9 お背中お流しします展開だと!?
定番イベント
「はぁ・・・本当に激動の1日だった」
久しぶりに湯船に浸かると思わずそう呟いてしまう。最近はシャワーばかりだったので入浴剤入りの湯船にゆっくり浸かるのなんて久しぶりで心地よい。
しかし本当に1日の濃度が濃すぎた。ここ何年も同じような生活を送っているとそう思ってしまう。美少女になった教え子に結婚を迫れて、一夜を共にしてから婚姻届を出して夫婦になって、ご両親に挨拶をしてから引っ越しをすぐに終わらせて、家族まで懐柔されていて、久しぶりに温かなご飯を食べてのんびり風呂に入る。
「世の中わからないものだ・・・」
過去のトラウマで恋愛を無意識に避けていた自分の行動とはとても思えない。トラウマか・・・
「やっぱり全部知られてるんだよなぁ・・・」
どうやったのかわからないが、過去のことは全て調べられているようなので少しだけ気まずくなる。俺は玲奈ちゃんのことを教え子の頃のことしかしらないのに相手は自分の全てを知っている。良いところも悪いところもだ。
「まあ、玲奈ちゃん可愛いし、いい子だし、意外と尽くしてくれるし、凄く好みだけど・・・」
「だけど?」
「これで結婚詐欺とかだったら本気で泣けるよなぁ。まあ、ないとは思うけど」
あれだけお金持ちなんだしそんなことはないとは思うけど変な壺とか怪しい宗教とかだったらガチで泣けてくる。まあ、ないとは思うけどね。ん?なんか今の独り言に相づちがあったような気がするぞ?あれ?そうしてギギギっと視線を向けるとそこには一糸纏わぬ姿の玲奈ちゃんが立っていた。玲奈ちゃんは笑顔だったけど少しだけ闇を感じさせる瞳を向けてから言った。
「まだ、先生には私の愛が伝わってないようですのでこれから頑張りますね」
「あ、はい。あの、それで何故ここに?」
「一緒にお風呂に入りたかったからです」
「そ、そうですか」
嬉しいけど理解が追い付かなかった。いや、この年までまともに恋愛したことないからわからないけど、これが普通なの?TPOとか大丈夫?いや、夫婦だし間違っちゃいないけど・・・
「先生、こちらに」
「え、あ、はい」
言われるままに湯船から出て風呂用の椅子に座ると背中から何やら柔らかい感触がした。一部を除いて柔らかいそれが胸を押し付けていると理解したので俺は思わず聞いていた。
「あの、胸が・・・」
「はい。あててます」
な、なんだと!?これが伝説の当ててんのよ!ってやつか。リアルで体験することになるとは思わなかった。しかし女性の胸って凄いんだなぁ・・・俺はおっぱい星人ではないけど、この柔らかいものには屈しそうになる。
「ふふ、昨夜も思いましたけど先生ってやっぱり筋肉質ですね。」
「そ、そうですかい」
語尾がおかしくなったが俺は落ち着いてられなかった。やっぱり俺は大きな過ちを犯してしまったのか・・・
「あ、あの・・・昨夜、俺は玲奈ちゃんの初めてを、その・・・」
「はい。美味しく頂かれました」
「そ、そうなんだ」
「凄く激しかったです。でも痛みより先生と繋がったことが嬉しかったですから」
俺ってやつは・・・なんで昨夜のことを覚えてないんだ!?凄く貴重なものを録り逃したようなものだ。
「あ、ビデオありますけど後で見ますか?」
「・・・あるの?」
「ええ。貴重な記録ですから」
あまりの用意周到さに思わず唖然とする俺に構わずに玲奈ちゃんは俺の背中を流すのだった。