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「私があなたにオクスリを渡した時に伝えた事は覚えているかしら?」
「確か痛覚を麻痺させて痛みを感じ無くさせる薬って僕に言ったよね、オマケがどうとかって言って」
「そうね、正解。今あなたが便器になっていると言う現状は、そのオマケの効能が見事に発揮したからなの」
「どう言う事なの、それ」
「オマケの効能……それは1度死んだ人間を別の何かに生まれ変わらせる事。いわゆる転生というやつね」
「いや、非現実的すぎるでしょ!?ってか転生って言ったら大抵は、転生後の世界で強いヒーローになれたり、可愛い女の子が沢山現れてハーレムを作れるくらいモテるのが一般的でしょ!便器に転生とか前代未聞だし、この状況を望む人なんか絶対いない!なんなら死ぬ前の方がよっぽどマシじゃないか!!」
「あら?毎日の様に裏若き乙女達のお尻が見れるなんて、ハーレムそのものじゃないかしら?」
「本気で言ってるの……それ」
「ふふふ」
璃流は口元に手を当てて笑った。
彼女は作り笑いをする事が多いが、この時は純粋に笑っている様だった。
「まぁ、ハーレムとかは冗談として、あなたに渡したオクスリが原因でこの状態になったと言う事は事実よ。成功する事自体初めてだったけど」
「初めて……?僕以外にこの薬を飲んだ人が居るの?」
「居るわ。あなたが3人目」
「3人目……他の人達はどうなったの?」
「みんな失敗したわ……生まれ変わる事も無くあの世行きよ」
そう言う璃流はどこか寂しそうな顔をしていた。
「その人達はどんな人達で、なんで薬を飲んだの?僕と一緒で自殺しようとしてたの?」
「あなたが知る必要ないわ」
「なんだよそれ……じゃあ何であの薬を僕に渡したか説明してくれ」
「渡した理由ね……そうね、単純にあなたが自殺をする可能性があるって分かったからかしらね」
「えっ!?それだけの理由であの薬を僕に渡して、こんな姿に変えたのか?」
「そうよ。あのオクスリの転生するという効果を確認する為には死ぬ事が必須だから、今後死ぬ予定のある人間に使うのがベストじゃないかしら?」
「それはそうかもしれないけど……」
便器になった透を目の前にして、璃流は彼の疑問に淡々と答えていった。彼が便器となってしまっている以上、顔色を窺う事は出来ず声色からしか感情を読み取る事が出来ない事が、彼はまだ腑に落ちず不満そううだった。
透は質問を続ける。
「なんで便器なの?ってかそもそも転生出来る薬ってだけでも信じ難いのに、何に転生出来るか決められる薬とかどうやって開発したの?」
「そうね……1つずつ答えましょう。まず何故便器かと言うと、それは私の実家が有名トイレメーカーだからよ。それだけの理由。2つ目の質問のどうやって開発されたかは私も詳しくは分からないわ。私はこのオクスリを知人から譲り受けただけで現場の事は知らないわ。それに最初に開発に着手し始めた人間は、すでにこの世には居なくて本人に聞く事も出来ない。だからどの様な意図があって開発したのかも不明。今はもう残された配合量等の資料を参考に生産していくしかないわ」
「有名トイレメーカーだからって……それだけの理由!?薬を貰っただけで開発に関わってないと言う事は、理玖詩さんはこの薬については痛みを抑える事と、転生させる効能があるという事しか知らないって事?」
「残念だけどその通りよ。私が知っている情報はそれだけ」
「よくそれで、何でも知ってて答えられますみたいな態度で喋れてたね……」
「そう見えてたのならば、ごめんなさい。謝るわ」
璃流は便器から視線をそらし腕組みをやめた。
その後、ふぅと軽く息を吐いた。
「さてと……質問タイムはこのくらいで良いかしら?そろそろ私からも色々と知りたい事が沢山あるの、なにせ初めての成功例だからね。」
「うーん、僕としてはまだ知りたい事はたくさんあるけど、さっき言った事以外分からないならしょうがないか……」
「本当にごめんなさい、もし他の情報が分かったらすぐに伝えるわ」
「そうして貰えるとありがたいかな。ところで知りたい事って何だろう?僕も分からない事だらけだから、色々と今の自分の事を知りたいかも」
「そうね、まずは便器になったあなたの体について知りたいわね」
璃流はそう言うと便器の横に移動し、ウォッシュレットの本体操作部のおしりボタンを押した。
水勢は中だ。
ボタンを押すとピーという音と共に、便器内のノズル部分から水の様なものが放水された。
