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それは断罪から始まった

「レティシア・グランドール。お前との婚約破棄を申し入れる」


 静かではあるが異を唱えることは許さない、そんな血も凍るような口調で、私に淡々と告げられた。


 声の主はこの国の第一王子にして王太子であるルーファス・ベルナード。

 婚約者であるはずの私は、彼の目の前で近衛に取り押さえられている。

 かわりに私がいるはずだった場所である彼の隣には一人の愛らしい令嬢が立ち、悲痛な面持ちで私を見下ろしている。


「お前はこのオリヴィア嬢に対し数々の嫌がらせを行い、また、彼女の尊厳を著しく貶めたと聞く」

「違うんです、ルーファス様! レティシア様はお優しい方ですもの、きっと何かの間違いですわ!」

 慈悲のない表情のまま続ける彼に隣の令嬢がすがるように声を上げた。


「ここにオリヴィア嬢が受けた仕打ちに対しての証言を纏めたものがある」

「そんな……ではやはりレティシア様が私のことを害そうと? うう……」

 証拠であるらしい書類の束を目にし泣き崩れる令嬢。

 どこまでも冷たく情の欠片も宿さない彼の姿と、可憐な少女から零れる悲哀溢れる声音は、豪奢なドレスを身に纏いながら冷たい石床に押さえつけられる令嬢――私である――の異様さをこの上なく引き立てた。


 なんだ、これは。


 目の前で繰り広げられるさながら演劇のような光景は、この事態を全く予想だにしていなかった私の思考を置き去りにするのに十分だった。

 そんなこともお構いなしに演目は続いて行く。


「レティシア嬢。お前は辺境の地ルシーダへの追放処分とする」


 最初から最後まで変わることのなかった冷たい声音が私へそう告げることで、幕が下ろされた。

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