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【完結】どうやら、乙女ゲームの皮を被ったRPGの令嬢に転生したようです  作者: 田中佳奈
第1部 どうやら、少女は企てるようです
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どうやら、ダンジョンに侵入するようです

 よし、ダンジョンに入ろう(不法侵入)!

 今は夜中の十一時。屋敷のみんなはぐっすり夢の中。

 こっそりと窓から外へ出る。


 ダンジョンは二十四時間年中無休である。まさにコンビニエンス。

 学生だけでなく、ハンターの職に就いている大人たちも勿論いる。その人たちは50層まで入るので、一日では往復することはできない。そのため、ダンジョンはいつでも出入りできるようになっているのだ。

 しかし、誰でも入れるわけではない。

 学園長からもらったペンダントを持って、受付で申請をする。誰がどのタイミングでダンジョンに入ったか、出てきたかを把握するためだ。

 ちなみに、正規の手順を踏んでダンジョンに入った場合、ダンジョン内で死ぬことはない。

 なぜならペンダントには、アバターと呼ばれる魔法と強制脱出魔法がかかっているからだ。

 アバターとは、自分の周りに目には見えない膜が張られ、その膜にその人の許容値以上のダメージが加えられると、その膜がダメージを肩代わりしてくれる。そのおかげで、腕を落とされたり、心臓や頭を打ちぬかれたりしても、無傷のままでいられる。と同時に強制脱出魔法が発動するため、結果、無傷でダンジョンから帰還できる。

 しかし、それがトラウマとなり退学する生徒や引退するハンターもいる。守ってくれるのは身体だけだ。


 そして、正規の手順を踏まない場合、最悪、死んでしまう。

 その危険を冒してでも、私は強くならなければならない。


 実際、中層までなら問題なく進められるし、下層もレベル上限を解放してしまいさえすれば、問題はない。

 その先の隠しダンジョンはそうもいかないけど……。

 正規の手順を踏まないで行く理由は、危険を冒さなければならない以外にもう一つある。

 それは、経験値の量だ。

 正規の手順だと、ペンダントの魔法を使用し続けるために経験値が吸われていくのだ。それが結構な量になる。なので、最速でレベル上げするには、不法侵入するしかなくなる。

 ダンジョンの入り口はいくつかあるけど、一番近いところは、学園の敷地内にある。学園の門にも、ダンジョンの入り口にも見張りがいて、そのままでは入れないようになっている。

 しかし、ゲームの設定を知っているからこそできる方法がある。

 それが、隠蔽魔法だ。

 この世界の魔法は、使用者の意図を補完する形でナノマシンが再現するという、ハイテクで成り立っている。そして、ラスボスが運命づけられている私は、ナノマシンが補完してくれる許容値が非常に高い。無詠唱で魔法を使うことができるのもそのおかげだ。

 普通は、言葉でイメージを固めないといけないが、私の場合、イメージが曖昧でも発動できてしまう。レベルが足りないと発動しないものもあるけど。

 隠蔽魔法は、レベルが低くても発動でき、終盤まで使えるスタメン魔法だ。


「ハイド」


 屋敷の外で魔法を発動し、ダンジョンへと向かう。

 学園の門にいる見張りの間を、ドキドキしながら歩いていく。隠蔽魔法で認識できなくなっているとわかってはいるけど、音を出さないように、静かに歩く。

 ……ふぅ。

 気付かれずに、学園の中に入れたことに安堵する。

 同じようにダンジョンの入り口にいる見張りの間も、すぅと通り抜ける。


 ※


 さて、ダンジョンの20層へやってきました!

 そこまでの魔物は、基本スルーして最短距離で進んできた。

 ……だって、経験値が美味しくないから。しょうがないよね!

 ところで、ダンジョンは10層ごとにボスが存在する。そのボスを倒さなければ、次の階層へ進む扉は開かない。

 もちろん、10層のボスは倒した。レベルは1上がった。明後日にみんなと行っても、余裕だろう。

 20層のボスは、デスウルフと呼ばれる火を噴くワンちゃんたちだ。機動力があり、複数を対応しなければならないので、初心者は手こずる。

 さて、私はソロなので、対複数となると不利になると思われるが、そうではない。

 ブロックで囲ってしまい、あとはその中に魔法をかませば一瞬である。

 おっ、レベルが3上がった。やっぱりボスは美味しいな~。


 さあ、次からは中層だ。

 上層は、岩のようなものでできた壁で囲まれた迷路のようになっていて、大型の魔物や人型の魔物はいない。しかも、魔物ごとのテリトリーがあるのか、一歩でもテリトリーから離れると、追いかけてこなくなる。

 それに比べ中層は、草原から始まり森や沼地など地形が多様に変わる。さらに、魔物も自由に歩いているし、道具を使う魔物も出てくる。

 21から25層までは、草原エリアだ。主にゴブリン種が出てくる。

 ソード、アーチャー、キャスターが付くゴブリンは頻繁に出会う。ジェネラル、クイーン、は厳しい戦いを強いられ、中層で初めて倒された人は多い。

 最後にキング。24層から現れるようになる。こいつに出会った場合は、一目散に逃げろと教えられる。しかも、ボスじゃないから、複数体で遭遇する可能性もある(キングという名前だけど、群れを率いているわけではない)。

 目の前にそのキングゴブリンが3体。鎧を身に着け、斧を両手に持ち、鼻息荒くこちらを狙っている。

 ここは25層にある、キングゴブリンが湧く窪みだ。ゲームでは、初期のレベル上げに適した場所として、有名だった。

 一気に3体湧く。1体ずつしか出てこれない。狭いから斧も振れず攻撃できない。こんな素敵な場所があるだろうか。いや、ない。

 こんなに素敵な場所なのに、なぜ、占領できているかというと、パーティーで攻略していくのが普通だということと、ここが現実だということが原因だろう。パーティーだと、経験値はその人数で分配されてしまう。一体ずつしか出てこれないと言っても、メンバーが倒されれば、倒すことが間に合わなくなり、最悪、3体をソロで対応しなくてはならなくなる。それに、そこまでの危険を冒さなくてもレベルは上げられる。

 さて、この狩場は私にとって都合がいい。

 デスウルフを倒した時と同じだ。キングゴブリンが出てくる場所をブロックで塞ぎ、その中で魔法を発動させる。すると、逃げ場のないキングゴブリンはなすすべもなく、死んでしまう。

 こんなに楽にレベルを上げれていいのだろうか。

 5回ほどその作業をこなし、腕時計を見るともう夜中の2時だった。もう帰らないと、明日に響いてしまう。

 レベルを確認すると、28まで上がっていた。キリのいい30まで上げたい欲を抑え、屋敷に帰る。


 自室に戻り、濡れタオルでサッと体を拭き、寝間着へ着替える。

 ベッドで横になり、今日のことを考える。

 一番の失態は、学園長の前で無詠唱で魔法を使ってしまったことだ。その場で追及されなくて助かったが、明日呼び出されるかもしれない……。

 まあ、そうなったときは、言い逃れしよう。


 明日の買い物、楽しみだな~。

 そう思い、眠りにつく。

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