やはり得てはいなかった
上がった物を下げるのは容易ではない。
⋯⋯もちろん、この神様を助けたいと思う、優しい気持ちの事だ。決して変な意味はない!
何はともあれ、一日でもコイツを天界に返さなければならない。1DKの部屋に1日24時間いられたらたまったもんじゃない。再度、確認だが決して変な意味ではない。
ならば聞かなくてはならないことは聞いてしまい、知識をつけなければならない。わからないのは嫌だ。パンのヒーローの歌でも言っているしな。
パンと言えば山崎だろう。でっかい工場が古河市にあるらしい。だから古河市には山崎系列のコンビニが多いらしい。秋のパン祭り前には見ておきたいものだ。
「んじゃやることは決まったんだが、聞いておきたいことがある」
「なんでございましょう?」
「これまでに三体の悪魔を倒したが、急に襲ってくる奴もいたが、何かちがいはあるのか?」
「それはですね、大きさに応じて狂暴性がますのでございますよ。
掌サイズなら笑っているだけ、2mを越えると存在に気づいたら一発殴って様子を見る、5mともなるとパーソナルスペースに入っただけで雷撃を落とす。と言った感じですかね」
なるほどな。だから2mからは気を付けなきゃならなかったのか、先に聞いておくべき事だったな。
「あ~それと、これが一番俺にとって重要なことなんだが、悪魔を倒した特典ってなんだ?」
「赤城さんの場合ですと、茨城から出れる範囲が広がりますね。サイズによって大体の範囲が決まりますので、何体倒したからここまでっていう具体的な事まではお話が出来ません⋯⋯市や町のサイズもバラバラでございますし」
「ややこしいんだな、因みに他の県で倒した悪魔もカウントされるって認識でいいのか?」
「はい、あっております」
「理解したわ、ありがとう。因みにコイツの髪は何で黒いんだ? 天界であったときは金髪だったはずだが」
隣でボリボリうるさいやつが気になってしまい、ふとした疑問を投げ掛けてみた。
「それは人間モードだからでございますね」
⋯⋯人間モード?
「私達神はそのままの姿で下界にくると人の目には見えないのでございます。赤城さんは特殊なパターンなので見ることが出来ますが。その為、人に見えるようにするために人間モードになるわけです」
「その人間モードってやつになると何か変わるのか?」
「見た目以外は何も変わりはございまさん。神の力も使えなくなったりはしません。ですので、無いとは思いますが、人間モードだからまったく力を発揮できないとか言っても大嘘ですので」
横から「チッ」と舌打ちが聞こえたような気がするが、気のせいだろう⋯⋯そうでなきゃたとえ美少女だとしても許しがたいものがあるからな。
いや、気にしたら負けなのかもしれない⋯⋯
「色々とわかった。サンキューな」
「とんでもございません。迷惑をかけているのはこちらの方なので。また、何かわからないことがあればいつでもご連絡下さい。ではおやすみなさい」
そう言うと、いつもの如く自然に目の前から消えていった。
100体か、この機会に茨城・栃木・群馬と、観光巡りを兼ねて悪魔退治っていうのもありかも知れないな。
「じゃ~話し終わったし私お風呂入ってくるね、あっそうそう、童貞って大変なんだな」
「チョット待て! 俺がいつ童貞だって言った?」
風呂に行こうとするコイツの腕を掴んで引き留める。
「あんたの魂をいじったのは私だよ。そんなの魂に触ればわかるんだって。じゃ~ね~」
俺はガックリと項垂れた。いや、想像はしてたよ。でも可能性は0ではなかったんだ⋯⋯チクショー!
風呂場からはシャワーの音と鼻歌が聞こえてくるのが無性に腹立った。アイツなんで人に精神的ダメージを与えておきながら、優々と鼻歌を歌いながらシャワーを浴びられるんだろう。
ってか、さっきまで話していた内容がアイツのせいだって理解してないのか? いや、さっきわかったじゃないか、気にしたら負けなんだ⋯⋯
気をまぎらわす為にテレビを付けると、50号線の大きな事故がやっていた。今日通った道での事故だ。
良かった事故に遭遇しなくてなんて思って見ていると、ガチャッと風呂場のドアが開きアイツが顔だけ出してきた。
「あ~やっぱり、その事故って悪魔の仕業だよ。ど~する? 行ってくる?」
なんでお前は行かないって選択肢があるんだよ⋯⋯
「お前も行くんだよ! さっさと風呂から出てこい」
「え~⋯⋯最悪じゃん。入ったばっかりなのにさ。空気を読まないでやりたいことだけやってるから、ホント悪魔って嫌いなんだよ~」
そう言いながら顔を引っ込めた風呂の方を見ながら、
コイツ何者なんだろ? なんで自分の事をそこまで棚に上げられるのか意味がわからない。と思った―――




