栃木県のスター
はぁ~、とため息をこぼしながらトボトボとお風呂場から戻ってきたたゆんたゆん。残念ながら風呂から出すことは出来なかった様子。ドンマイとしか言いようがない。
「ドンマイ。やっぱり無理だったか?」
ここでイケてるメンズなら、白い歯を出しながら肩でも叩くのだろうが俺には無理だ。きっと目線は悲しげな瞳を捉えることはできずに、もっと下の方へと向けてしまうだろうしな。
「いえ、今のいばちゃんには仕方ないのかもしれませんし。気を取り直して三人で行くことにしましょう! 群馬神はテレポートお願いしますね」
《今の》と言うか、アイツはずっと駄目だろうよ。と思うと同時になんでアイツが神様になれたかが非常に気になるところではある。
魅力度ランキング万年最下位だとしても、ましな候補者は絶対にいただろうに⋯⋯。
「では私に捕まってください。いきますよ」
と、群馬神に言われるがまま、腕を掴みテレポートを開始する。あ、やべ⋯⋯今回も靴を履いてくるの忘れたわ。
***
「着きました。前方10m先に悪魔がいます。私は何も出来ませんが、宜しくお願い致します!」
清々しいほどの他人任せの発言を、よくもまあそんなに堂々と言えたのだと感心してしまう。この人⋯⋯いや、コイツもダメな奴かもしれないと思うしかないレベルである。
「赤城さん、悪魔のサイズが3mともなると、この距離ですら私達の存在には気づいているはずでございます。不意打ちは効かないと思ってください」
ならどうしろと? なにか良い案があるのかと神様二人に目を向けるが、二人してガッツポーズをするだけである。駄目だコイツら⋯⋯
ちなみにガッツポーズとは栃木県が代表するスター。ガッツ石松が考案したポーズである。⋯⋯ok牧場、やってやるよ!
足元に気を付けながら、青々と生い茂る木々の中を先頭きって歩き、俺のすぐ後ろを神々が歩く。夕日に照らされた森の木々はなんとも美しいのだろうと思いながら歩くこと5mほど。少し開けた場所に着き、真ん中でこちらを威嚇する悪魔と目が合う。まだ5mもあれば攻撃まではしてこないのだろうと、一安心をしたのもつかのま、全身に激痛が走る。
「いぎぎぎっ!」
なんだ、なんだよ。全身がビリビリがする。
「いぎぎぎっっ!」
再度、全身がビリビリする。ちょっと待てよ。
「いぎぎぎっ! あ~もう!」
たまらず地面を転がり回る。今までに経験のしたことの無い激痛がすでに三度やってくる。さらに転がり回った為に地面に落ちている枝や小石に体が擦れてまさに二次災害だ。
「赤城さん! こちらです! 一度こちらに!」
神様二人に引っ張られ、広場から退散する。マジで説明を頼む。たゆんたゆんから治癒を受けながら、何が起きたのかの説明を求める。
「おい! いったい何が起きたんだよ。めっちゃビリビリしたぞ」
「あれは悪魔のなかでも強い悪魔が使える電撃でございます。3mを越える悪魔であれば使えるものも珍しくありません」
「先に言えよ!」
たゆんたゆんはさも当たり前のように、平然とした顔で喋る。やられた俺の身にもなってほしい。治癒のお陰で痛みは無くなってきたが、あれどうしろって言うんだ。
「あんなのくらったらまともに動けねーぞ。どう考えたって無理だろ?」
「いえそんなことは無いですよ。赤城さんはスキルあるんですね? なら電撃にやられる前にスキルを使ってら良いと思いますけど」
「だから先に言えよ! お前んところの悪魔だろ。情報と攻略法は先に言え!」
コイツらマジで無能すぎやしないか⋯⋯。あ~なんだっけか。
⋯⋯あっ、思い出した。茨城弁で「でれすけ!」だ。




