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安らぎの場所 〜便所〜

 私立マグミット学園。


 広大な敷地にそびえ立つ洋風の校舎が異国の城の様に見え目立ち、敷地外の周辺には多くの飲食店や呉服店等が並び、買い物や放課後の友人達との交遊をするには何不自由なく過ごせる環境だ。

 その偏差値の高さと各界で活躍する多くの著名人を排出している実績があることで全国的に有名で、地元に住む学生以外の中学生も受験するケースもある。

 また学費が高い事もあり、勉学で推薦入学した生徒の家庭以外は、基本的に裕福な家庭環境で生活する生徒が多い。

 学費が高い分、生徒が伸び伸びと学園生活を送れる環境と、約束された将来の成功がこの学園にあり、自分の子供にこの学園に入学させようと英才教育をする親も少なくない。

 

 そんな誰しもが入学を目指すこの学園で、便学に励む一人の少年の悲劇の物語は始まる。




 肌寒い時期が過ぎ、日が落ちるまでの時間も長くなり桜の花が咲き始めた。

 新たな学園生活に期待を募らせた新入生達が入園して少し経った頃、校舎内の便所の個室に籠る小柄な少年がいた。


『ブリブリブー……ブチチチィィ……ブブブブバブバブブーッ!!』


 隣の個室から聞こえる勢い良い脱糞音と、徐々に香ってくる大便の臭いに吐き気を催しながらも、小柄な少年は膝の上に置かれた弁当を食べ進めていた。

 膝の上に置かれた弁当は、弁当を包むナプキンごと水が滴り、中の食材も水浸しになっていた。


 彼の名は須賀 透(すが とおる)。この学園に入学して2度目の春を迎える学生だ。

 学生なら昼食は気の合う友達と食べたりするのが一般的だが、彼にはその様に一緒に食事を取れる間柄の人間は居なかった。

 今日も何者かによって水浸しにされた弁当を完食し、午後の授業が始まる寸前まで、この便所の個室で時を過ごすことになる。それが彼の日常だ。




 午後の授業が始まる5分前になり、透は授業の為に便所の個室から出ようと扉を少し開けたその時、入り口の鏡越しに数人のシルエットが映し出され、聞き覚えのある声が聞こえてきたので、慌てて個室に戻る。

 便所の扉が開かれ柄の悪い三人が喋りだす。


「いやーマジで午後の授業ダリィわ、バックれちまおうかな」

「それ賛成。けどさ今日放課後ゲーセン行くじゃん?けど、まだウンコ野郎から今日行くゲーセン代もらってねぇじゃん」

「それな!!あいつ()()()()を俺らに出す事しかできねぇゴミだからなww」

 

 そう言うと三人組の二人が小便器の前に立ち、残りの一人が透の隣の個室に入り、小便をしてる大柄な男が己の逸物を掴み笑いながら言う。


「おいおい敦士ィ〜〜!お前ウンコすんの?学校でウンコするとかお前、スカトロ透と同類じゃんww」

 

 小便をする大柄な学生に敦士と呼ばれた少年は個室から言葉を返す。


「おいおい、日頃俺らに金をくれる須田君をスカトロ野郎呼ばわりはダメでしょうよぉ。まあウンコみたいなヤツに間違いはないけど」


 敦士は笑いながらそう言うと軽快に脱糞を始める。

 彼の脱糞がはじまると、先ほどまで喋ってなかったもう片方の少年が口を開く。


「そもそも学校でウンコ漏らす奴が異常でキモいんだよな!まぁ透からは卒業するまでずっと金出させるけど。あいつウンコ漏らしたからこの学園内で人権ねぇからな!ウンコ以下の下痢ウンコだしな!!」

 

 三人組はその台詞がよっぽど面白かった様で大笑いをして、敦士は笑い声に合わせ放屁と脱糞を繰り返していた。


 三人組は各々の排出行為が終わり帰って行った。

 透は彼らが便所から出た気配を感じ取り、今まで隠れていた便所の個室からゆっくりと出た。

 この世の終わりかのように浮かない顔をし、臭い匂いを我慢しながら完食した弁当を持ち、彼はこの唯一心が安らげる便所の個室に別れを告げて教室へ向かう。




 この物語の主人公となる彼は、1年生の時にウンコを漏らし、教室内をクソまみれにした事で全てを失い、虐められるようになった悲劇の少年なのであった……

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