茨城ローカルルールって覚えること多くない?
「⋯⋯送ってもらった?」
次第に意識がハッキリとしてきた。ならばまずは現状把握が最優先だろう。
「そ~なの。一校セブンの駐車場でポテチ食べてたら声を掛けられて、送ってもらったのよ」
「⋯⋯イチコーセブン? なんだそれは?」
駐車場と言うくらいだから、どこかのお店なんだろう。
でもそんなお店はこっちに来てから聞いたこと無いな。ってか、なんでコイツは、駐車場なんかでポテチ食ってるんだよ。
「赤城さんは東京から来てるからわっかんないよね。下館一高の前にあるセブンの略語だよ」
「へ~、そうなんですね」
あれ、上田さん訛ってない? いつもと違うような気がするけど。
「茨城って、待ち合わせの目印が殆ど無いでしょー。だからコンビニで待ち合わせするのが基本なんね。それぞれのコンビニに呼び名があんのよ」
「なるほど。って、いやいやいや!
教えてもらったのはありがたいんですが、俺が聞きたいのはそこじゃないんですよ。なんで上田さんがコイツを送ってきたかって事ですよ」
始めての情報で素直に聞き入ってしまったが、そうでは無いだろう。
仕事中とは違う上田さんの訛りも気になるが、それよりなにより二人は友達か、友達なのか?
「いやだって、もう夜の九時。そんな時間に駐車場で座ってポテチ食べる子いたら声かけるでしょうよ?
そしたら家まで結構あるってわかったから、歩きじゃくたびれっちゃうから送ってきたのよ」
茨城弁は、最初と最後を上げるイントネーションが基本らしいが、言葉によってはイントネーションが存在しないものもある。
【いやだって】も、【嫌だよ】という意味と【だって】という言葉に意味なく付けて使う場合だ。イントネーションが同じなので、今回は多分後者だろう。その場の雰囲気や、前後の言葉で判断しなれば誤解してしまう。
ちなみに、【雨と飴】、【雲と蜘蛛】、【酒と鮭】などもイントネーションが一緒なので最初はこんがらがっていた。
「赤城さんアメ好き?」と聞かれて「濡れるので好きじゃないですね」と答えたら「はっ?」と変な顔をされたのは記憶に新しい。
「それはわざわざすみません。ありがとうございます」
「にしても、赤城さんってこんなカワイイいとこがいたんだね。あだ名がいばちゃんっていうのはチョット変わってるちゃ変わってるけどもさ」
⋯⋯おい。いばちゃんはねーだろ。偽名ぐらい用意しておけよ。しかも、いとことはどーいうつもりだ。と、コイツの方に視線を送ると、顔を真っ赤にしてうつむいていた。
なにやだカワイイ!
「ま、まぁ。ちょっと変わってるやつですからね。ははっ⋯⋯」
「それはそうと、もう筋肉痛はダイジなの?」
あぁ、そう言えば情報量が多すぎて忘れていたけど、当日欠勤したんだった。
休んだで迷惑をかけたその日に、直接迷惑をかけた人に会うほど気まずいものはない⋯⋯。変な汗が流れるのを感じる。
「あ、はい。おかげさまで。本日は本当にすみませんでした」
頭を深々と下げて謝罪した。
「いや暇だったらそんな謝んなくったっていいよー。じゃあ動けるようになったって言うんならご飯でもご馳走してもらおっかな」
無垢なる笑顔でそう言ってくる上田さん。
嘘だろ⋯⋯。
コイツといとこの件や、いばちゃんの件も擦り合わせていないのに、アドリブでこれからどうにかしなければならないのか?
悪夢はまだ続くのか⋯⋯。




