大洗の海と言えば洗車だろうな
聞いても無駄だとわかれば、黙ってラジオを聞きながら運転に集中しよう。どこ行く予定も無いから、海に行きたいって言ってたしナビをセットして海に進路を取る。
海の季節にはまだ少し先だけど海っていうのは多少なりともテンションが上がる。
水着姿ってのはまだいないだろうから、そこはマイナスポイントではあるけど。
「浜辺に歩く綺麗なお姉さんとはいねーかな」
コイツが横に乗っているのを忘れて、ボソッと独り言を言ってしまった。
「はっ? いるわけないじゃん。むしろ誰もいなわよ。」
⋯⋯コイツ、独り言には返事返してきやがったよ。知ってることだけ喋るパターンか?
「ならどこにいけば若い人はいるんだ?」
「いないんじゃない? 殆ど見たことないし」
神様ですら見たことないのか。方言を喋る彼女作りが危ぶまれてきたな。
『したっけ、ご飯一緒に行ったらよかっぺ』とか言われてーのにな。まぁ、夢はいつか叶うっていうし、願いだけは忘れずにいこう。
***
あれから30分ほどで、目的地の海へと着いた。人生初の大洗だ。勿論といえばそうだが、洗車なんてものは走ってはいない。見かけるのはポスターのなかだけだ。
茨城県中部の県央地域に位置し、太平洋岸にある町。
大洗サンビーチ海水浴場、アクアワールド・大洗、めんたいパークが主な場所らしい。海辺に付くまで外観は見たがお世辞にも綺麗とは言えない。海に関して言えば、白い砂浜とは程遠かった。
まぁ、今回は行くことが無いので、記憶するだけに留めておく。
ただ、気になる点は、アクアワールド・大洗を大洗水族館と呼ぶことだ。アクアワールドどこいった?
「まだ、海沿いは寒いね。よし、帰ろう!」
「はい? 何のために俺に海まで運転させたの?」
まだ着いてから五分とたってないぞ。コイツの目的はなんだったんだよ。
「何のため? 海が見たかったからに決まってるじゃん」
「⋯⋯うん、いやね。違うじゃん? お前テレポート出来るなら、見たいだけならテレポートしてくれば良かったじゃん?」
「あ~、そう言うこと! 車で来る海も良いかなって思ったんだけどさ、失敗だよ」
ゴツンッ!
「ねぇ! 痛いよ! ちょっとは考えてよね。考えないで行動するとかやっちゃダメだからね。わかった?」
なんだろう。コイツを海に投げ捨てたい気持ちが止まらない⋯⋯。なんで自分の事を棚にあげてそんな事を言えるんだろうか?
茨城が魅力が無いのはコイツのせいでもあるんでは無いだろうか。見た目が良くても中身がダメな断定的なタイプだな。
「なぁ、そう言えば。栃木神は、お前と仲悪いのか? 負けたくない相手とか言ってたけどさ」
「えっ、私の言葉無視なの? まぁいいや、どうなんだろ? よく話したりはするけど、嫌な部分はあるわね」
「嫌な部分って?」
「とちぎって事よ。お陰で隣の県である茨城も、いばらぎって間違えられるんだもん。やになっちゃうわよね」
うわ~⋯⋯。心底どうでも良い情報だわ。相手にするのも疲れるから、ほっといて自宅に帰ることにしよう。コイツはテレポート出来るんだし、勝手に天界に戻るだろう。
「⋯⋯うん。じゃーな」
何か言っていたけど、聞こえない。聞こえない。ドアを閉めて自宅へと車を走らせた。




