東京神
ぶぶぶっ。ぶぶぶっ。ぶぶぶっ。
さすがに悪いと思ってかけ直してきた。それくらいの常識はあるようだ。
そりゃそうだ。自分のせいで人間一人が死んでしまっていて、元に戻すためにも酒なんて飲んでる場合ではないだろう。
そう思いながら電話に出ると、聞いたこと無い声が受話口から聞こえてくる。アイツが無邪気な幼女の声と言うのであれば、今聞こえてくる声はおっとりとした声。イメージは、たゆんたゆんだ。
俺の記憶が確かならば都道府県で一番のたゆんたゆんは、岐阜と京都だ。まぁ、あくまで平均だし神様には適用されないのだろう。
『この度は、茨城神がご迷惑をかけすみません』
周りの喧騒もなくなり、たゆんたゆんの謝罪の声が聞こえてくる。
「えっと。どちら様でしょうか?」
『⋯⋯どちら様? そうですね、神様でございます!』
―――ピッ。
俺は間違った事をしたのだろうか? いや、そんなことはない。どちら様と聞いて、神様と答えて来るやつにろくなやつはいない。
学生時代にイタズラで知らない番後からかけてきて、同じ事を言ってた奴がいたが元気だろうか? 今はもう名前も顔も思い出すことは出来ないが⋯⋯
ぶぶぶっ。ぶぶぶっ。ぶぶぶっ。
ディスプレイには【茨城神】――――
はぁ⋯⋯今度はなんだよ。
「はい」
『なんでお切りになってしまうのですか? ゆっくりお話しを思い、居酒屋からテレポートで天界へ戻ってきたというのに⋯⋯』
まさか本物の神様なのか?
「もしかして貴方も神様なんですか?」
『はい、申し遅れましたが東京神でございます』
マジモンのやつなのか。たゆんたゆんなのに? テレポートとか言ってるし。というか、茨城神がいるならほかの都道府県の神様もいるよな。
「なるほど、ちなみに瞬間移動と言ってましたが、居酒屋でお金払いました?」
⋯⋯⋯ピッ。
なるほどな。口調とか関係なしに、まともな神様は居ないんだ⋯⋯。日本は大丈夫なのか?
ってか、よくよく考えてみれば、ちょっと前まで東京都民だった俺からしたら、無銭飲食するたゆんたゆんが神様だったのかよ⋯⋯
きっと帰れる! だからそれまで頑張ろう! もう、自分に向かって自分で言い続けないとダメになってしまいそうだ。
と、思っていたが無理なような気がしてならない。茨城永住の可能性も考えなければならないのだろうか?
山や森や海の自然に囲まれた生活。毎日見えるお胸のようなお山を眺める生活。空港はあるが、茨城から出れないから意味はない。霞ヶ浦で何も考えずに魚釣り⋯⋯。
考えはまとまらない。いや。正確にはまとめさせてくれない。という方が正解かもしれない。だってまだこっちにきて日が浅いんだ⋯⋯。
はぁ~、今のところ俺の周りには上田さん以外、まともな人がいないぞ。いや、真っ先に俺を騙してきたのが上田さんだから、俺の周りには誰もいないかもしれないな。