「結構勢い良く出ているわね。ねぇ須賀くん、今どんな風に体は感じてるかしら?」
「そうだね、普通におしっこしてるみたいだよ」
「おしっこ……なるほど。と言う事は、今のあなたの状態におけるノズル部分は、泌尿器と捉えて良さそうね」
「なんかやだなぁ、それ」
「ちょっと試しに水勢強くしてみましょうか」
理瑠は操作部の水勢を強にしておしりボタンを押した。
「ん?なにこれ?なんかすごいノズルがムズムズしてきた」
「アぁーーーーーーーーーー!!!!!!」
透の絶叫と共にノズルからすさまじい勢いで水が発射された。勢い良く発射された水は個室内の扉に穴を開ける程の威力だった。
璃流はその威力を目の当たりにして、呆気に取られていた。
「素晴らしいわ……まさかここまでとは」
「こんなの僕もびっくりだよ……」
璃流は何か閃いた様で、制服の内側のポケットに手を突っ込んだ。
「今のあなたのノズル部分が泌尿器として動作しているなら、これも試してみる価値があるわね」
璃流は制服の内ポケットからスマホを取り出し操作し始めた。
少しして操作をする指が止まり彼女は呟いた。
「このサイトなら大丈夫そうね……」
そう彼女は呟きスマホ操作を止めて、目の機能があると思われる便器の内側に向けてスマホ画面を見せた。
「え?これエロ動画じゃん」
「そうよ。今からあなたにはこのエロ動画を見てもらいます」
「いやいや、何でそうなるの!?君が何をしたいのか僕には全然分からない、意味不明だよ!」
「私は少しでも多く今のあなたの事が知りたいの。あなたが人として生きていた時はどうでも良かったけど、便器として転生したあなたには凄く興味があって色々な事が知りたいの、だから協力して欲しい」
「便器の僕の方が興味あるとかサラッと酷い事言うなぁ、それも真顔で」
「本当の事だからしょうがないじゃない」
「うっ……それでなんでエロ動画なの」
「私考えたの。便器になったあなたのウォッシュレットのノズル部分が、泌尿器の様な役割を果たしているならば、もしかしたら水以外の物も出る可能性があるのではないかと……」
「は??正気?つまり僕に性的興奮を与えたら精液が出るか検証したいって事?」
「そうよ」
璃流はスマホに映る動画の再生ボタンを押した。再生された作品は素人ナンパ物のエロ動画だった。
「なんで素人ナンパ物のエロ動画なの?」
「そうね……あなた結局死ぬまで素人を抱いてないだろうし、ナンパとは無縁の人間でしょうから憧れがあると思って」
「ず……随分酷い決めつけだなぁ、まぁあながち間違ってはいないけど……」
若干動揺している様な声色で透は言った。
そんな中、璃流の指は動画のシークバーを後半にズラそうとしていた。
「ストーップ!!素人ナンパ物は冒頭のナンパをする所から性行為が始まっていると言って良いくらい重要なんだ、いわばナンパは愛撫。それを飛ばそうとするのは僕は許さないぞ!!後半のフィニッシュだけ見せれば男が興奮すると思ったら大間違いだよ!!」
室内に響き渡る大きさで透の声は発せられた。
「気持ち悪いわね……」
璃流はポツリと呟き、あからさまにドン引きした表情になっていた。
透の要望通り動画を後半まで早送りする事を止めて、冒頭にシークバーを戻し動画を流し始めた。
動画の冒頭で男優が街中を歩いている綺麗な女性に声をかけた時だった。
「ん?なんか凄くノズル部分がムズムズしてきたかも」
「どう、出そう?」
「いや、ムズムズするだけでまだ無理かも」
「ならもう少し動画を見てみましょうか」
2人はまた動画に意識を寄せる。静寂に包まれたトイレ内にスマホから流れる音が響き渡っていた。
そして動画が進み男優が声をかけた女性をホテルに連れ込むことに成功したその時だった。
「あ、ごめんヤバイ……イキそう。便器じゃなかったらイってる……」
「え?このタイミングでなの?流石に早くないかしら?」
「ごめん……もう無理」
「嘘でしょ?まだ行為にすら入ってないのよ!?」
あまりにも早い絶頂を迎えそうな透に璃流は驚いていた。
動画を流し始め、未だ何も性的行為が行われていないこの状況で、何が彼を性的に興奮させたのだろうか?
驚く璃流を全く気にせずに透は絶叫する。
「ごっめーん!!むりむり、ダメダメダメー!イキそう、あぁぁ、んぁぁぁーーーー!!!」
その台詞と共に便器のノズル部分から勢い良く白濁した液体が飛び出てきた。
白濁色の液体は勢い良く璃流の目の前で発射され、宙に舞った後に便器内の水面に落ちて行った。
透にとって人前で性的絶頂をして果てるのは、人間・便器どちらの姿にしても初めてであった。