10 「欲求」説明図
9枚目の「空想」説明図では、
科学・技術や認識のもとになり得る空想(推論を含む)を扱いましたが、
10枚目の「欲求」説明図では、
制度・政策や決定のもとになり得る欲求(社会需要を含む)と文明の関係について、
示します。
(1) 欲求とは
ああすればああなる、こうすればこうなる、という技術があるだけでは、
ああしようとか、こうしようと決めることはできません。
ああなるのがいい、という欲求があって初めて、
ではああしよう、という決定ができます。
欲求とは知的生命活動の動因です。
非知的生物である微生物の活動の動因は〝走性〟、
知的生物であっても膝下を叩くと勝手に足が跳ね上がるような活動の動因は〝反射〟といい、
欲求によるものとはいいません。
逆に、知的生物の意識的活動なら、それが高度なものであっても、
その動因は〝欲求〟である、といえましょう。
医学・生物学的に言えば、脳内の化学反応により生じた電位状態、
のように説明できると思います。
(2) 欲求と各文明活動の関係
では、個々の文明活動との関係はどうでしょうか?
第一に、制度・政策は、人々の欲求が集まった社会的な需要に基づきます。
政府や、今では企業なども含めた社会的意思決定に関わる組織は、
人々のこうなってほしいという声を聴き、あるいは先取りして、
決定を行っています。
ただし、その時々の社会需要の中から大きいものを選ぶだけでなく、
政策全体の総合的な均衡や、長期的な一貫性も考えた、
整合的な配慮が必要となります。
そのことは、中央集権的な官僚制の存在意義にもなってきましたが、
逆に、民度の向上や産業の発達、経済の富裕化が進むと、
政治の民主化や地方自治の拡充、官業の民営化も含めた経済の自由化といった、
制度・政策の分権化の理由にもなっていきます。
第二に、経済・社会活動においても、
一人ひとりの個人や家庭・企業など組織集団の欲求が決定の基礎になって、
様々な私的活動の原動力になっています。
第三に、科学・技術においても、欲求は影響を及ぼします。
必要は発明の母といいますが、
一方で、因習的な禁忌が科学・技術の発達や普及に大きく影響することもあります。
地動説と天文学、人体解剖と医学、偶像崇拝禁止と美術技法、
動物の摂食や殺傷の禁忌と栄養学・防疫学の関係などが挙げられるかと思います。
「欲求」もまた、文明の中で大きな役割を果たしています。
欲求と文明の関係を一言で言えば、
欲求は、文明活動の動因であると思います。




