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1 同窓会でまさかの再プロポーズ!?

逆でも良かったけど、とりあえず形にしてみました。甘いやつです。



「せ、先生好きです!結婚してください!」


その女の子に最初にプロポーズされたのは彼女が小学生、俺が21才の頃だった。最短で教員免許を取ってから初めて受け持ったクラス担任。色々四苦八苦しながらもなんとか生徒を導けたと思ったらそんなことまで言ってくれる子もいたものだ。名前は確か、九条玲奈(くじょうれいな)ちゃんだったかな?


黒髪で美少女でお金持ちみたいだったけど、最初に会った時は周囲から浮いており、受け持って数日で俺はその子がいじめられていることを知った。


色々と考えてから、昔俺もいじめられていたことを思い出して、話をしてみることにしたが、最初はなかなか仲良くなれそうになかった。それでもめげずに接して話せるようになってから彼女からいじめのことを切り出されてどうしたらいいのかと涙ながらに聞かれた。


家族には迷惑をかけたくないし、でも誰も仲良くしてくれないと言われてから俺はこの子の力になりたいと心底思った。そこからは色々あった。いじめの解決に道徳心の教育、教員との対立にモンペさん達との大立回り。教師とはこれほど大変なのかと自分の保身や立ち位置などを危うくしても子供達の先生として一生懸命にやって、なんとかそれを結果にできた。


が、やり過ぎた結果俺は別の学校に移ることになり、その時にお別れ会をささやかにやってくれたあとにそんなことを彼女から言われたのだ。もちろん俺はロリコンではないので、そんな子供からの告白を大人らしく誤魔化すことした。


「大きくなって、それでも気持ちが変わらなかったら結婚してあげるよ」


軽い気持ちだった。だって小学生の頃の先生にいつまでも想いを抱いていられるほどに学生の年月は短くないのだから。大人になれば初恋なんてすぐに忘れるだろうと思った。


翌年から彼女からよく年賀状や手紙がくるようになった。いつ頃からか、携帯を持ったのかアドレスなどを聞かれてやり取りをすることもあった。まあ、恩師という立ち位置に少なからず嬉しかったのと、俺のやり方だとどうにも周りとは確実に壁を作りやすくなってしまうので参考にしたかったのだ。現代の学校というのはわりと保身的なところが多いので、どうしてもいじめの事実を公表したくない上司が多いようだ。


ま、それでも絶対に放ってはおけなかったけどね。


そうして何年も時が経ち彼女のことも思い出となっていた頃にその連絡はあった。その当時のクラスの子供達が企画した同窓会に俺も呼ばれたのだが、高校を卒業した子供達はそれぞれ大学や専門学校、あるいは就職と明るい未来に向かっているようでほっとしていると、それは起こった。


「先生、お久しぶりです」

「久しぶり・・・もしかして玲奈ちゃん?」

「はい。そうです」


高校を卒業した彼女は俺が思っていた以上に美人に成長していた。きっとこの様子なら格好いい彼氏も出来たのだろうと少しだけ寂しい気持ちになっていると彼女は笑顔で言った。


「先生、約束は覚えてますか?」

「約束?もしかしてあのことかな?」


今一つどれのことだか分からずにそう誤魔化すと彼女は微笑んで言った。


「はい。約束通り、私を先生のお嫁さんにしてください」


ピタリと空気が止まった。誰もが驚く中、俺はその言葉の意味が一瞬飲み込めずに首を傾げてしまう。


「・・・じょ、冗談だよね?先生をからかうのはダメだぞ?」

「いいえ、本気ですよ。私が何年先生のことを想っていたのかわかりますか?高校を卒業してようやく想いを叶えることができます。なのでひとまずこれにサインをください」


そう言いながら出したのは婚姻届。そこにはすでに彼女の名前が記されており。なんと彼女の両親と俺の両親のサインもあった。


「あれ、いつの間にか外堀埋められてる!?」

「ええ、先生に彼女がいないことも把握してます。先生は約束を破る人ではありませんよね?」

「ぐっ・・・で、でも本当に俺でいいの?ほら、先生としての俺しか玲奈ちゃんは知らないよね?」

「いいえ、全部調べました。それにここ最近の先生のことも把握してます。先生また、私を助けた時みたいにやってるから煙たがられてるって」


あかん。もしかして俺のことは全て筒抜けなのか?考えたくはないがお金持ちだし何かしらの手段で情報を入手したのだろう。しかしそれにしてもここまで女の子に迫られたことはないので正直かなりぐらつくが、少しだけ胸の奥にある刺が邪魔をして頷くことを躊躇わせていた。


『ぷぷ、お笑いね。あんたなんかと付き合う馬鹿いるわけないじゃん』


学生時代のトラウマがフラッシュバッグする。彼女だと思っていたら、からかわれていただけでしかも散々お金を巻き上げられた。まさに苦い思い出に黙り混むと彼女は俺の頬に手をあてて優しく言った。


「大丈夫です。私は先生のこと心から大好きですから。だから・・・先生、私と結婚してください。ほらここにサインを」


物凄く怪しいはずの言葉に逆らえずに俺はそのまま婚姻届にサインをすることになった。しばらくして正気に戻ると嬉しそうに微笑む彼女の姿があり、彼女は笑って言った。


「これを提出したら本当に夫婦になれます。楽しみですね」


周りの生徒ですら冷やかすようなことはせずに、むしろ彼女を昔いじめていた子達は己の手を出した相手にかなり震えてしまっているようだったが、この時の俺はこのあまりにも突然の状況に処理が追いつかなかったのだった。



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