるでこの見守っている自分が見えているように視線が合った。


 気のせいだろう。


 そう否定したいのだが、なぜか幼女がこちらに近付いてくる。


 だんだんアップになり、顔がよく見える様になると視線がズレていないのが分かる。


 なぜだ? なぜ自分が見ていると分かった?



 自分は少し混乱しているが、そんなのに構わず幼女がもっと近付いてきた。


 ああ、可愛い。



 ついに幼女はガチ恋距離にまで寄ってきた。


 可愛い。


 そしてその幼女が最高のえがおξζμωςυδη(以降、文字が崩れていて解読不能)







※ 呪われた絵画を7日間見続けたこの犠牲(ぎせい)者は、息絶えている所を同居している者に発見された。


 その犠牲者の顔は、崩壊していた。


 とてもとても幸せそうで、鼻の下が伸びに伸びて、もう死んでも良いと思っていそうなほど()けていた。


 これは同じ絵画を買ったもの特有の死に顔で、通称【尊死(とうとし)】と呼ばれている。





〜〜〜〜〜〜





Case.2  1週間鑑賞し続けると命を落とす絵画




1日目


 物騒な絵画を買ってみた。 本当にオカルトなんてモノがあるのかを検証するために。


 買った際に色々注意をされたが、知ったことか。



 封印とやらをさっさと()がし、絵を(あらた)める。


 青紫の色調で(えが)かれた、沢山の木に囲まれて四角井戸がポツンとある絵だった。


 それとその角井戸の手前に、恐らく死んでいるであろう(うつぶ)せで倒れた人が1人。




 こんな絵で人が死ぬ?


 馬鹿馬鹿しい。


 むしろ絵の中の人が既に死んでいるじゃないか。


 その倒れている人は泥だらけのボロを身にまとい、髪も伸ばし放題伸びたひどい状態だ。


 多少心が痛むが、だがそれは絵である。



 一気に興味が失せた。


 無駄な買い物だったと思う。


 が、これで1週間で人が死ぬなんて有り得ないだろうと、断定する材料になるのだから、それだけの価値はあったんじゃないかとも思う。



 まあ1日しか見てないで決めつけたと言われるのも(しゃく)だし、1週間は見続けて記録に残せば文句はなかろう。




2日目


 ありえない。


 有り得ない事が起きた。


 絵画は静止画のはずだ。


 実は大きなタブレットとかで、これは24×7時間流れ続ける動画だ。 なんて絶対に有り得ない。


 電気が必要な機器ではない。


 なのに絵が動いた。



 倒れている人の手が、動いた。


 指がバラバラに、メチャクチャに。


 なんだこれは。



 しばらく手が動いていたが、最後は力なく倒れ元通りの絵に。


 この現象は、本当にオカルトなのか?


 理解しがたい現象を視認してしまったので、今日はもう寝ようと思う。




3日目


 今日は手だけでなく、頭が動いた。


 動いた範囲は少しだけ横方向に回っただけだが、それでもこれはただの絵のはずだ。


 理解できない。




4日目


 今度は倒れていた人が腕立て伏せをしていた。


 いや、腕立て伏せではなく、起き上がろうとしているのか?


 なんなのだ、あれは。




5日目


 今日は寝返りをうち、仰向けになり上半身を起こしていた。


 まだ立ち上がれないのか、なにかもがいている様だ。


 だが、それは今はいい。


 なぜ絵が動いているのだ?


 大前提が間違っているのだ。


 これは動画ではない。


 なんだか頭がおかしくなりそうだ。




6日目


 立ち上がってしまった。


 座った状態ではなく、直立だ。


 垂れ下がった長い髪が顔を隠し、それが得体の知れないもの感を増幅して、寒気を感じさせる。


 しばらくボンヤリしていたみたいだが急にこちらへ頭を動かし、そしてこちらと目が合ってしまったと確信した。


 その瞬間に本能的恐怖を覚え、この絵にかける布を探す。



 なんとか布を見つけ出し、絵にかける頃には絵からこちらに大分歩み寄っていて、それがまた恐いのだ。


 もしかしたら命を落とすのは本当なのかも知れない。


 そう思わせるには十分な恐怖を感じた。




7日目


 今日は大丈夫だろうか?


 前日の恐怖が、まだ抜けきっていない。


 7日間で命を落とすのは与太話(よたばなし)だと思っていたが、いや。 今も思っているが、その与太話に真実味が増している。


 これは不味いかもしれない。


 だが、自分はそれが(うそ)だと証明するために買ったのだ。



 やるしかない。 見てみるしかない。


 昨日かぶせた布をめくると、めが(ここで当事者のメモは途切れていた)






※ 呪われた絵画を7日間見続けたこの犠牲(ぎせい)者は、息絶えている所を同居している者に発見された。


 絵画には犠牲者のメモにある通り布がかかっていた。


 その犠牲者の全身、(いた)る所に手の形をしたアザが残っていた。


 恐ろしく強い力で握られていたと判断できるアザだった。


 直接的な死因は【絞殺】だった。


 この絵画を買い、絵画の前で命を落としていたのが発見された場合の死因は全部同じ死因である。




 この物語はフィクションです。


 ですが、世の中には(いわ)く付きの品が、ある所にはあるのです。


 それをただの偶然だのなんだので済ますのは、早計かもしれませんね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 普通にホラーだった! 私、ホラー苦手です。 きっと何か落ちがあると思っていたのに~。 しかも一話目がちょっと幼女に肩入れしてるからとか思っていたのに~。 二話目がガチやん!! おーこわっ…
[良い点] ひとつ目でコミカル。ふたつ目でガチホラー。まるで季節の変わり目を表しているよう。温度差で風邪を引きそうだ…… [気になる点] 国家戦略に使われる(例、エイコクメンの座ると死ぬ椅子)くらいに…
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