大切な事は先に言えと上司には習ったけど
「⋯⋯あっと、えー、⋯⋯ん? どゆこと?」
今まで色々と助けてくれていた人が急に手の平を返すその考えはなんだ?
『電話で言うのも失礼でございますよね⋯⋯今からそちらにテレポートしてもよろしいでしょうか?』
「あ、あぁ。今は車に乗ってるから助手席にテレポートしてもらえれば⋯⋯」
そう言うと、仄かな光が発光し助手席にたゆんたゆんが現れた。
たゆんたゆんの現れた姿を見て、壁に向かって前から車を停めておいて良かったと心底思う。ケツから車を停めていたら外から見た人には怪奇現象に写ったことだろうな⋯⋯。
茨城にも笠トンなど、有名な怪奇現象スポットはあるが、ここの駐車場は間違いなくそういう場所じゃない。変な噂が流れたらお店は大変だろう。
「⋯⋯ちゃんと説明してくれるんだろ?」
「⋯⋯はい。ちなみに赤城さんはどうして、転生出来たか詳しくは聞かれましたか?」
「怒られたからとしか聞いていないよ」
アイツの事だ、むしろそれ以外に何か理由があるとは思えない。あんないい加減な奴だしなもっともらしい言い訳をしてきたらイラってきちゃうぞ。
「はぁ~⋯⋯だと思いました。あの子は昔からそうでしたしね。ありがとうございます。これで今までの事がクリアになりました」
深々とお礼をするたゆんたゆんは、今日は外だからか、Tシャツに柄物のシャツを羽織っており、頭を下げても筑波山を拝むことは出来なかった。
「赤城さんのあの子に対する態度も、当初の話しとは、言ってることとやってることが違う事から、怒りの現れだと最初は思っていました。しかし、赤城さんと話すうちに疑問がわいてきたのです。赤城さんはそんな酷い人間には思えませんでしたから」
「ごめん、言いたいことが見えてこないぞ」
アイツが言っていることの殆どがいい加減なのはかわりないし、自分で言うのもなんだが、それに対しての態度も間違いは無い。たゆんたゆんは何が言いたいんだ。
「あっ、すみません。聞き方が違いましたね。赤城さんは、どうやって転生したかご存知でしたか?」
⋯⋯ッ!
そんなこと考えたことも無かった。人知を越えた現象を考えるなんてしないだろう。
「そこを一番話さなければならない所でございましたね」
今までうつむき加減で話していたたゆんたゆんが、俺の目をキリッと見つめ姿勢をただす。
「赤城さんは元の魂に、神の命を! 力を! 能力を! あの子が持っていた半分以上を分け与えられ転生したのです。」
「⋯⋯はっ?」
「神の加護以上のものを、魂に直接施されている為、赤城さんは悪魔の攻撃を受けてもそう簡単には死にませんし、超スキルも使えるのです。⋯⋯そのどちらも、元々はあの子の物なのです」
「ち、ちょっ⋯⋯、ちょっと待ってくれ! じゃあ何か。俺が今ここにいるのはアイツが自分の力を半分以上くれたからってことなのか? だからアイツはポンコツって事なのか?」
んな話し、片鱗すら今まで言ってきてねーじゃんかよ。俺のせいか⋯⋯。いや、元々はアイツのせいか⋯⋯。
「えっ? あ~、赤塚さんが感じている言動は昔からでして⋯⋯。で、でも! それ以外はそうなのです! その為あの子は神の加護を出来ませんし、掌サイズの悪魔にも殺されてしまうほどに弱くなっています」
「そこはそうなのか⋯⋯。ってか、それなら俺がさっさと後一体を倒せば、晴れて茨城から出れるしアイツから切り離されるから、良いんじゃないのか?」
たゆんたゆんは、俺の言葉を聞くと再びうつむき始めた。え、俺間違ってたの?
「⋯⋯。確かに切り離しが成功します。しかし、そうなれば赤城さんに与えられた力は、二度とあの子に戻ることはありません⋯⋯」
全然わからない。頭が落ち着かないし整理が出来ない。
そんな状況の俺に気づいたたゆんたゆんは、気持ちを固めゆっくりと話し始める。
「いいですか。今回のイレギュラーな事はあの子だから出来た事でした。私は赤城さんが全てを知る権利があると思います。後から知ることも出来るでしょう。しかしそれはよくないと思うのです」
「まぁ、そうだな。アイツはちゃんと喋らないし、後から知らされるのもなんか嫌だな。⋯⋯わかった。話してくれ」
何も知らないくせに、人の事をポンコツ、ポンコツと言うのは決して良くはない。まずはアイツのことを知りたいと思う。
「赤城さんならそう言ってくれると信じておりました。ここで話すのは違いますので、あの子を交えて話しましょう。私は一足先にテレポートとして、あの子に伝えておきます」
「あぁ、わかった」
そこで会話を終え、スッとたゆんたゆんは消え、俺はモヤモヤした気持ちのまま自宅に向かって車を走らせた――――




