異世界の使い方
人の振り見てわが振り直せ
じゃあ世界は?
異世界みてわが世界直せ?
異世界と聞いてどう思うだろうか?
あなたが異世界好きなら剣と魔法、冒険者ギルドに石造りの街を想像してワクワクするだろう。一方あなたが異世界が嫌いなら、価値観は現代、服装は近代、食事は近世、軍事は古代 という中世風ファンタジー(笑)なんて皮肉るかもしれない。
しかし私には異世界という考え方そのものが娯楽以上のものを持っているのではないかと思う。
異世界のもっとも素晴らしいことは世界が異なっているとこだ。
つまりこの世界にはない法則を持っていたり違った生物がいたりすることだ。
今に至るまで多くの科学者たちは自分の所属する世界がどうなっているかを調べあげることに全力で取り組んできた。エベレストの山頂からチャレンジャー海溝、果ては地球の外にまで探査機を送り込みとれるだけのデータをとって考えられる限りの解釈を生み出し激しく議論した。
異世界を想定することはこの世界を解き明かすための武器になるだろう。これは一見逆説的にも思えるが不思議なことではない。
生物の定義をしようとしたとき地球の生物だけから考えることは不充分である。なぜなら極端な話地球上のあらゆる種類の生物を見つけてリストを作りこのリストに載っているものが生物であると定義したとき、地球しか考えない場合は成立してしまう。しかしそんな定義などなんの意味があるのだろうか。このとき異惑星を考える。つまりもし新しく生物らしきものが見つかったときにそれを生物かどうか判断するにはどうしたらよいかを考える。さらに一歩踏み込んで完全な異世界 例えば二次元の世界あるいは四次元の世界、そこにいる生物はどう定義できるだろうか?そう考えていくことで生命の本質に近づくことが出来るだろう。もしかしたらそれはドーキンスの言うように自己複製子かもしれないしあるいは代謝していることかもしれない。
生命の本質なんて大袈裟な話をしてしまったのでなろう読者であるあなたに身近であろう異世界ファンタジーを絡めて話を続けよう。異世界にはエルフという種族がよく登場する。エルフは耳が長く容姿が美しく金や銀の髪をもち寿命が長い、そして人間との間にハーフを産み出すことが出来るというものが一般的だと思うのでここではこれを採用する。まずエルフという種族と言ったがエルフは種だろうか?それとも亜種だろうか?それは人間とのハーフの生殖能力面如何にかかっている。ハーフエルフが人間との間にさらにクォーターエルフさらにそれと人間との ということが出来るのならば、人間とエルフとの間に任意の割合で人間とエルフが混ざった個体を作ることが可能である。よって人間とエルフの境目を作れない。これは一般的には亜種とよばれ代表例はイノシシとブタである。ハーフが生殖能力を持たないときエルフは人間と独立な種であると言えよう。次に容姿が美しいというのは恐らく特定の時期に個体数が激減し遺伝的多様性があまりないことを表しているのかもしれない。そして金や銀の髪は緯度の高い太陽光が弱いところにすんでいたに違いない。そして寿命だがこれは別に魔法だなんだを使わなくても説明できる。エルフから一端離れて人間の寿命を伸ばす方法を一つ紹介しよう。それは最低生殖年齢を法律で30才と決めてそこから百年あたり数才づつ最低年齢を伸ばしていけばよい。この方法で理論的には人間の寿命は無限に伸ばせる。つまり生殖年齢に達する前に死んだり衰えたりする遺伝子が強烈に淘汰されることによって寿命が伸びるのである。エルフではこれが起こったのだろう。またエルフを考えることは化石人類を考える上で非常に興味深い。恐らくエルフのモデルであろうネアンデルタール人が人間と同じ時期に生きたとすればエルフのようになっていたであろうか。
魔法もまた異世界を代表するものと言えそうである。そしてこの魔法は異世界が違う物理法則を持っていることを実感させてくれる。物理法則が違うとはどういうことだろうか?例えばエネルギー保存則が破れている世界を考えてみよう。これはエネルギーの本質を知る上で有意義な思索である。エネルギーが常に増加し代わりにエントロピー(乱雑さのこと 現実世界では常に増加する)が保存される世界だとしよう。こうなると生物の進化、宇宙の変化は常にエントロピーに縛られ続けるだろう。もしその世界に知的生命体がいたならば彼らは科学を見つけるとほぼ同時にエントロピー保存の法則を見つけ、学生は意味も分からずエントロピー保存の式をたてさせられ「何で二分の一なんてついてんだよ」と悪態をつくだろう。一方エネルギーは一部の物好きによって語られ一般の人は知りもしないだろう。そう、その世界ではあたかもエントロピーがエネルギーのように振る舞うのだ。つまり私が考えるにエネルギーの本質とは保存されることでありその性質によって我々を悩ますのである。エネルギーがなぜ保存されるのか(少々詭弁のようだが)その答えは保存されるものをエネルギーと呼んだからであろう。
あなたがとんでもない、無茶苦茶だと思える異世界もそういう目線で眺めて見ると新しい発見があるかもしれない。
それは異世界が現実とかけ離れていても いや むしろかけ離れていればいるほど面白い考察が出来るだろう。
物理法則、社会システム、そして人類
この世界に一つしか無いものを外から見つめさせてくれるもの
それが 『異世界』 なのである
異世界というのはある種の思考実験だとも考えられると思い書いてみました。
異世界に対する見方が否定的なものが多いので異世界の魅力をアピールしてみました。
感想いただけると嬉しいです