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乙女ゲームの悪役令嬢に転生したが、ヒロインを求愛する王子兄弟に殺されそうになっていたタイミングだったので必死に逃げていたところ、一番の推しメンの近衛騎士に助けられてテンションが上がってしまった

作者: 夜炎 伯空

「ぎゃーーーーーー!! 殺さないでーーーーーーー!!」


「あれだけのことをしておいて、今更、命乞いか!!」

「彼女にしたことは死をもってつぐなってもらう!!」


「それは私だけど、私じゃないんですーーーーーーーー!!」


 乙女ゲームの悪役令嬢カリアに転生した直後、私はヒロインを愛する王子兄弟に殺されそうになっていた。


 ヒロインに大怪我をさせてしまったのだから、王子達からしてみれば殺しても気が済まないくらいの怒りが湧いている気持ちは分からなくもないが………


 転生前のカリアがしたことなのに、いきなり殺されるなんてあんまりである。


 ……乙女ゲームでヒロインに感情移入していた時は、カリアにもついにむくいがとか思っていたのに、まさか私がその悪役令嬢に転生するなんて……


 ゲームをしていた時も、転生した後も、なんて憎らしい存在なのだろう。


 ドカッ!


 通路の曲がり角で、誰かにぶつかった。


「え、ラムド?!」


「お嬢様? 物凄く酷い顔をされていますが、どうかされましたか?」


「きゃーーーーーーーー!! 本物のラムドだーーーーーーー!!」


 ラムドは私がしていた乙女ゲームの一番の推しメン。

 カリアの近衛騎士で、隠し攻略キャラ。


 元々はカリアに想いを寄せているため、攻略に要する時間は百時間以上と言われていたが、ラムドが幸せになるエンディングを見たい一心で何とかやり遂げた想い出深いキャラだ。


「ああ、王子達に追われているのですね。……ですから、あれほど行動をあらためて下さいとお伝えしておりましたのに……」


 推しメンに逢えた喜びで、一瞬、状況を忘れてしまいそうになっていたが、今まさに殺されそうになっているところだ。


「ラムド、一生のお願い!! 私を助けて!!」


 私はそう言って深々と頭を下げた。


「……お嬢様でも、頭を下げることがあるんですね……。分かりました。私が何とかしましょう……」


 悪役令嬢としては見ることのなかったであろう私の行動にラムドが驚いている。


「ラムド、そこをどけ! 私が直々(じきじき)に、その女を殺してくれる!!」


 ガキン!


「落ち着いて下さい、皇太子殿下」


 怒りに我を忘れて切りかかって来た皇太子殿下の剣を軽くいなして、ラムドはそう言った。


「俺に逆らうのか、ラムド!! お前の命など、俺次第でなんとでもできるのだぞ!!」


「……私は王国に忠誠を誓っております……。ですが、お嬢様の近衛騎士として、お嬢様が殺されそうになっている場面を見過ごすわけにはいきません……」


 ラムドが片膝をついて、皇太子殿下に忠誠の意を示す。


「なるほど、であれば、お前がその女の身代わりとなって殺されても構わないというのだな!」


「それで、お嬢様が助かるのであれば……」


「いい覚悟だ!!」


「ダメ!!!」


 私はとっさにラムドと皇太子殿下との間に割って入った。


「お嬢様!?」


 私のためにラムドが殺されるなんて、絶対にあってはならない!!

 

 ……とはいえ……


 目の前には私を殺そうとしている皇太子。

 私は恐怖で身体が固まってしまった。


「……お嬢様、無理をなさらないで下さい……。身体が震えているではありませんか……」


 怖くない、怖くない、怖くない。

 私は自分に必死に言い聞かせた。


「私はラムドに出会えて、本当に幸せだったの!! そんなあなたが目の前で殺されるなんて死んでもイヤなの!!」


 ラムドは命に代えても殺させない!!


「……お嬢様……。そこまで私のことを……。でしたら、私も覚悟を決めなければなりませんね……」


 ラムドが立ち上がる。


 ガシッ!


「え、え?!」


 そして、ラムドが私をお姫様抱っこした。


「皇太子殿下、申し訳ございません。先ほどの発言、撤回させていただきます。お嬢様も私も死ぬわけにはいかなくなりました」


「なっ!? ラムド!!」


 皇太子殿下が逆上して、ラムドに切りかかる。


 が。


 ドカッ!


 私を抱えながらも、余裕で剣を交わし、皇太子殿下を蹴り飛ばした。


「では、失礼させていただきます」


 ラムドは一礼をして、その場を立ち去った。


「ラムドーーーーーー!!」


 後ろから皇太子殿下の叫び声が聞こえたが、私達が振り返ることはなかった。


 ◇


「ここまで来れば大丈夫でしょう」


「……ありがとう、ラムド……」


 ラムドが馬から私を降ろしてくれた。

 城を出た後、私達は馬に相乗りして、急いで国境のはずれまで移動した。


「ハハハ、お嬢様のお陰で、とんだ目にあいましたよ」


 そう言いながらも、ラムドの顔は笑顔だった。

 

 ……あの推しのラムドが、私の目の前で笑っている……


 それだけで、私の顔は真っ赤になってしまった。


「本当に、ごめんなさい!!」


 私は助けてもらった感謝の気持ちも込めて、もう一度、深く頭を下げた。


「……頭を上げて下さい、お嬢様……」


「……でも、私のせいで、ラムドが……」


「……いえ、俺も嬉しかったんで……。カリア嬢がかばってくれて……」


 キターーーーーーーーーーーー!!!


 ラムドは好感度が上がると、一人称の呼び方が『俺』に変わるのだ。

 それに、お嬢様じゃなくて名前も呼んでくれた。


 よく見ると、ラムドは顔をそむけながらも、顔が赤面している。


 ツンデレイベントまで、キタこれ!!


 ……推しメンが目の前で私に赤面してるとか、もう死んでもいいや……


「……それで、これからどうしましょうか……」


「……もう、戻れないよね……」


 威勢よく出てきたのはいいが、戻ったら殺されてしまうに違いない。


「もし、カリア嬢が嫌でなければですが……」


「……ラムド?」


「俺と一緒に新たな地で暮らしませんか?」


 うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

 なにこれ、なにこれ!!


 夢?

 これは夢なのか?


 推しメンのラムドと一緒に暮らすなんて妄想するだけで鼻血が出そうになる。


「あ、嫌だったら、無理にとは言いません……」


「いえ、ぜひ、お願いします!!」


 私は、間髪入れずにそう答えた。


「……よかったー! 断られたらどうしようかと思っていました……」


 断るはずがない。


 ずっと、夢に見ていたのだ、もしラムドに本当に逢えたらって。

 もし一緒に暮らせたらって……


「これからも、よろしくね。ラムド」


「はい、よろしくお願いします。カリア嬢」


 私達は満面の笑みを浮かべながら、お互いを抱きしめた。



 こうして、乙女ゲームで推しメンだったラムドと私の新天地での新たな生活が始まった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!!


評価が多いと続きを書きたくなる気持ちになりやすいので、もし続きを書いて欲しいと思った方がいましたら、画面下の「☆☆☆☆☆」から評価をよろしくお願いします。

もちろんブックマークも嬉しいです!


感想も気軽に書いていただければと思います。


『乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私が、生き残るために必死に印象を良くする行動をしていたら、いつの間にかヒロインの代わりにモテモテになってしまっていたのだが ~プロローグ~』

というタイトルの別作品の短編も昨日投稿しましたので、よかったらそちらも読んでいただけると嬉しいです。

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