ご
天上のかたがた 視点
ああ、どこから間違えたのだろう。間違えたのは確かだ。だけど、私は常に最良の選択をしてきたはずなのに。確実に失敗を犯したことがないのかと問われれば、心当たりは一つ。大事に育てて、転生者とかに分け与えようと思ってとっておいた“奇跡”の力をばらまいてしまったこと。それが起きたのは、リュカが“奇跡”の入った壺をひっくり返したせい。
「悩んでも、今やったことをやり直せるわけではありませんよー。」
「時のに頼んで少し時を遡ってはどうですか?」
「あいつはさー、初期設定まで戻しちゃうんだよねー。前のだったら力が安定してたんだけど、まだまだ今代は若いからさー。」
後ろでは私の助手たち―眷属ともいう―が騒ぎ、それをリュカがたしなめている。ああ、せっかくここまで育てたのに。結構うまくいっていたのに。視界が曇った。どうやら目から汗が出ているようだ。
「あーあー、貴方がそんなこと言うから主様泣いちゃいましたよ。」
「泣いてない!ティエリ余計なこと言わないで!」
「泣くなよー創造神ー。また僕が一から手伝ってあげるからさー。」
「だから泣いてないってば!だいたいリュカがあの壺をひっくり返してしまったからこうも世界は変わってしまったのよ!」
そう言うと、リュカ―破壊神―は心外だというように肩をすくめてまた、この世界を捨てていくことを催促する。
「そんなに過ちを悔いるのであれば、また一から始めればいいじゃないか。僕らにはそれをできるだけの力がある。それに、創造神の世界を開拓する速度が遅いっていうのはこの前の会議でも問題になったばかりだろ。」
会議とは、色々なものを司る神達を数百年おきに集めて効率的な世界開拓を議論する場だ。そう、そこでは毎回私の開拓の速度が遅く、それが効率を低める要因の一端なのではないか、と言われている。そこでリュカは私を庇ってくれるが彼も私の低効率なやり方にやきもきしているのだろう。最近よく世界をある程度まで育てたら放棄することを進めてくる。
数千年前までは二人で一緒に世界の終焉を看取ってから新たなものを作っていたのに。
黙ってしまった私に見かねた彼は私の頭をよしよしと撫でて言う。
「僕の終焉の力が、強くなっている。一つ世界を看取るたびに。でも、創造神の創造の力はそのたびに弱まっている気がするんだ。」
「……それが続けば、世界の均衡が崩れてしまうわ。」
「そう。だから、なるべく終焉を避けよう。世界の終焉には、僕らの均衡を崩す何者かがいる。」
でも、逃げてばかりでは、今後への支障は計り知れないだろう。
「今回の世界の終焉で、その要因を見つければいいのね。そうすれば、私たちはまた、二人で世界を見守ることができるのね。」
「まあ、世界開拓の速度の問題は解決できないけど。」
彼のため息が耳につく。この世界の終焉を過ぎれば均衡の問題は解決し、会議で私が責められれば彼はまた私を庇おうとするだろう。
何も、返せない。こんなに、私の面倒を見てくれる彼に。そんな思いからそっと、零れることば。
「……ごめんね。」